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[BRIDGESTONE×LAWRENCE] 世界最速の称号が永遠に輝くGPZ900R Ninja(後編)
このコンテンツはバイクキュレーションマガジン「LAWRENCE(ロレンス)」と協力し、リターンライダーからベテランライダーを含めたシニアライダーに向けて情報提供してゆきます。もちろん若い人たちも楽しめる内容になると思いますので、ご期待ください。
第2弾は、ビッグスポーツの歴史を変えたともいえる「Kawasaki GPZ900R Ninja」。その後編をお届けいたします。
リターンライダーという呼称が定着してきた昨今。
かつては若さの象徴のような印象があったバイクは、ゆとりのある中高年の趣味のひとつとして確立してきたようだ。
若い頃から乗り続けているベテランライダーも含め、バイクを自らのライフスタイルに取り入れるシニアライダーたちに向けて、バイクライフをより豊かに楽しむため、ロレンス流に様々な角度からシリーズとして取り上げてゆきたいと思う。
第二弾「GPZ900R Ninja」の後編。
過去にニンジャに乗ったことがある人は、またニンジャに戻ってくるという。
今回、撮影ライダーをお願いした川田正浩さん(43歳)は、20歳代でニンジャに出会い、いま現在は2台目のニンジャが愛車とのこと。また、取材のためカスタムニンジャをお借りした、ブルドッカータゴスの田子社長も、現在のニンジャが2台目だそうだ。
「ブルドッカータゴスには、たくさんのニンジャオーナーが見えますが、その傾向は確実にあるとおもいますね(田子氏)」。田子氏の場合は、あいだにBMW K1200・1300の2台をはさみ、またニンジャが愛車となったとのこと。川田氏は最初のニンジャでレースにも出場するようになり、その後DUCATI 916など数台を経て、またニンジャに戻ったらしい。「いろいろ乗ってみましたが、やっぱりニンジャでいいじゃんと(笑)ニンジャではレースもやりましたし、公道でもオールマイティで扱いやすいですね(川田氏)」。過去に乗っていたバイクにまた乗りたくなる。そんなマシンはそんなにあるものじゃない。
試乗させていただいた2台のニンジャは、外装はほぼオリジナルのままで、足回りを中心にカスタムが施されている。こういう場合、"派手さはないが..." みたいな表現になるのだが、ホイールからサスペンション、ブレーキシステムなど、徹底して高性能なパーツに交換された2台は、ただならぬ凄味を放っている。まるで、最新のスーパースポーツには負けないよ、って語りかけてくるようだ。
ニンジャのカスタムで有名なブルドッカータゴスでも、以前はパイプハンドルにアッパーカウルのみという、典型的なカスタムニンジャを多く手がけてきた。いまのようなカスタムスタイルに行き着いたのは、田子氏自身がプライベートで、ニンジャからBMW K1200・1300に乗り継ぎ、またニンジャに戻ることで経験したことが、大きな気づきになったという。
「ニンジャからK1200に乗り換えて、BMWのバイクとしての総合的な性能に、正直いって圧倒されたんです。その後、またニンジャの魅力を再認識するにつれ、長距離でも疲れないK1200・1300の優れた足回りを、ニンジャでも実現できないかと、考えるようになったのです(田子氏)」。そこで選んだのが、ハイパープロのサスペンションだという。これまで使用してきた他メーカーのものより、はっきりと固く感じられる、同社のサスペンションを中心に、田子氏のカスタムの方向性が形作られてゆく。
そこから見えてきたコンセプトは、50歳代を中心としたシニアライダー層が、長距離を走っても疲れず、走ることを純粋に楽しめるマシンだったのだ。「カスタムというと、以前は見た目というか、ともすればゴテゴテしたものも多かったですが、これからは、乗りやすくて走って楽しいという、走りに純粋なカスタムが、求められてくるのではないかと感じています(田子氏)」
