2023年3月15日(水)から17日(金)の3日間、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「サーキュラー・エコノミーEXPO」において、「ブリヂストンが進めるサーキュラーエコノミーを軸としたビジネス戦略」と題し、Gサステナビリティ統括部門長である稲継明宏が講演をいたしましたので、その内容を一部抜粋し、特別企画としてお届けいたします。
サステナビリティとビジネスモデルの両立
私たちは、サステナビリティを経営の中核に据えて、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現とビジネスを連動させる独自のサステナビリティビジネスモデルの確立に向けて取り組みを進めています。タイヤを「創って売る」タイヤ事業、お客様がタイヤを「使う」段階でも価値を提供するソリューション事業、さらにお客様にお使いいただいたタイヤを原材料などに「戻す」リサイクル事業を推進し、社会価値と顧客価値の創造を両立させ、競争優位を獲得することで、社会・お客様と共に持続的に成長していくことを目指しています。
2011年に環境宣言をリファインし、「デカップリング」という概念を取り入れながら、「未来のすべての子供たちが『安心』して暮らしていくために」、私たちはまず自然と共生していかなければならないという企業としての思いを環境宣言に込めました。そのためには手段として資源を大切に使っていくことが必要であり、直近の課題であるCO2削減に誠実に取り組むことが重要であると考え、それらを目標に落とし込んで取り組みを進めてきました。
製造業としてプレミアムなモノを作って売るということは非常に重要です。一方で、そのモノづくりの過程の中でCO2削減や資源生産性を高めていくことも重要なことだと捉えています。その観点から製品を使って頂く段階においても、如何にタイヤをいい状態で使い続けていただくかが問われます。適切なメンテナンスサービスが提供できれば、お客様の製品使用段階におけるCO2削減につなげることができます。
さらに、使用したタイヤのトレッド部分を貼り直すリトレッドを組み合わせることで、タイヤをタイヤに戻し、より長く使い続けていくということが可能になります。それをビジネスモデルとして組み込んでいくという「ソリューション事業」が当社事業の中核になってきています。
使用済タイヤについては、廃棄物としてではなく、如何に資源としてゴムに戻すか、如何に原材料としてサプライチェーンの上流に戻していくのかというアプローチで、循環型の事業の実現に向けて取り組んでいます。
ここで、単純に資源を循環させるだけではなく、さらにより良い環境を次世代に残していく(ネットポジティブにしていく)ということが非常に重要な概念になってきています。
タイヤを製造する上で、天然ゴムは重要な原材料です。自社農園含め如何に生産性を高めていくのか、再生可能資源を如何に大切に使っていくのか、またそれを如何に拡充・多様化していくのかという視点が重要と考えています。それに加えてさらにリジェネレート(再生)の考え方も取り込みながら、私たちのビジネスモデルを、より循環型、より再生型に変えていこうという視点を経営戦略に組み込みながら取り組みを進めています。
サーキュラーエコノミーの実現に向けて進めていること
サーキュラーエコノミーとは「資源循環」ではなく、資源循環を切口としたビジネスモデルを変革していく一つのアプローチであると捉えています。その中で重要になってくるのが、
①資源生産性をしっかり高めること、また資源生産性を高める切口でビジネスモデルをどう変えていくべきか、
②使用する原材料の循環性を如何に高めていくか、それを通じてビジネスモデルをどう変えていくのか(マテリアルサーキュラリティ)、
③作った製品をどう循環させていくのか(プロダクトサーキュラリティ)、
という3つの視点で考えていくことです。
これまでも様々な資源循環の取り組みを行っていますが、ビジネスモデルという概念に置き換えた上で、私たちとして何に注力していくのかという議論を重ねています。
例えば、リトレッドは、すり減ったタイヤのトレッド部分を貼り直し、タイヤをより長く使っていただくことができます。そこにメンテナンスを加えると、タイヤをより良い状態で使って頂くことが可能となりますし、新品、リトレッド、メンテナンスを組み合わせることで、タイヤ資産価値の最大化に繋がると考えています。
さらには、低燃費性能を持った新品タイヤやリトレッドタイヤ(リトレッド可能回数最大2回)を使用頂くことで、(お客様の使用段階除く)ライフサイクル全体で資源使用量やCO2排出量を半分に減らすことができます。
ここで重要になるのは、デジタルとリアルをどう組み合わせていくのか、またリサイクルを考える上での所有をどう考えるのかという視点です。リトレッドをするためには、(台タイヤを複数回使用できるよう)タイヤをいい状態で使用いただくことが、廃棄率を減らすことに繋がります。そのためには、メンテナンスが重要になってきます。その観点から、私たちがサービスとして提供するタイヤモニタリングは、タイヤの状態を確認でき、耐久性やリトレッド可能回数などの検討につなげていくことができます。
また、サブスクリプションモデルとして、一定額でタイヤの装着だけではなく、メンテナンスやトラブルをすべてサポートしていく事で、お客様の手間暇、コストが下げられ、私たちとしても資産を最大限活用したビジネスモデルとしてお客様にサービスを提供させていただけると考えています。このような取り組みが社会価値・顧客価値に繋がり、競争優位にもつながると考えています。
もう一つの事例としてリサイクル事業についてお話しします。使用済タイヤを資源として捉え、ビジネスとしてなりたたせるためには、様々なパートナーとの共創が必要と考えています。現在、リサイクル事業の構築に向けて取り組みを進める中で、ということや、使用済タイヤを資源として原材料に戻し、新たなタイヤに生まれ変わる「水平リサイクル」を如何に事業として形にしていくのか、そしてそのための必要な技術の確立が重要なポイントになってきています。
現在、ENEOS社と一緒に精密熱分解と循環リサイクルに取り組んでいますが、ENEOS社の専門性を活かすことで、熱分解したタイヤの油を効率よく合成ゴムの原材料であるブタジエンに戻していくことができるようになります。これによって、資源循環のみならず資源の安定調達やビジネス化につなげていきたいと考えています。
「サステナビリティと企業成長の両立」は難しい課題であり、当社だけで実現できるものではありません。これからも、様々なパートナーやお客様と一緒に価値を創出していきます。