目が見えなくても、足が動かなくてもバイクに乗る喜びを。「走るわくわく」を提供するブリヂストンの協賛活動

目が見えなくても、足が動かなくてもバイクに乗る喜びを。「走るわくわく」を提供するブリヂストンの協賛活動

 障害があっても、もう一度バイクに乗る楽しみを。そんな思いを叶える「Side Stand Project」(サイドスタンドプロジェクト、以下SSP)。このプロジェクトは、一般社団法人SSPが2019年から始めた活動で、ブリヂストンは2019年から協賛しています。バイク事故等で歩けなくなったり、視力を失ったりと、障害をきっかけにバイクを諦めてしまった方にもう一度バイクに乗って楽しんでもらうこの活動。パラリンピックのパラアスリートが活躍しているように、バイクも一つのスポーツとして健常者と同じように楽しむ機会を増やす事などを目的としたこの活動は、全国各地で開催されています。

 先月5月26日には、埼玉県上尾市にある自動車教習所をレース会場として、「パラモトライダー体験走行会」が行われました。協賛活動を担当している(株)ブリヂストン モータースポーツ企画・推進部 アクティベーション課の熊添に、活動内容などを紹介してもらいます。

モータースポーツ企画・推進部 アクティベーション課の熊添
モータースポーツ企画・推進部 アクティベーション課の熊添

―この体験走行会には、どのような方が参加されているのでしょうか。

バイク事故で下半身不随になってしまった方や、ある一部分しか見えない視覚障害を持った方など、今回は5名の方が参加されています。バイクは全身を使って、感覚を研ぎ澄まして操るものです。私自身、普通二輪免許を取得するために教習所に通い始め、その難しさや、モーター「スポーツ」と呼ばれる所以を実感しています。SSPではバイクの乗り方に精通した運営の方々の工夫や、既存の形にとらわれないモノづくりの知恵で、誰もがバイクを楽しめる環境が整っています。下半身が動かなくても29年振りにバイクに乗ることができた方もいて、本当に凄いなと思いました。

SSPの名前の由来となった二輪車の車体を支えるオレンジ色と黒色の小さな車輪がついた”サイドスタンド”SSPでは、このサイドスタンドの代わりにボランティアの方々がパラモトライダーを支えている
SSPの名前の由来となった二輪車の車体を支えるオレンジ色と黒色の小さな車輪がついた”サイドスタンド”
SSPでは、このサイドスタンドの代わりにボランティアの方々がパラモトライダーを支えている

―ちなみに、このSSPの活動はどのように始まったのでしょうか。

1990年代にMotoGP(ロードレース世界選手権)で兄弟揃って大活躍したレーサーの青木宣篤さん、拓磨さん、治親さんの3人は「青木三兄弟」と呼ばれ、兄弟そろって表彰台を獲得するなど大活躍していました。次男である、拓磨さんが1998年に事故で下半身不随になりました。三男の治親さんがもう一度拓磨さんにバイクに乗ってもらいたいという思いから、長男の宣篤さんと力を合わせてこのプロジェクトを立ち上げたそうです。

1995年、1996年ロードレース世界選手権GP125チャンピオンであり、SSP代表理事の青木治親さん
1995年、1996年ロードレース世界選手権GP125チャンピオンであり、SSP代表理事の青木治親さん

まずはロードレース世界選手権のチャンピオンからレクチャーを受けて走行開始

 まずは、体験走行をするパラモトライダー、ボランティアの方も一緒に補助輪等が装着された特殊なバイクの扱い方をレクチャーしていただくところから始まります。初めて参加するボランティアの方にも分かりやすく、ポイントを絞って代表の治親さん自らが丁寧に説明していました。

常に20名以上が参加を待っている「パラモトライダー体験走行会」。参加した方は青木治親さんからレクチャーを受けることができます
常に20名以上が参加を待っている「パラモトライダー体験走行会」。
参加した方は青木治親さんからレクチャーを受けることができます

パラモトライダーがバイクにまたがれるよう、2、3人のボランティアがサポートをすることも
パラモトライダーがバイクにまたがれるよう、2、3人のボランティアがサポートをすることも

いよいよ走行開始!

