ノーネットロスの考え方
ブリヂストングループは長年にわたり、「環境宣言」に基づき、「自然と共生する」ために、「資源を大切に使う」技術を開発・活用し、喫緊の課題である地球温暖化に対して「CO2を減らす」ことに包括的に取り組んできました。ネイチャーポジティブ※に向けては、自然保全だけでなく、資源の効率的な利用や持続可能な生産、気候変動対策など、様々な分野における行動を組み合わせる包括的なアプローチと変革が必要と考え、サステナビリティビジネスモデルにSBTs for Natureのフレームワークにおける「回避」、「軽減」、「復元・再生」、「変革」の考え方を織り込んで、より循環型・再生型のビジネスモデルへ進化させながら取り組みを進めていきます。
具体的には、2050年を見据えた環境長期目標である「生物多様性ノーネットロス(貢献>影響)」に基づき、水ストレス地域での取水量削減、大気・水域への排出削減など事業活動が与える影響を最小化しながら、生態系の保全・復元などにより貢献を拡大していくことで、生物多様性条約の2050年ビジョンである「自然と共生する世界」の実現に貢献していきます。
- ※自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性・自然資本の損失を止め、反転させることを意味しており、事業活動による生物多様性・自然資本への負荷を低減し、自然の恵みを維持し回復させ、自然資本を持続可能に利用する社会経済活動への変革が意図されています。
生物多様性ノーネットロスに向けたアクション
商品のライフサイクル、バリューチェーン全体を通して、私たちが環境に与える影響と貢献の両面で重要な課題を特定し、活動を進めています。
-
1.
影響の最小化
対応例
・CO2の排出量削減
・水ストレス地域での取水量削減
・廃棄物排出量、埋立量の削減
・お取引先様への配慮の要請
・汚染防止のための環境マネジメントの強化 -
2.
貢献の拡大
対応例
・CO2削減に貢献するソリューションビジネスの開発・展開促進
・事業所周辺の生態系の保全・復元
・地域の水源における保全活動の実施
・使用済み製品のリサイクル
・生物多様性に関する環境教育
マイルストン2030:環境インパクトの改善推進
ブリヂストングループは、「マイルストン2030」の一つとして、環境インパクトの改善によりネイチャーポジティブな世界への貢献を促進していきます。深刻化すると見込まれる社会・環境課題や、事業の成長に伴い増加する可能性のある環境に対する影響を踏まえ、従来の活動に留まらない様々なアクションに取り組みます。
Key actions
・「ウォータースチュワードシップポリシー」に沿ったウォータースチュワードシッププランの策定及び実行
・取水原単位の継続的改善※1
・環境負荷の継続的改善※1(有害/非有害廃棄物排出量、埋立量、VOC排出量、SOx/NOx排出量の削減)※2
・サステナブル調達ポリシーを通じたサプライチェーンにおける環境負荷の低減
・生物多様性へ貢献する活動のさらなる促進
Focused target
・2030年までに水ストレス地域における生産拠点※3において、水リスク低減に向けたウォータースチュワードシッププランを推進する
この重点目標を達成するため、2030年までに水ストレス地域における全生産拠点で、ウォータースチュワードシッププランを策定・実行していきます。2023年12月時点で、対象17拠点の全てでウォータースチュワードシッププランの策定を完了しています。
ウォータースチュワードシッププランの詳細については、「影響の最小化」のページをご覧ください。
また、当社グループは、「グローバルサステナブル調達ポリシー」に盛り込んだ調達・生産活動における森林破壊※4ゼロを目標とし、サプライヤーやビジネスパートナーなどのステークホルダーと協働して目標達成に取り組んでいます。この取り組みにより、2023年には、お取引先様の自己申告に基づき、小規模農家レベルを含めた天然ゴムサプライチェーンのトレーサビリティを34%確保し、当初目標の30%を上回る意義のある成果を得られました。2022年から23年にかけては、合計54のTier1天然ゴム加工工場に対してESG現地監査を実施しました。
