92年の初代登場から四半世紀、9代目CBR1000RR が、17年モデルとして登場。今回、ホンダ開発チームに取材。またブリヂストン開発チームリーダーである青木に当時の話を聞いた。
突き詰めたのは操る喜びの進化。CBR1000RR(以下RR)はオールラウンドな性能を与えることで、乗りやすさや操りやすさなどがコンセプトのコアとなっている。対するCBR1000RR SP(以下RR SP)はワインディングやサーキットで、“もうひとつ上のおいしさ”を楽しめるスペシャリティーを持たせている、とホンダ開発チームは語った。
「合同キックオフ時には、ホンダ様の商品コンセプト、及びそれを達成する目標スペック、生産台数や日程など、車両情報を共有していただきました。それを経て今回我々からご提案させて頂いたのがRRには当時開発中だったS21、そしてRR SP 用にはRS10 でした」と青木。
新型CBR は、タイプごとのコンセプトに合わせて履くタイヤも異なるのだ。
「S21に関しては、まだリプレイス用として開発中の時期だったので、試作品に実際に乗ってもらい、ホンダ様にコメントをいただきながら開発の参考にもさせていただきました」と当時を振り返る。
今回のCBRから始まった、ホンダのタイヤに関わる開発では、出荷時に装着されるOEM(標準装備)タイヤのみならず、ユーザーが乗り続ける上で欠かせないリプレイスタイヤも視野に入れながら、車両とタイヤとのマッチングを徹底するという新しいアプローチ方法がとられた。
ブリヂストン
MCタイヤ開発部長
青木 信治
'93年の入社以来、一貫してバイク用タイヤに携わる。
'97年からレースタイヤ部門に在籍し、
世界最高峰レースのタイヤも担当した技術者。
現在はMCタイヤ開発部長を務める。
車体慣性モーメントの大幅低減や車体各部の剛性が見直され、電子制御の新規投入によって、圧倒的な軽快性と高精度なハンドリングを演出。同時に、タイヤと車体のマッチングも大幅に向上させており、ユーザーのリプレイスタイヤ選択肢が拡大されている。
それまでは、車体特性に合わせてOEMタイヤのチューニングを頻繁に繰返し、その都度タイヤメーカーに試作品の制作を依頼。しかしこの手法では、専用タイヤを装着しなければユーザーに車両本来のポテンシャルを楽しみ続けてもらうことが難しい状況や、全方位の性能を目指した結果として完成車の個性や魅力が埋没してしまうことも少なからずあった。それは時にタイヤそのものについても、タイヤメーカーのコンセプトを崩してしまうことさえあった。そのため、17年モデルの開発から新たな試みにチャレンジしたという。
目指したのは、コンセプトを極めた“際立ち”の実現。これらを踏まえ、ブリヂストンのタイヤコンセプトを理解したうえで、よりオールラウンドなRRにはS21、よりサーキット性能や高い操舵精度が求められるRR SP にはRS10 の適用に至ったのだという。とはいえ全てのタイヤにマッチする車両の作り込みは簡単ではない。17年モデルの進化の方向性として、車体側のベースポテンシャルを高めるために完成車を構成する各部品の徹底的な軽量化を実現。また、RC213V S の技術を継承するHSTC(ホンダ・セレクタブル・トルク・コントロール)、TBW、APS、新規開発のABS やクイックシフター(アップ/ダウンRR SP)、スマートEC(RR SP 専用)などの電子制御による走行シーンごとの、より適切なタイヤ荷重配分ともあわせ、タイヤの持っているパフォーマンスを最大限に引き出している。そんなホンダのバイク作りに、青木は感謝と同時に杞憂もあるという。
「我々としては開発も行いやすく、効率化にも繋っています。だからこそ、このような新しい開発フォーメーションでのタイヤ進化もさらに加速させないと……って、むしろ緊張感も感じる昨今です(笑)」
ホンダの新たな試みに我々はどう応えていくのか、両社の挑戦は続く。
ホンダからのOEMタイヤに対する要望として、乗り味だけでなくさまざまな機能確認を正確にフィードバックしている。
その評価は、リプレイスタイヤ開発時の参考にもするという。
CBR1000RR SP × RS10
世界最高峰のライダー達の系譜。ドライコンディションでの高いハンドリング性能とグリップ性能、安定性を実現したプレミアムハイグリップラジアル(※)
CBR1000RR × S21
ライディングテクニックとマシン性能を余すところなく路面に伝え、切れ味鋭いコーナリング体感できる先鋭スポーツラジアル(※)