暮らしを支えるトラック・バス用タイヤのパタン技術をご紹介します!
私たちの暮らしに必要な物資を運んでくれるトラックや、公共交通として人々の移動を担うバスを支える「トラック・バス用タイヤ」。これらのタイヤを、ブリヂストンでは略して「TBタイヤ」と呼んでいます。今回は、このTBタイヤに込められた新しい技術について、実際に開発を担当しているエンジニアの知見を借りてご紹介します。
ブリヂストンでは、日本国内向けにTBタイヤの4つの新商品を今年の3月に同時発売しました。サイドウォール部の表示に加え、どのタイヤも地面に接する「トレッド」と呼ばれる部分の溝の模様が違っています。ブリヂストンでは、その溝の模様のことを「パタン」と呼んでいます。
今回は普段の暮らしの中で目にするかもしれない「パタン」の部分に込められた技術について、3月に発売された新商品の1つであるオールシーズンタイヤ「M888」に搭載されたパタン技術「アドバンスドコンタクトパタン」を例に、開発を担当した(株)ブリヂストンのエンジニアに話を聞いてみました。(※写真は昨年撮影したものです)
■「アドバンスドコンタクトパタン」とは?
筆者「坂本さん、アドバンスドコンタクトパタンですが、なぜこのような形状になっているのでしょうか??」
「TBタイヤで特に重要な摩耗性能を向上するためにブロックの理想的な「接地」を追求した結果です。M888のトレッドを見てみると、溝に囲まれた3種類の形のブロックが並んでいます。これらのブロック形状が、タイヤがより良く接地をするためのカギになっています。」
■ゴムが減る(摩耗する)メカニズムに基づいた理想的な接地状態の追求
筆者「どのように理想的な接地を追求したのでしょうか?」
「『ゴムは押し付けられて引きずられた時に摩耗する』というメカニズムに基づいて追及しました。消しゴムを使ったことはありますよね?消しゴムはどんなに大きな力を加えても上から下に押し付けるだけでは擦り減りません。引きずられて擦られることではじめて擦り減ります。逆に、押し付ける力が小さくても、長い距離を引きずられると大きく擦り減ります。タイヤのゴムも現象は同じで、『どのくらいの力で押し付けられて、どのくらいの距離を引きずられるか」がゴムの擦り減り量を左右するポイントなので、その原理・原則に基づいて考えました。」
■ミクロな領域まで原理・原則にこだわったブロックの形状
筆者「その原理・原則を意識したブロックのカタチになっているということですね?」
「その通りです。擦り減り量を最も意識したカタチになっているのが、真ん中のブロックです。荷重がかかったときにブロックが潰れにくい形状に設計しています。」
筆者「なぜ潰れにくい形状に設計したのですか?」
「潰れる量が大きいと、タイヤが回転してブロックが離れる瞬間に、ミクロな領域で引きずられる距離が大きくなってしまうからです。」
筆者「大きいトラックのタイヤなのに、ミクロな部分まで気にして開発しているのですね!」
筆者「なるほど。ブロックのカタチには色々な意味が込められているのですね!また機会があったら、残りの2種類のカタチのブロックの技術についても教えてください!」
坂本「開発機密上問題ない範囲であればお話します(笑)」
今回は坂本さんへのインタビューを通じて、摩耗性能にフォーカスしたブロックのカタチの謎に迫りました。タイヤには摩耗性能以外にも考慮すべき性能が多数あります。ブリヂストンでは、雨の日の安全性に関わるウエット性能や環境性能である低燃費性能など、各性能に関して原理・原則に基づいた技術を込めて製品開発に取り組んでいます。