シートを20mm高くしているのも、シニアライダー層が長距離ライディングでも疲れず、純粋に走りを楽しめるようにと考えたものだという。「レーシーな雰囲気にするため、あるいは足付き性をよくするなどの理由で、これまではシート高を低くする方も少なくありませんでした。ただ、大型バイクで単純にシートを低くすると、シートの幅が広くなりかえって足付きが悪くなることもある。なにより、バイクは足をついて乗るものではなく、走っている時間が大半なわけですから、乗りやすさや長距離走行での快適性を追求していったら、この20mm高いシートという解答を得たわけです(田子氏)」。
このライディングフィールはちょっとした驚きだった。シニアライダー代表のような私にとって、低いシート高と後退したバックステップの組み合わせは、スポーティなバイクを象徴するようなところがあった。ところが、このニンジャのやや腰高なポジションに慣れてくると、実にライディングに無理がないことに気がつく。膝の曲がりが穏やかになることで、長距離のツーリングでも膝が痛くなることが少ないであろう。これ、私も含めて意外と悩まされているシニアライダーは多いのでは(笑)
また、マシンの挙動を直接コントロールするサスペンションを中心とした足回りは、もっとも重要な要素だろう。前述のようにこのカスタムニンジャには、通常よりも固く感じられるサスペンションが選択されている。この固めの足回りが長距離を走ると違ってくるのだという。
前後17inchのアルミホイールに装着された「
BRIDGESTONE BATTLAX SPORT TOURING T30 EVO」が足元を固める。スポーツツーリングというカテゴリのタイヤだが、このカスタムニンジャのコンセプトにもマッチしている。「このニンジャは悔しいけど、ボクのニンジャとはまったく別物といってもいいですね。サスペンションの動きがとてもよくて、路面の感触がよく伝わってきます。このT30 EVOも、ツーリングタイプとは思えないグリップ力ですね(川田氏)」。
20年という長きにわたり進化を続けてきたGPZ900R Ninja。その歴史は、そのマシンに乗るライダーたちや、ブルドッカータゴスのようなカスタムチューナーの試行錯誤にも支えられてきたのだ。そして旧車となって久しい現在も、ニンジャはこうして進化し続けている。田子社長にニンジャをはじめとした旧車の魅力を聞いてみた。「ちょっとした不具合を楽しめることでしょうか。古いバイクなので、性能に不満なところは少なくない。いまは優れたパーツがいろいろありますから、その不具合をチューンアップで解決してゆくのが面白いですね。それに、バイクを操っている感覚を、より実感できるところも魅力でしょうね(田子氏)」。
実は、私もかつてニンジャ乗りであった。1985年に登場して間もない初期型のGPZ750R Ninjaに乗っていたのだ。ハタチそこそこの私には、当時最新マシンだったニンジャは無敵に思えたものだ(笑)。あれから30年の時を経て、いまもニンジャは現代のニーズに最適化され生き続けている。
ブルドッカータゴスのカスタムニンジャは、シニアライダーが無理なく、1000kmの長距離ツーリングを楽しめる性能を目指したという。この性能は長距離に限らずあらゆるシーンで、それに乗るライダーに喜びを与えてくれるだろう。そしてなにより、オリジナルのスタイリングを大切にしながら、走りに直接重要となる足回りに惜しげもなく高性能なパーツが投入され、全体のバランスがとても美しい仕上がりとなっている。これぞ大人のカスタムといっていいのではないだろうか。
シニアライダーにとってニンジャといえば、映画トップガンや漫画キリンで、憧れたマシンだろう。現代の"最新式ニンジャ"は、そんな世代があらためて惚れることのできるマシンとなっていた。「もちろん、若い人たちにも乗ってほしい。トップガンやキリンを通っていない若い人たちには、フルカウルのニンジャが、逆にカッコよく写るのではないかと期待しています(田子氏)」。
LAWRENCE編集長 二上善則