免震レポート
「2016年 熊本地震」
Report
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「九州新幹線・新八代駅前にあるアレンタワー新八代は、2004年に九州新幹線の新八代~鹿児島中央間が開通した際に、博多~新八代間が開通するのを見越して新八代駅前の土地を購入し、建設した賃貸マンションです。建設資金を借り入れる際に、賃貸経営のリスクを減らしたいと免震構造の採用を検討しました。過去に、福岡県西方沖地震(2005年3月20日)を経験していまして、その時、福岡市天神にある15階建のホテルがかなり揺れてエレベーターが止まったことがありました。免震構造にすればこのような被害は少ないと思っていました。しかし、免震装置を導入するとコストが上がり、周囲からは100年に1度の地震のために、免震構造が必要かという意見も出ました。そこはやはり安全優先とのことで最終的に導入を決断しました。」
「アレンタワー新八代が完成した当時、免震装置について知っている方はあまりいませんでした。しかし徐々に人気が出てきて、単身者やファミリー層の入居が決まってきました。
4月14日に前震が発生した当時、私はアレンタワー新八代ではなく耐震構造の自宅(*1RC*2ラーメン構造)にいました。16日の本震が発生した時は、自宅がつぶれるかと思い飛び出しましたが、被害はありませんでした。
アレンタワー新八代の被害状況ですけれども、タイルのひび割れはほとんどありませんでした。また、入居者の室内もまったくと言っていいほど被害はありませんでした。アレンタワー新八代のエレベーターはすべり支承(免震装置)の上に設置していたので停止することはありませんでした。また、アレンタワー新八代の隣にはビジネスホテルがあります。この建物(SRC造)はアレンタワー新八代よりも丈夫かと思いましたがタイルがかなり剥がれてました。当社が管理する非免震の賃貸マンションもアレンタワー新八代に隣接しており、被害状況を見たのですが、8階の部屋の中では棚が全部ひっくり返って、コップや皿が散乱、ガラス片が散らばっていました。また、震災ゴミも多く出ていました。
熊本地震後、ブリヂストン関係の方をはじめ6名ほど来られてアレンタワー新八代の免震層を調査したところ、南西、北東方向合わせて20cm動いたと報告が届きました。ボルトのマーカーが動いたり、ダンパーの塗装がはげていたりと地震の爪痕が残っていました。
『アレンタワー新八代は免震建物で安全性が高い』という話が地域で広がると、入居者のご家族が軽トラックにマットレスを積んで避難して来られました。その後1か月ほど同居されていたようです。」
「アレンタワー新八代の地下の免震層には当社独自の特徴を持たせています。*3高減衰ゴム系積層ゴムは赤、*4鋼製ダンパーは紫と*5フーチングを色分けするとともに、装置の名称や方角のプレートを作って柱に貼ることで、一般の方が見ても、どこに何の設備があるのかわかるようにしてあります。
免震建物を建てるにあたって重要なのは、免震をよく知る設計会社や施工会社・免震ゴムメーカー等に相談・協力いただくことです。特殊な装置なので、そういう方たちと組まないとスムーズな免震建物の建設は難しいと思います。一方、技術者に任せっきりにせず、自分自身も免震を勉強することも大切と思います。知識がないと、コストの問題も理解できないからです。
最後になりましたが、東北・仙台では、東日本大震災後、免震構造のマンションについて多数の問い合わせが入り、空室が埋まっていたと聞きました。熊本地震後、アレンタワー新八代でも同様の動きがありましたから、今後は熊本でも広く同様の動きになっていくと思います。現在、免震を世の中に広めるためにブリヂストンの免震ゴムを用いて免震建物等を計画中です。」
「私はアレンタワー新八代の15階に住んでいます。4月14日の熊本地震前震発生時にはアレンタワー新八代にいませんでしたが、16日の1時25分頃に起きた本震の時はアレンタワー新八代にいて、免震建物の揺れを体験しました。最初に縦揺れが来て、その後長い横揺れ。船の中にいるような余韻が残る揺れ方で、急激な動きは起こりませんでした。家具は倒れず、食器棚から皿も飛び出なかったので特にあわてず、非常に冷静に対処できました。15階から外を見ると、隣のホテルから多くの宿泊客が外に出ているのが見えました。どうやら避難指示が出たようです。
熊本はこれまで大きな地震がなく、賃貸マンションに免震装置を付けるのはめずらしいこと。
今回、大地震が来ても被害が最小に抑えられ、大変よかったと思います。」
ブリヂストンでは免震賃貸マンションに、ご入居の方を対象にアンケートを実施。
2016年熊本地震において、免震マンションの中がどのような状況だったのか生の声をお届けします。
免震でない建物の揺れはすごくこわかったです。免震マンション以外への外泊が怖くてできませんでした。」