環境 | 資源を大切に使う

タイヤのリサイクル・再利用

考え方

ブリヂストングループはプロダクトサーキュラリティ※1の向上に取り組んでいます。当社グループでは各国や地域における法規制を遵守し、販売店で回収した使用済タイヤを有効活用・処理しています。世界で3,500店舗近く展開する直営店のうち、一部の国や地域を除くほぼ全ての店舗で、処理事業者との契約において回収後の有効活用について定めており、2023年にはその割合は全店舗数の99%に達しています。当社グループは、タイヤのリサイクルを通じて、使用済タイヤの有効活用と新たな価値の創造に取り組んでいきます。

具体的には、グローバルで以下のような活動を推進しています。

  • 原材料として利用(マテリアルリサイクル)、熱回収など、販売店で回収された使用済タイヤの有効利用
  • 各地域やグローバルで展開される取り組みへの参画
  • NGOなどとの連携による投棄されたタイヤの回収

また、使用済タイヤは、建設資材や園芸用資材、フロアマットなどにも利用されています。

  1. ※1 使用済み製品の循環性を示す概念であり、ブリヂストンでは、回収した使用済み製品が有効活用された割合を指標として用いています。
  2. ※2 持続可能な開発のための世界経済人会議(WBSCD)による業界全体のデータ
    wbcsd tires TIP: END-OF-LIFE TIRES(英語)PDF

業界活動を通じた取り組み

WBCSDのタイヤ産業プロジェクトへの参画

持続可能な開発のための世界経済人会議(WBSCD)のタイヤ産業プロジェクト(TIP)によれば、世界全体では年間約10億本の使用済タイヤが発生していると推定されます。使用済タイヤの環境影響の低減は、タイヤ業界としての重要課題です。

ブリヂストンは、2006年のTIP発足当初から、当プロジェクトに参画し、世界有数のタイヤ会社・ゴム会社として、業界各社と協力しながら持続可能な社会の実現に向けて取り組みを推進しています。TIPは、使用済タイヤを適正に処理し、使用済タイヤの環境影響の低減に努めるよう関連産業や各国政府に促すことで、効果的な廃タイヤ管理システムの構築を目指しています。TIPでは、世界全体の自動車数の84%を占める45ヵ国を対象とした調査を基に、下記のマニュアルとベストプラクティスを発行しました。

JATMAとの協力(日本)

タイヤ業界では、一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)を中心に、サーキュラーエコノミーの構築に向けて、廃タイヤの削減とリサイクルに取り組んでいます。具体的には、タイヤのリサイクル状況のモニタリング、使用済タイヤの不法な収集・投棄を防止する方策に重点を置いています。JATMAの調査外部リンクによれば、日本国内における2023年の使用済タイヤの有効利用率は99.2%でした。当社では、JATMAと協力してこの比率をさらに高め、国内での廃タイヤの環境への影響を低減していきたいと考えています。

USTMAとの協働(米州)

ブリヂストン アメリカス・インクは、U.S. Tire Manufacturers Association(USTMA)の中心メンバーとして同協会と協力し、米国タイヤ製造業界の共通理念である将来に向けた安全で持続可能なモビリティの実現を目指して取り組んでいます。

具体的には、使用済タイヤを、環境面及び経済面で合理的な手法で建材から燃料に至る様々な用途にリサイクルすることを推進し、使用済タイヤの循環利用の最大化を目指しています。

USTMAは1990年に創設されて以降、米国の各州や米国環境保護庁(EPA)ならびに業界と協力して、放置された野積みタイヤの削減と、持続可能な使用済タイヤ市場の育成を促す規制の実施に取り組んできました。USTMAでは、廃タイヤに関する情報の提供や、行政やリサイクル業者、業界及びその他のステークホルダーが参加する会議も開催しています。

USTMAの会員企業は米国の17州で57工場を操業、29万1,000以上の雇用を創出し、年間1,706億ドルの経済効果を生み出しています。

ETRMAとの協働(欧州)

