祝・インディ500制覇! 佐藤琢磨選手がブリヂストン本社でトークショー!(後編)

6月14日、ブリヂストン本社にて、レーシングドライバーの佐藤琢磨選手を迎えて、従業員向けのトークショーを行いました。5月に開催された世界三大レースの一つ、インディ500で日本人ドライバーとして初の優勝を飾った佐藤選手。その胸の内に秘める思いとは・・?後編となる今回は、激戦を勝ち抜いた強さの秘訣、今だから言えるレースの裏話など、トークショーの内容をたっぷりとお届けします。(下部に動画もございます。)

⇒前編はこちら

インディ500制覇 日本人初の快挙を達成

――司会:インディ500での優勝、おめでとうございます。今のお気持ちをお聞かせください。

佐藤選手:インディ500ではファイアストンのタイヤを使っています。ブリヂストンファミリーの一員として、インディ500で優勝することができて本当に嬉しいです。日本からたくさんの応援をいただきありがとうございました。

――レース前には、どのような走りをイメージされていましたか。

佐藤選手:インディ500は、1周2.5マイルのオーバルコースを200周する非常に長いレース。スタートから激しいバトルが続きますが、最後の50周、特にラスト30周は、レース前半とは比べ物にならないほどハードです。そこでポイントとなるのが、レース後半でタイヤの性能が劣化してきた時、どれだけアクセルを踏み込んでスピードを出せるか。レースエンジニアと一緒に、なるべくアクセルから足をリフトする量を少なくして速く走れる車をつくっていきました。一方で、インディ500では空力の関係で先頭を走り切ってゴールするのは難しく、時速370㎞で空気抵抗もすさまじいので、2番手の車が後ろからスリップストリームに入って前の車を抜き去りトップに立つ、というのが理想的。つまり、どの選手も最終ラップまではリードしたくないというのが本音なんです。

過去の失敗をバネに切り開いた勝利への道

――最後は、エリオ・カストロネベス選手との一騎打ちとなりました。

佐藤選手:もしラスト3周でイエローフラッグが出てしまって、その時点で2位だったら勝てないし、逆にラスト3周で前の車を追い抜こうとしても、失敗したらやはり勝てないだろうと考えていました。2012年のインディ500では、最終ラップで先頭を追い抜こうとしたもののスピンしてリタイヤになったという苦い経験があるので、絶対に確実に行きたかったんです。

今回のレースでは、最後の5周を残して先頭に立った時、「いける」と確信しました。ここから1周、2周する間に追い抜かれても、まだ挽回する時間はある。3周目で僕が抜き返し、また彼が追いついてきたとしても、残り2周をかけて彼を抑えきれば、その先にはチェッカーズフラッグが待っているはずだと。だから、ラスト2周というところで彼が僕と並びかけた時、「今しかない」と1コーナーできっちりとタイトなラインを守り、アクセルを踏み込んで最終コーナーまで駆け抜けました。

――勝利を確信した瞬間は?

佐藤選手:最終ラップの最終コーナーを抜けた時、車はしっかりと加速していたし、スポッターからはカストロネベス選手との間隔も伝えられていたので、最後はミラーを見ずに走りました。頭の中では勝つことだけをイメージしていましたね。本物のチェッカーズフラッグが目に入った時はもう、狂喜乱舞です(笑)。

――ゴール直後には絶叫されたとか。

佐藤選手:そんなつもりはなかったのですが、スタッフたちにありがとうと伝えたくて無線のスイッチを入れたら何も言葉が出てこなくて、とりあえず叫んでしまいました(笑)。その後にスポッターのロジャー安川選手から、7年間一緒にやってきて初めて、日本語で「おめでとう」と言ってもらえて。それで我に返り、スタッフ全員にちゃんとお礼を伝えました。

――インディ500の伝統、「牛乳で乾杯」はいかがでしたか?

佐藤選手:ウィナーズサークルで飲む牛乳はやはり格別です。実は、あの牛乳は僕好みの味なんですよ。決勝レースでは予選通過者33名がグリッドに並びますが、誰が優勝するかは分からない。そこで、脂肪分や温度など一人ひとりがレース前に好みを伝えておいて、誰が優勝しても大丈夫なように用意してくれているんです。ちなみに僕がオーダーしたのは、脂肪分2%でキンキンに冷えた牛乳。とてもおいしかったです!

自分を信じ、仲間を信じあきらめずに挑戦を続けること

――優勝までの8年間を振り返ると、さまざまな壁を乗り越えられてきたことと思います。どのようにしてモチベーションを保ち続けているのでしょうか。

佐藤選手:プロのレーシングドライバーを志したその日から、トップで走りたいと強く願い続けてきました。その思いを胸にF1でも走っていましたし、2010年からはインディ500に挑戦するチャンスをいただきました。35万人の観客が見ている中で走れるなんて、選手としてこれほど幸せなことはありません。あの感覚は、体験した者だけが味わえる特別なものだと思っています。インディ500は昔、舗装もされていない道路から始まり、100年以上続いている歴史あるレースです。参加できるだけでも光栄なのに、優勝するなんて夢のまた夢でした。しかし、2012年の経験をバネに、また同じ状況になった時には絶対に失敗しないぞという強い気持ちでレースに挑んできました。自分自身を信じ、スタッフ全員を信じてチャレンジを続けた結果、ついに夢を叶えることができました。8回目の挑戦で優勝を手にできた今年のインディ500は、僕にとって特別なレースになりました。

――ありがとうございます。ここからは、ブリヂストン社員から寄せられた質問にお答えいただきたいと思います。「もしどんなレースでも参加できるとしたら、一番挑戦してみたいのは?」

佐藤選手:今はとにかくインディで頑張りたいですね。優勝した直後ですが、シリーズチャンピオンを目指していきたいです。そのあとなら、F1もインディも経験したので、やはりル・マン24時間レースに出てみたいと思います。

――続いて、「佐藤選手のインタビューを拝見していると、いつも人との接し方が素晴らしいと感じます。コミュニケーションやチームワークを良くするためのコツがあれば教えてください」。

佐藤選手:相手へのリスペクトは大切ですよね。自分自身がオープンマインドであることを心掛け、相手の意見にしっかりと耳を傾けたうえで、自分の思いを伝えるようにしています。一方的に自分の意見を押し付けるのではなく、相手の考えを学ぶ姿勢を持ってまわりの人と接するとうまくいくと思います。

――最後に、「全国の子どもたちに向けて、“夢”というキーワードで熱いメッセージをお願いします!」。

佐藤選手:僕自身、ずっと夢を信じて走り続けています。レースを始めたのは20歳で、遅いスタートでしたが、挑戦を続けて今40歳になりました。たとえ無理と言われようとあきらめずにチャレンジを続けてきたし、継続することで結果は必ずついてくる。自分を信じ続けてきたからこそ、こうして夢を叶えることができたと思っています。そして、自分がここまでくることができたのは多くの方々のサポートがあったからこそ。ぜひ自分を支えてくれる人たちへの感謝の気持ちを忘れずに、しっかりと夢を胸に持って、自分を信じて頑張ってほしいと思います。

――佐藤選手、本日はありがとうございました。

⇒前編はこちら

佐藤琢磨選手のトークショーの様子の動画(長さ:10分51秒)

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