計画及び進捗の詳細については、「調達」のページをご覧ください。
- ※1継続的改善:PDCAサイクルを通じて毎年環境パフォーマンスを改善(例えば1%改善)していく継続的な取り組み
- ※2VOC (Volatile Organic Compounds: 揮発性有機化合物)、SOx (硫黄酸化物)、NOx(窒素酸化物)
- ※3水ストレス地域における生産拠点:淡水資源の量や質の低下のリスクがある地域に所在することにより水リスクを抱える生産拠点
- ※4森林破壊とは、事業拡大のために自然の原生林や保護価値の高い(HCVs)地域、炭素蓄積量の多い(HCS)地域を切り開くことを指します。
ブリヂストングループの事業活動と生物多様性との関係性
ブリヂストングループは、事業活動を行う際にも生物多様性への依存関係と影響を考慮しており、下記の関係性マップで洗い出した生物多様性に対する当社グループの「依存関係」「影響」「貢献」の各項目について「マテリアリティ分析」を実施し、重要な課題を特定しています。今後も、これらの課題に対応する主要なアクションを推進すると共に、社会のニーズの変化に合わせて重要な課題を継続的に見直しながら、活動の拡充を図っていきます。
ブリヂストングループの事業活動と生物多様性の関係性マップ※(タイヤ事業)
- ※国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他の「ENCORE」及び一般社団法人企業と生物多様性イニシアティブ (JBIB) の「企業と生物多様性の関係性マップ®」を参考に当社にて作成。
ENCOREを活用した依存関係・影響の評価
生物多様性への依存関係と影響に関しては、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP-WCMC)他が開発し、依存関係及び影響の概要を可視化するツール「ENCORE(Exploring Natural Capital Opportunities, Risk and Exposure)」の産業グループ別評価を活用して、タイヤ事業のバリューチェーンにおける依存関係及び影響の概要を評価しています。
2023年に実施した最新の「ENCORE」評価によると、依存関係においては、原材料調達段階で生態系が持つ気候・良好な土壌・受粉を維持調整するサービス、土壌侵食・病害・洪水を抑制するサービスの重要性が「非常に高い」と評価されました。また、タイヤ及び原材料の製造段階においては、水を供給するサービスへの依存の重要性が「高い」と評価されました。
影響においては、原材料調達段階における土地利用の重要性が「非常に高い」と評価されました。タイヤの製造段階においては、水資源の使用、廃棄物の排出による影響の重要性が「高い」と評価されました。その他、バリューチェーン全体において、温室効果ガスの排出、水資源の使用、大気・水質・土壌への排出、廃棄物の排出による影響の重要性が「高い」と評価されました。
生物多様性の重要性が高い地域の評価
生産拠点周辺における生物多様性への影響や貢献に関しては、UNEP-WCMCや国際自然保護連合(IUCN)他が開発し生物多様性の重要性が高い地域との近接性を測定するツール「IBAT(Integrated Biodiversity Assessment Tool)」の評価を活用して、課題の特定を進めています。
当社グループは、生物多様性の重要性が高い地域の保全を含む様々な貢献活動を世界中の生産拠点で推進しており、貢献の拡大に取り組んでいきます。
TNFD提言に基づく取り組みの推進
当社グループはBusiness for Natureや企業と生物多様性イニシアティブ(JBIB)への参加を通じた従来活動に加え、2022年3月に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)フォーラムに参画しました。昆明・モントリオール生物多様性枠組として採択されたネイチャーポジティブな世界の達成に向けた動きが加速する中で、当社グループは気候・自然資本への依存関係と影響、気候変動及び自然資本損失によるリスクと機会を統合的に評価・管理し、事業戦略への反映を進めています。
