世界耐久選手権とはMotoGP™、スーパーバイク世界選手権と並ぶ、ロードレースの世界選手権で、3時間から24時間の間で行われる耐久レースです。
昨年からプロモーターとして、ユーロスポーツが入り、来シーズンからシリーズの期間が変わる事が決定しているんです。
今シーズンは3か国で全4戦を開催。
第1戦:4/10フランスルマン24H、第2戦:6/12ポルトガルポルティマオ12H、第3戦:7/31鈴鹿8耐、第4戦:8/27ドイツオシャスレーベン8Hというスケジュールとなります。
そして今年の9月から2016-2017年シーズンが開始し、第1戦は9/18フランスボルドー24Hから始まり、最終戦が鈴鹿8耐となる事が決まっています。
ですから2017年の鈴鹿8耐は、世界耐久選手権の最終戦となり、年間タイトルが鈴鹿で決定する事になるでしょう!
8耐に向けてのテストは、大きく分けて3つの目的があると思います。
1. マシンの基本動作確認とタイヤ選択、サスペンションセッティング
ライト類が付く事で、JSB1000より10kg重くなるのですが、この10kgというのは運動性能に大きく影響します。
そして通常JSBではガソリンも24Lも入れることがないので、フルタンク状態では更に重くなります。
タイヤもスプリントよりはハード方向になるので、そのレースタイヤを付けて、重いマシンで安定したタイムを出す為のサスペンションセッティングが重要です。
そしてライトや電装系や燃料残量警告等のトラブルがないかも、重要なテスト項目です。
2. ライダー毎のセッティング合わせ
8耐は3人で走るチームが多いので、体格や好みの違う3人のセッティングを決めるのも難しく、かつ重要な項目です。
エースライダーが速く走れるセッティングでは、他のライダーが乗りにくいという事はよくあります。
ハンドルポジションやフットレスト、シフトペダルの位置等も好みがありますが、これらはレース中変えることは事実上出来ません。
ポジション的に出来るのは、せいぜい人によってシートストッパーを追加する位でしょうか?
サスペンションセッティングの好みが大きく違う事は多く、全員のアベレージスピードを上げるために、どこで妥協するか?というのが難しい所です。
JSBでは各ライダーの好みに100%合わせますが、8耐ではそうもいかないので、ライダーもそれに合わせた走りをする必要があるのです。
3. 燃費を良くするセッティングと、燃費データの収集
8耐では燃費を良くするエンジンセッティングが必要です。
ピットインによるタイムロスが大きいので、勝つためには7回ピットインに抑える必要があります。
そのため、通常のJSBでのセッティングより、ガソリンの噴射量を少なくする必要があり、そうすると乗りにくくタイムを出すのが難しくなります。
ライダーの乗り方によっても、燃費の良し悪しがあり、この辺りのデータを取りながらセッティングを詰めていき、燃費を良くしてラップタイムが落ちない状況を作る必要があります。
1.2.も合わせ、レースの状況を考慮して、ガソリン満タンでの性能と、20周を超えてタイヤのグリップも落ちてきた時の挙動を確認する為のロングラン等、テスト項目は沢山あります。
4. その他
8耐ではピット作業の速さと確実さも重要な要素となります。ライダーがコース上で1秒縮めるのは至難の業ですが、ピット作業でちょっとしたミスで5秒や10秒すぐに掛かってしまいます。
チームはタイヤ交換と給油作業の練習をかなりやるのですが、それでも本番ではミスがかなり出てしまうものです。
同様にライダーにとっては、ピット作業後に新品のタイヤに交換して、1周目にどれだけタイムを上げられるかも重要です。
レースではハード目のコンパウンドを使うので、タイヤウォーマーを使用するものの、グリップが上がるまでに1-2周掛かるのが普通です。
スプリントレースでは、スタート前にサイティングラップ、ウォームアップラップと2周あるので、あまり問題にはならないのですが、8耐では新品のタイヤに交換していきなりペースを上げないといけないので、ライダーはその辺りのフィーリングをつかみ、練習もするのです。
これら8耐マシンはJSBマシンに比べ、車重が重くタイムを出すのが難しいうえ、暑さによってエンジンパワーも落ちるので、昨年のヤマハファクトリーが出した、予選タイム2分6秒000と、レースでのベストラップ2分8秒496というのは、驚異的なタイムです。
ちなみにJSBでは、昨年の最終戦に中須賀選手が、予選でサーキットベストラップを更新する「2分5秒192」というタイムを出しました。(文:山田宏)