免震レポート
「2016年 熊本地震」
Report
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「賃貸マンションを複数所有していますが、免震建物はエスタシオーネスがはじめてです。私は建築士で免震装置のしくみ・効果を理解しており、またいつかは大地震が来ると思っていたので、次にマンションを建てるなら免震建物だと考えていました。それに、免震建物にすれば上層階の躯体が軽量になり、費用を軽減できると考えていました。しかし、11階程度の高さでは躯体のボリュームが少ないので大きなコスト面のメリットはありませんでした。」
「前震が起きた時、私は宴会に出席していました。夜といっても時間がまだ早く、すぐにエスタシオーネスに向かいました。建物前の駐車場に1~2組の入居者が出ていましたが平静で、慌てて出てきた様子はなく、マンションよりも周囲の様子を見ているようでした。その2日後に本震がきました。入居者に話を聞きますと、室内は家具が平行移動していたけれども、物は倒れていないと言っていました。後日わかったのですが、空室のガラステーブルに置いていた一輪挿しも若干移動したくらいで倒れなかったそうです。それに、震災直後の周辺の住宅では破損した家具や電化製品といった震災ゴミが大量に出されていたのに比べ、エスタシオーネスのゴミ集積場にはそうした物がほとんど出ていませんでした。確かに免震構造が大地震の揺れの影響を小さくしていました。管理会社の若い担当者も、「免震」という言葉では知っていても、その効果を今回はじめて理解したようです。
私はエスタシオーネスに近い耐震マンションの最上階(10階)に住んでいます。本震の時は立っていられないほど揺れました。事務所は木造の戸建で、建物自体に大きな被害はなかったのですが、室内はタンスがひっくり返ってひどい状況でした。前震が起きた翌朝9時から片付けに入ったのですが、まさかまた大地震が来るとは思いませんでした。地震後3日間は家にいるのが怖くて、家内と家内の母親とともに事務所の庭先で寝起きしました。その後は、エスタシオーネスの最上階が一室空いていたので移り、余震も来ましたが1か月ほどそこで生活しました。」
「所有している耐震構造の賃貸マンションは、外壁にかなり細かなヘアークラック(幅の小さい亀裂やひび割れ)が入っていましたが、エスタシオーネスは入っていなかったようです。本震で家具が倒れたという話も聞いていません。家具が倒れるということは、夜中に寝ていて下敷きになることが予測されるので、やはり、人と建物の安全を守るのに免震構造が有効だと実証されたと思います。
熊本市は地域係数※が0.9だったりするので、市民は皆、地震が来ない地域だと思っていたでしょう。益城町に比べれば確かに被害は少なく、非免震の建物でも安全は保たれたものもありました。
ただ、免震建物は破損物のゴミ出しや、家具の下敷きになってケガをするようなことはほぼありません。危険は非常に少ないです。
地震後、エスタシオーネスへの問い合わせも増えまして、ほぼ満室になりました。政府の施策であるみなし仮設住宅(民間賃貸住宅の借上げ制度)として、県の助成金で入居している方もいらっしゃいます。
今回のことで、免震と非免震の違いをわかって入居する方が増えてくると思います。また、免震構造を採用することで賃貸マンションとして差別化が図れるものと思います。」
「熊本地震が起きてから、当社が免震設計を手掛けた県内の2棟の賃貸マンション(アレンタワー新八代、エスタシオーネス)の状況を調べるために、博多の事務所から熊本市内へ向かいました。エスタシオーネスに到着すると、建物の外観に変化がないことが見て取れました。地下の免震層もほとんど被害はありませんでした。
免震装置を見て気付いたことは、揺れの方向が一方向だということ。通常ですと、ケガキ計は楕円を描くものですが、細い八の字を描いていました。一方向に異常に強い揺れが起きたような痕跡でした。やはり地震はまだ難しいものだと感じました。アレンタワー新八代も調査しましたが、エスタシオーネスと同様に、免震装置が想定通りに動いていることを確認しました。」