ブリヂストン ヨーロッパ ミドルイースト アフリカ(BSEMEA)は、European Tyre & Rubber Manufacturers Association(ETRMA)の中心メンバーとして同協会とそのメンバーと協力し、欧州政府が新たに発表した「Roadmap New Circular Economy Action Plan」を支持しています。欧州のタイヤ業界は、資源の有効利用に基づくインクルーシブ・エコノミー(包括的経済)、つまり革新的で持続可能な市場経済に導かれ、材料の機能損失を最小限に抑えて廃棄物を高い価値のまま回収し、全ての廃棄物が管理される社会の実現を目指しています。

ETRMAとタイヤ業界は、サーキュラーエコノミーに最大限の貢献をするため、拡大生産者責任(EPR)の仕組みがある欧州諸国で廃タイヤの管理に直接関与しています。EPRとは、製品ライフサイクルの使用後の状態にまで範囲を広げた、生産者が製品に対して負うべき、完全または部分的な業務上・財務上の責任です。この仕組みでは、製造元には自社の製品から生じた廃棄物が環境に配慮した方法で適正に処分されるよう促す注意義務があります。そのため、タイヤ生産者が出資して、最も経済的な方法での廃タイヤの回収・管理を目的とする非営利会社が設立されました。国家当局への報告義務があるため、明確で信頼できるトレーサビリティの模範となる例が生まれています。

その他の連携

使用済タイヤのリサイクル熱分解試験を開始(日本)

当社は、使用済タイヤの精密熱分解(油化)によるケミカルリサイクル技術の社会実装に向け、Bridgestone Innovation Park(東京・小平市)内に実証機を導入し、使用済タイヤを熱分解することによって分解油や再生カーボンブラックを生成する取り組みを、2023年に開始しました(※下記の精密熱分解によるケミカルリサイクルの概念図の赤枠部分)。

この取り組みは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業/CO2等を用いたプラスチック原料製造技術開発」において実施する2つの研究開発テーマのうちの1つであり、ENEOS株式会社(以下「ENEOS」)と進めている共同プロジェクトです。高機能ゴムなどの高分子素材の設計技術を持つブリヂストンが精密熱分解の技術を、原油精製技術や基礎化学品製造に関する基盤技術を持つENEOSが精密熱分解して得られる分解油からブタジエンなどを精製する技術をそれぞれ研究・開発し、共創を進めています。今回の実証機の導入は、使用済タイヤを精密熱分解して得られる分解油をリサイクルオイル化し、このオイルから合成ゴムの素原料であるブタジエンなどの化学品を高収率に製造するケミカルリサイクル技術の社会実装に向けた実証実験を行うものです。今後、2030年までに量産を想定した大規模実証を予定しており、24MBPでは、事業化に向けて技術検証を推進するとともに、パイロット実証プラントの建設に向けて検討を開始していきます。

Soles4Souls Asiaと協働して廃タイヤから靴を生産(インドネシア)

ピーティー ブリヂストン タイヤ インドネシア(BSIN)は2020年、国際NGOであるSoles4Souls Asiaと、廃タイヤから新品の靴を作るプロジェクトに関して2年間のパートナーシップを締結しました。靴の生産は、パートナーである靴メーカー各社の工場で行い、2022年末までに4万本のタイヤを約40万足の靴に生まれ変わらせ、使用済タイヤを有効活用することを目指した取り組みでした。生まれ変わった靴は、支援を必要とする世界中の人々に届けられ、様々な販路で販売されたほか、その売上の一部はSoles4Souls Asiaに寄付されました。

このパートナーシップは、ブリヂストンの使用済タイヤを靴底として再利用し、資源の継続使用によって廃棄物を減らすサーキュラーエコノミーの推進力となります。

感染症拡大を防ぐためのタイヤ回収・リサイクル活動(米州)

