1961~1972年
第5章 高度成長とモータリゼーションの中で
- 第1節 株式公開と社長交代
- 第2節 総合的品質管理活動(デミング・プラン)
- 第3節 技術センターの建設と生産能力の拡充
- 第4節 ラジアルタイヤの開発と相次ぐ国内工場の建設
- 第5節 国内タイヤ販売体制の近代化とラジアルタイヤ時代の販売活動
- 第6節 海外でのタイヤ販売活動
- 第7節 海外工場の建設
- 第8節 多角化の推進と見直し
第2節 総合的品質管理活動(デミング・プラン)
当社は1968年に、卓越した品質管理を実施している企業に与えられる「デミング賞実施賞」を受賞しました。デミング賞は、第二次世界大戦後、米国の統計学者デミング博士が日本に新しい品質管理手法を紹介し、その進歩発展に貢献した業績を記念して設けられた賞です。当社にとっては、1952年、1953年に続く三度目の挑戦での受賞でした。
デミング賞への挑戦と経緯
当社はデミング賞受賞に1952年から2年続けて挑戦しましたが、社内的な足並みが揃わず両年とも受賞を逃しております。その後、デミング賞への挑戦を再開したのは1962年です。1963年2月に就任した石橋幹一郎社長は、翌1964年にTQC※導入とデミング賞獲得を方針として発表し、受賞目標は1966年としました。
当社ではTQC導入活動を「デミング・プラン」と呼ぶこととし、「企業の体質を改善するために生産、技術、管理、販売の全部門にわたって、品質管理に使われる科学的手法を応用し、質と量とコストを最善の状態にもっていくよう計画し、実施し、チェックし、改善のアクションをとるすべての計画をいう」と定義しました。
デミング・プランの発足当初は、全社的にQCの手法的な面に対する忌避ムードが強く、推進は難航したため、教育訓練と専門家による実地指導が行われました。技術・生産部門では、TQCはスムーズに受け入れられましたが、販売部門では「QCをやっていては商機を逸し、他社に商売をとられる」という反発も出てきたり、事例発表の準備が日常業務を阻害する事態も各部門に発生してきたため、1966年3月に受審の延期が決定され、翌1967年4月にあらためて「1968年に受審」の目標が掲げられました。
1968年に入り推進体制が一段と固められ、審査委員による実地調査は同年8月から9月に、本社、工場、支店、技術センターなどの15部門を対象に実施されました。その結果、全社を挙げての取り組みが評価され翌10月にデミング賞委員会で当社の受賞が決定されました。
※TQC:Total Quality Control(総合的品質管理)
社是の制定
デミング・プランの発足を契機として、経営理念を社是として明示し、公布することが石橋正二郎会長から指示され、1968年に社是が制定されました。
『最高の品質で社会に貢献』という社是は社是審議会で決定されたものです。最高の品質は、生産・技術・管理・販売をふくむ全従業員が、自分の仕事の質を最善に保つことによってのみ生まれることを、社是は明確に表現しました。「良い品質は良い企業体質からのみ生まれる」という考え方を、全従業員が理解して業務に励み、そのことを通して皆で社会の発展に寄与しよう、と呼びかけるものとなりました。