PROJECT 03
サステナビリティ
環境負荷低減を実現させる
~100%サステナブルマテリアル化~
Point 1
ブリヂストンでは、持続可能な社会を目指す取り組みとして、2050年を見据えた環境長期目標を定めている。製品の原材料を再生資源※1・再生可能資源※2のみで構成する「100%サステナブルマテリアル化」がそのひとつ。中間目標として2030年に40%達成を目指すことになり、取り組みを加速させるべく専門部署が新設された。
Point 2
タイヤのリサイクル、タイヤ製造に利用できる再生資源・再生可能資源の模索、天然ゴムのさらなる活用などの具現化に向けて本格始動。「サステナブルとビジネスをどう両立させるのか」といった現場の不安な声も少なくなかったため、ワークショップなどを通じた啓蒙活動を同時に展開し、試作品として形にする段階までこぎつけた。
Point 3
100%サステナブルマテリアル化やカーボンニュートラル化の実現は、単に地球環境の保護につながるだけでなく、ブリヂストンの成長戦略でもある。社会価値・顧客価値を持続的に提供できるサステナブルなソリューションカンパニーへと進化するために、今後も歩みを続ける。
※1:再生資源(Recycled Material):回収(再生)された材料を再加工して製造され最終製品や部品に使用される材料
※2:再生可能資源(Renewable Material):継続的に補充される生物由来のバイオマスからなる材料(バイオ由来の材料)(補充速度≧枯渇速度)
Part 01
サステナブルマテリアルを使った
商品の開発を本格始動させる
2012年、ブリヂストンは2050年を見据えた環境長期目標を策定した。この一環として掲げられたのが、2050年までの100%サステナブルマテリアル化だ。ブリヂストンでは、サステナブルマテリアルを継続的に利用可能な資源から得られ、事業として長期的に成立し、原材料調達から廃棄に至るライフサイクル全体で環境・社会面への影響が小さい原材料と定義している。2020年には「マイルストン2030」を策定。2050年に向けた中間目標として、2030年までにサステナブルマテリアル化40%の実現を目指すことが定められた。
この取り組みを加速させるため、名称に「サステナブル」を冠した新部署が複数創設される。今回は、全体の舵取り役を担うサステナブル技術戦略企画部発足を機にメンバーとなったYに話を聞いた。
「異動の内示を受けたときは、『なぜ私が!?』と驚きましたし、何をすればいいのだろうと不安でした。ただ、異動前には、ブリヂストンが今後取り組むべき課題などをテーマに自主的にワークショップを開催していたんです。いずれは将来を見据えた戦略に関わる仕事に就きたいという思いもあったので、そのチャンスが巡ってきたのだと思いました」
異動直後は手探りの状態が続いたが、その後必要性を感じたのが社内各部署との協議だ。
「商品企画部と一緒に、どのようなサステナブルマテリアルを使って商品化していくかを計画立案すると同時に、どのような技術が必要になるのかを材料研究や製品開発の担当者と洗い出していきました」
Part 02
「本当にできるのか?」という不安を
「自分たちで実現させなければ」へと変換
「誰もが半信半疑で、自分ごととしてとらえていない」――社内の技術部隊にタイヤのリサイクルに関する技術検討を要請したり、社外のサプライヤーと協議してタイヤに利用できる再生資源・再生可能資源を模索したりと、さまざまな関係者とやりとりするなかで直面した障壁だ。 「以前、資格を持つ社内の講師を招聘して開催されたSDGsに関するワークショップに参加したことがあります。そこで実感したのが、環境負荷低減に向けた取り組みは、ブリヂストンの必須の課題だということです。まずは関係者にこの点を共有してもらわなければ始まりません。上司に『社内wikiを通じてサステナブルの記事を紹介したい』と直談判しました」
許可を取り付けてさっそく公開してみると、多くの社員から「サステナブルな取り組みは必要だが、本当にビジネスとして成立するのか?」といった不安の声が寄せられたという。これを逆手に取り、「どうすれば成立させられるか、自分たちで考えましょうよ!」と呼びかけ、ワークショップを開催。その内容も、社内wikiで公開していった。
「半年くらいすると、周囲のマネージャーたちから『今の取り組み、なかなかいいじゃないか』という肯定的な声が聞こえてくるようになりました。このあたりから、社内の空気が『本当にできるのか?』から『自分たちで実現させなければ』という本気モードに変わってきました。一方、経営陣からは『机上の論理を説明されるばかりでは進捗度合いが分からない』と指摘されました。そこで、試作品をつくってみることにしたのです」
持てる技術をすべて投入して試作品をつくれば、テストを通じて次にクリアすべき課題が顕在化する。このプロジェクトではこれまでに3回試作タイヤをつくっているが、都度、到達レベルを確認しつつ新たな課題を見出すという好循環が生まれているという。
Part 03
スイッチが入った社内は動きを加速
社外パートナーとの関係も進化させる
2030年のサステナブルマテリアル化40%という目標達成までの道のりを10段階にすると、現状の進捗度合いは4くらいだという。
「ただし、先ほども触れたように社内ではスイッチが入って多くの関係者が本気モードになりましたから、道筋はかなり明確化しています。今の職務を通じて再認識しましたが、ブリヂストンは本当に心強い仲間がそろった会社だと思いますね。各分野に高度な知見を有したスペシャリストがたくさんそろっていて、『やるぞ!』となれば一丸となってすごいパフォーマンスを発揮するんですよ。今の取り組みでは、エンジンをかけるのに苦労したものの、ひとたび動き始めれば、どんどん加速しながら前進している感じです」
自社の頼もしさを感じると同時に、社外の素材サプライヤーとのやりとりを通じて新たな可能性を見出している。
「サステナブルマテリアルを模索するなかでは、ブリヂストンがこれまで接点をもったことのない新たな素材のサプライヤーとも知己を得ました。なかには、サステナブルについて私たちよりずっと進歩的な会社もあり、いろいろ参考になる意見を聞かせていただけています。従来ビジネスにおけるサプライヤーとブリヂストンは、仕入れ先と購入者という関係になることが多かったですが、サステナブルマテリアルのサプライヤーは、新たな価値や事業を創出するための大切な共創パートナーなんですね。今の取り組みに従事するようになって、社会の変化の速さを実感しています。変化のスピードがより増していくなかでは、自社の知見だけでは対応しきれません。2050年の目標達成に向けて、共創関係をより進化させる必要もあると思っています」
Project Member
サステナブル技術戦略企画部
2006年入社
応用化学専攻 修了
K.Y.
NEXT STEP
このプロジェクトが目標を達成すれば、経済成長による天然資源の枯渇が危ぶまれ、資源価格の高騰などが深刻化している状況に対して大きな打開策となる。「今は『環境のため』という意味でのサステナブルですが、将来的には環境以外の社会課題に意味を広げ、新たな価値を提供していくことが求められます。自分たちの子どもや孫の将来を左右する壮大なミッションとして、全社的に理解度や意識レベルを高めていく必要があると思っています」
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