 まずはエンジンをかけずに、伴走する2人のボランティアの方が後ろからバイクを押して走ります。その後、エンジンをかけて走行し、後ろの黒色の補助輪を外します。状況次第では、倒れない程度まで前側のオレンジ色の補助輪を上げ、最後は伴走者無しで自走、というようにパラモトライダーをサポートします。

ボランティアとして参加したモータースポーツ企画・推進部長の原も伴走しながらパラモトライダーをサポートします
ボランティアとして参加したモータースポーツ企画・推進部長の原も伴走しながら
パラモトライダーをサポートします

後ろ側の黒色の補助輪を外して前側のオレンジ色の補助輪を上げ、自走できるようになる方も。
後ろ側の黒色の補助輪を外して前側のオレンジ色の補助輪を上げ、自走できるようになる方も。

SSPに多くのボランティアが集まる理由はここにある。~パラモトライダーの声~

 今回この「パラモトライダー体験会」に参加した「パラモトライダー」の方々にお話を伺うことができました。
 2010年の11月に事故に遭われて以来、12年振りにバイクに乗ることができた牧原さんは、コースを3周し、「本当に楽しかった。正直物足りないので、また応募する。このイベントに参加することで、諦めないで挑戦をし続ければ、楽しい事が待っているというのを実感した。SNS等でそういった発信すると、元気をもらえたと言ってくれる人が多いので、今回も体験した事を発信したい」と話してくれました。

バイクの醍醐味は「人馬一体」となって自分の一部のように扱うことができるところ、というお話もしてくれた牧原さん
バイクの醍醐味は「人馬一体」となって自分の一部のように扱うことができるところ、
というお話もしてくれた牧原さん

 また、左目の視力がなく、右目も殆ど見えていない谷田さんは、「僅かに見えるコース上の白線と治親さんやボランティアの方の声を頼りにコースを自走する事ができました。本当に感謝しています」と笑顔いっぱいでした。
「目が殆ど見えないのに、どうやって400ccのバイクに乗るのだろうか」と少し心配になりますが、パラモトライダーの方が自走できるようになった後も、ボランティアの方がバイクで伴走してついていき、声をかけ続けてサポートします。また、治親さんが谷田さんに無線でタイムリーかつ適切にコースを走るための指示を送ることで、僅かに見えるコースも走ることができました。

走り終えての感想をコメントしてくれた谷田さん
走り終えての感想をコメントしてくれた谷田さん

自走できた喜びのあまり「男泣き」をするパラモトライダーも。バイク事故で、右足大腿部以下が義足になり、2年振りに大好きなバイクに乗ることができた宮部さんは、自走できた喜びで「男泣き」をしていました。自走していた際、一瞬片手をハンドルから離して周囲を驚かせたのは、走行中にあふれた涙を拭うためだったのです。

バイクに乗る喜びをかみしめ、思わず「男泣き」した宮部さん
バイクに乗る喜びをかみしめ、思わず「男泣き」した宮部さん

障害があっても走る喜びを感じられるこのSSP。まさにブリヂストンの「走るわくわく」を提供しつづけるというブリヂストンの想いに通じる取り組みでした。

筆者もボランティアとして参加しましたが、多くのボランティアの方々が参加している理由が分かりました。それは、誰かが本当に喜んでいる姿に心を動かされる瞬間が忘れられないからだと思います。また、障害がある無しにかかわらず、どんな人でも「走るわくわく」を感じてもらうために、どうすればそれが実現できるのかを考えることの大切さを学びました。

9月11日には、「箱根ターンパイク」をSSPが自治体や警察の協力を経て占有し、パラモトライダーと健常者ライダーが一緒に走行して楽しめるイベントを企画しています。
ボランティアも多数募集しているそうですので、ご興味のある方は、SSP公式Facebookをご確認ください。
SSP公式Facebook:https://www.facebook.com/SideStandProject/

ブリヂストンでは、より多くの方に心動かすモビリティ体験を提供する活動をさまざまな形で支えていきます。

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