タイヤに気泡なんてありえない?!困難を極めたスタッドレスタイヤ開発

ブリヂストンのスタッドレスタイヤ「ブリザック」に採用している発泡ゴムは、タイヤそのものの素材に気泡を含ませることで滑りの原因となる水膜をスポンジのように吸い取り除去するという独自の技術。この発泡ゴムは1988年に誕生した初代ブリザックから採用しているものですが、その誕生までには実に多くの苦労があったといいます。開発をとりまとめた山口宏二郎にその誕生ストーリーを聞いてきました。

「発泡ゴムを採用したスタッドレスタイヤは1988年に販売を開始して以来、これまで2億本を販売してきました。正直なところ、開発当初はここまでの商品になるとは想像していませんでした。当時はスパイクタイヤによる粉塵問題により新しい冬用タイヤが求められ、技術者の誰もが“何かできないか?”と暗中模索していました。街の発明家からの提案に耳を傾けることもありましたし、タイヤの表面に吸盤をつけてみたこともありました。とにかく様々な検討を重ねていた時期のひとつのアイディアがこの発泡ゴムでした」

開発をとりまとめた山口宏二郎
開発をとりまとめた山口宏二郎

「タイヤの材料開発を行う部門からゴムの中に小さな泡を取り込んで、スポンジのような柔らかさをもつ素材を使ったらどうかという提案がありました。ゴムを柔らかくするためには一般的にオイルを用いますが、このオイルは次第に抜けゴムは硬化していきます。オイルの代わりに気泡で柔らかくできるのならそれは素晴らしいアイディアと、私たちはすぐに試すことにしました。ところが気泡を取り入れたタイヤの試作は失敗の連続。ブリヂストンにはウレタン・マットレスの開発・製造部門もあり、発泡ゴムの難しさは聞いてはいたのですが、研究所にはトレッド部が剥れたいびつな形をしたタイヤがごろごろ転がっているような状況でした」 

「幾度もの試作を経て材料と構造との適正化に目処がついた後も大変でした。長年にわたりタイヤ内の破壊核となる泡を取り除くための製造技術を磨いてきた製造部門へ、気泡を入れてくれ、それもそれをコントロールしてくれ、と真逆のお願いするわけですからね。最初は“何を言ってるんだ!”と反発を受けましたよ。技術サービスや販売部門もこの技術には懐疑的で、製造技術や品質保証の構築を兼ねた市場評価用プロトタイヤの製造本数を決めるだけでも大変だったことを思い出します。しかしそんな逆風の中での苦労の甲斐もあって、ようやく生み出すことができた発泡ゴム技術を搭載したブリザックは、唯一無二のアプローチにより冬用タイヤにおけるひとつの答えになったのではないかと思います」

BLIZZAK VRXとアクティブ発泡ゴム
BLIZZAK VRXとアクティブ発泡ゴム
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