これらのリスク・機会への認識を踏まえ、カーボンニュートラル化及びサーキュラーエコノミーへの貢献促進、ネイチャーポジティブに向けて中長期戦略・サステナビリティビジネスモデルを構築し、バリューチェーン全体での温室効果ガスの排出量削減や各種環境負荷による自然資本への影響の低減など、脱炭素社会や自然と共生する社会への移行リスクの低減に取り組んでいます。同時に、乾燥地帯で育つ「ゴムをつくる植物」グアユールの事業化に向けた取り組みを通じた天然ゴム供給源の多様化など、物理的リスクの低減についても取り組んでいます。
TNFD提言に基づく取り組みの詳細は、「TCFD・TNFD対照表」をご覧ください。
サステナビリティビジネスモデルの詳細は、「持続的なサステナビリティ価値創造の基盤構築」をご覧ください。
生物多様性に関する取り組み
ブリヂストンの生物多様性に関する取り組み姿勢
ブリヂストングループは、生物多様性条約の目的を尊重し、持続可能で豊かな社会を実現するため、生物多様性の保全活動を推進しています。実施にあたり、地域社会との対話を通じて、地域の文化とそこにある生態系、種、遺伝子の多様性を理解し、この双方に配慮すると共に、グローバルに広がるネットワークを活かし、当社グループ内外の活動をつないで、生物多様性保全活動の輪を世界に広げていくことに努めます。
主な活動
- 1.世界中に広がる拠点で、動植物やその生息地を保全する活動を行うことで、生物多様性の保全に貢献します。
- 2.生物多様性に関する研究や教育活動を通じて、生物多様性の重要性をグループ内外に伝えることにより生物多様性の保全に貢献します。
「自然と共生する:生物多様性貢献活動推進プログラム」
ブリヂストングループは、2019年に「自然と共生する:生物多様性貢献活動推進プログラム」を開始しました。
当社グループは、地域やパートナーの皆様と連携し、世界中の生産拠点で様々な生物多様性貢献活動を実施しています。子どもたちへの環境教育の実施件数、地域の学校やNGO/NPOとのパートナーシップ、生息地として管理されている敷地外面積など、9つの主要な活動指標を用いて各拠点における貢献レベルを毎年評価しています。評価結果に応じた社内認証も行い、活動事例を共有することで生物多様性貢献活動を推進しています。また、自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)や、昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)といった国際的な指標や動向を注視しながら、同プログラムの評価基準への反映を検討していきます。当社グループは、動植物やその生息地の保全・復元に貢献し、また様々なステークホルダーの皆様と共に活動に取り組むことで、「Bridgestone E8 Commitment」の「Ecology」に掲げる、より良い地球環境を将来世代に引き継いでいきます。
2023年は、105の生産拠点がこのプログラムに参加し、そのうち54拠点が最高評価のゴールドクラスの社内認証を受けました。主な活動実績として、エコ絵画コンクールの開催や植林活動、廃タイヤ回収といった環境保全や教育に関するイベントを世界中で年間950回以上開催し、53,000人以上がそれらのイベントに参加しました。
また、69拠点で地域の学校や大学、NGO/NPO、野生生物保護団体、政府などと連携して生物多様性貢献活動を推進しました。一例として、彦根工場では、2004年に立ち上げた「びわ湖生命(いのち)の水プロジェクト」を継続して推進し、滋賀県、ボランティア団体、周辺地域の住民の方々と共同で、水環境や生物多様性の保全に努めています。
また、68の生産拠点で、鳥たちのための巣箱、小動物が道路を渡るための通路、水生植物が生息する水辺といった微小生息地や中継地を敷地内で管理しています。さらに、82の生産拠点では敷地内や地域で生息地の保全を行っており、合わせて2,072ヘクタール以上の生息地を管理しています※。
- ※外部団体と連携して保全・管理する面積も含む
欧州・中近東・アフリカでの活動については、こちらでもご紹介しています。
生物多様性貢献活動推進プログラムを通じた、生息地保全・管理地域の面積※
- ※外部団体と連携して保全・管理する面積を含む敷地内外の合計値