環境ヘの影響を最小限に抑えるために廃タイヤの回収・リサイクルを目指すとともに、デング熱やジカ熱、チクングニヤ熱ウイルスの繁殖防止に関する地域社会への啓発を行っています。民間企業、政府組織、非営利団体、地域社会が共通の目的達成のために連携するこの取り組みでは、廃タイヤの適切かつ合法的な処分を推進しています。2014年にメキシコで、2017年以降コスタリカでこの取り組みを開始し、1,336トンを超えるタイヤを回収しました。回収されたタイヤは、セメントキルンで使われる代替燃料として利用されるほか、土木工事の際に斜面の管理や地盤改良に用いられる土留め材としても活用されています。
コスタリカには、現地の法的要件を満たすための年次目標に基づくタイヤ回収プログラムがあり、このプログラムのもと、2015年から2023年までに約10,561トンのタイヤを回収しています。

消費者使用済タイヤの回収(コスタリカ)

このプロジェクトは、コスタリカの工場とつながりのある様々なステークホルダー同士の連携を強化する取り組みで、主に2つの活動で環境汚染の防止に貢献しています。そのうち「Llantaton」と呼ばれる活動は、現地で2017年からブリヂストンが推進する毎年恒例のプログラムとなっています。2023年には、6月の地球環境デーに合わせ、コスタリカ全土18か所で丸一週間のプログラムが計画され、複数の地方自治体、ベンダー、顧客、保健省、ソーシャルメディア、報道機関など様々なステークホルダーが参加する官民連携の取り組みとなりました。もう一方の「Compliance Unit」と呼ばれる活動は、2015年から継続しているプログラムで、コスタリカ国内で毎月販売されたタイヤ総数の一定の割合に相当する使用済タイヤを回収し、環境汚染の防止につなげています。ブリヂストンの販売代理店では、顧客が新しいタイヤに交換する際に使用済タイヤの処分を引き受けており、同プログラムの成果には、こうして交換されたタイヤの回収業者の実績も含まれています。ブリヂストンの各販売代理店では回収したタイヤを保管したのち、業者に引き取りを依頼して、適切な処置を施しています。

産業変革研究プログラム(オーストラリア)

オーストラリアでは、「産業変革研究プログラム」に参画し、鉄道のバラスト軌道の耐久性向上に向けてレールを支える枕木やバラスト、路盤への使用済タイヤの活用などの研究を進めています。

  1. ※鉄道の路盤の上に砕石や砂利などのバラストを一定の厚さに敷き詰め、レールやそのレールを支える枕木から構成される構造物

地域に根差した取り組み

使用済タイヤリサイクル施設(日本)

ブリヂストンタイヤソリューションジャパン(BTSJ)は、「ブリヂストンタイヤリサイクルセンター大阪」を運営しています。リトレッドタイヤ※1の製造と再利用が困難なタイヤの中間処理※2の機能を1か所に集約した施設で、大阪府全域及び京都府・兵庫県・滋賀県・和歌山県の一部地域でのタイヤの回収※3、リユース、リサイクルを行っています。

同センターは、「平成27年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」において、「リデュース・リユース・リサイクル推進協議会会長賞」を受賞しました。今後もさらなる資源の有効活用に取り組んでいきます。

  1. ※1接地部分であるトレッドゴムを貼りかえて再使用できるようにしたタイヤ。
  2. ※2リトレッド加工できない廃タイヤの破砕処理。
  3. ※3法令上の条件及び手続きに沿って回収しています。

大型タイヤの貯水槽(米州)

米国のエイケン工場は、使用済の建設・鉱山車両用ラジアルタイヤを、牛などの家畜用に水を貯めておく「大型タイヤの貯水槽」として再利用しています。2023年は、約183本のタイヤを転用しました。

B-Happy Eco-Parksプログラム(コスタリカ)

コスタリカでは、使用済タイヤを公園や教育施設の運動場に利用する「B-Happy Eco-Parks」プログラムを展開しています。エルサルバドル、グアテマラ、パナマなどでは、2012年以降これまでに39か所以上の運動場が建設されました。