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山田宏の「2016鈴鹿8耐ここが見所!!」 Vol.3 「山田流8耐公開テスト分析(7/4-6)」

7月31日(日)に決勝を迎える「2016 FIM世界耐久選手権シリーズ第3戦 "コカ・コーラ ゼロ"鈴鹿8時間耐久ロードレース」に向けて「ブリヂストンのモータースポーツ若大将」山田宏が、皆さまの観戦がもっともっと楽しくなる「見どころ」情報を連載記事として紹介します。

今回は、7月4日(月)~6日(水)にかけて鈴鹿サーキットで開催された公開テストの分析をどうぞ!



11連覇に向けてまずまずの手ごたえ!
8耐の公開合同テストが実施されました。今年は7/4-6の3日間の1回です。(他にメーカーテストが7/13、14に実施されました。)

このテストには、8耐参加のほぼ全チーム・ライダーが参加しましたが、一部の外国のチーム、ライダーは不参加。その週末にWSBがアメリカラグナセカで開催される為、WSB参戦ライダーの多くは参加しませんでした。 「#634 MuSASHI RT ハルク・プロ」のN.ヘイデン、M.v.dマーク選手、昨年の優勝チーム「#21 YAMAHA FACTORY RACING TEAM」は、2人の外国人ライダーが来日出来ないために不参加となりました。

このテストには56チームがエントリーし、A、Bの2組に分けられ、3日間で9セッションのテストが行われました。

公開テストは三日間天気に恵まれ、気温と路面温度は下記の通りでした。

vol3_01.jpg
ロードレース用タイヤの性能を発揮する為には、スペックにより適正な作動温度域があり、路面温度の影響も大きいのです。

レースのタイヤの目標性能は、簡単に言うと「グリップ力を高くし、そのレベルをレース距離維持する。」という事です。

特にグリップ力を高めるためには、路面と接するトレッドコンパウンドの寄与が非常に大きいのですが、一般の公道走行用のタイヤに比べると、遥かに高いグリップ力が必要で、そうすると通常作動温度域が非常に狭くなってしまうのです。

最近ではその作動温度域を広くする開発を進めているので、以前よりはかなり広くなったものの、路面温度の変化によりタイヤ温度が変わるため、 グリップ力がどう変化するのか、テストではタイヤ温度と同様に路面温度/気温のチェックを常にしています。

通常は路面温度が非常に低い時と、非常に高い時はグリップは下がります。

高温側は路面の種類にもよりますが、だいたい路面温度50℃を超えるとグリップが下がってくると言えます。
高温になるとゴムが柔らかくなり、グニャグニャとして力を支えられなくなってくるためです。
8耐では高温も予想され、また走行距離も長いので、スプリントレースより硬めのコンパウンドを使う事が多いのです。

初日に少し雨が降ったものの、すぐに乾きほぼドライコンディションで走れました。
また初日には18:40~19:55の75分間、ナイトランのテストも行われました。 この日の日没は19:11。それ以降はかなり暗くなり、ライトの明かり頼りの走行シミュレーションが出来たと思います。
ちなみに8耐決勝日(7月31日)の日没は18:58の予定です。

2日目は非常に暑くなり、ピークは気温32℃、路面温度58℃となり、本番でのピークを想定したテスト、タイヤ性能確認も出来たでしょう。

3日目は曇りとなり、路面温度も35~45℃位と安定した状況でテストが出来たと思います。

テスト結果と概要を下記します。



7月4日(月)
この日は2度ほど雨が降り、A組がやや待機の時間が多くなってしまいました。

トップタイムは「#12 ヨシムラ スズキ Shell ADVANCE」がナイトセッションの日没前に記録した2'07.470。唯一7秒台に入れました。
19時前には気温、路面温度も下がって来て、好条件になったと思います。そのためナイトセッションでベストタイムをマークしたチームも多かったです。

他のブリヂストン勢は、3位に「#104 TOHO Racing」、5位に「#634 MuSASHi RT ハルク・プロ」、6位に「#87 Team GREEN」という結果でした。
この日はテスト初日だったので、各チームともにマシンのシェイクダウンや新パーツ等の初期動作の確認などに終始していた様子でした。



7月5日(火)
テスト開始の9時の時点から気温は31℃。かなり暑い1日となりました。

最初のセッションで「#5 F.C.C. TSR Honda」のドミニク.エガーター選手が、B組トップの2'08.752というタイムを出しながら、その後転倒。ライダーに怪我はなかったもののマシンが炎上してしまいました。
2回目のセッションは、路面温度55℃以上という厳しい条件だったので、最終セッションでベストタイムをマークするチームがほとんどでした。

トップは「#17 Team KAGAYAMA」の2'08.642。ブリヂストン勢では2位に「#87 Team GREEN」、4位に「#5 F.C.C. TSR」、5位に「#12 ヨシムラ スズキ」、6位に「#634 ハルク・プロ」、7位に「#104 TOHO Racing」となりました。



7月6日(水)
最終日はやや気温も下がり、好条件となりました。

テストの締め括りとして、ほとんどのチームがベストタイムをマークしました。

その中でも好調だったのが「#12 ヨシムラ スズキ」の津田選手。2台のマシンどちらでも唯一の2分7秒台に入れてトップタイム!

総合2位は「#5 F.C.C. TSR」で、最終日にP.ジェイコブセン選手が転倒し、マシン1台での走り込みとなったが、D.エガーター選手が2'08.224をマークしました。

総合3位は「#104 TOHO Racing」で、山口選手が手を負傷していながら3位に付けました。

4位に「#87 Team GREEN」、6位に「#634 ハルク・プロ」、7位には「#22 SatuHATI. Honda Team Asia」の中上選手が2'08.498というタイムを出しました。
そして10位には「#32 MotoMap SUPPLY」と、ブリヂストン勢はまずまず好調なスタートを切ったと言えるでしょう。

我々もこの3日間、タイヤテストを行いました。

昨年の実績あるスペックをベースに、改良品も持ち込んでテストし、路面温度50℃超での性能やロングランでの性能変化の確認も出来ました。
チームによってはマシンテストに集中して、タイヤテストをほとんど行なわないチームもありましたが、7/13-14に行われるメーカーテストが最終テストとなります。

各チームも今回の公開テストの結果を分析し、テスト、そして本番に備えて行きます。(文:山田宏)
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山田 宏 (やまだ ひろし)
株式会社ブリヂストン
Jリージョンモータースポーツ推進ユニット 課長

1980年にブリヂストン入社。東京、小平にある技術センターでタイヤの性能を評価する試験部に配属される。
1990年に2輪ロードレース部門が強化されたときに異動し、全日本選手権の開発者となる。
1991年、開発者として世界GPに派遣される。
1992年より本社へ異動し、2015年まで世界GPのレース活動を担当。
また、趣味の枠を超えた「料理研究家」として、レースやイベントなどで手料理を振る舞っていることでも有名。

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