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THE WORLD-CLASS BATTLAX QUALITY ニッポンのフラッグシップタイヤ開発物語 Vol.3

ベストマッチを求め、納得いくまで試した。
コンセプトにブレがない”直球勝負”のGSX-Rはライダーフレンドリーの線上に、絶対的な早さを見出す。その実現に、タイヤへの要求は無限に続く…

スズキ 二輪事業本部
二輪第一カーライン リーダー兼務
チーフエンジニア

佐原 伸一

新型GSX-R1000/Rの開発リーダーである佐原さんは、ʼ04年からワークスマシンGSV-Rに携わり、ʼ07〜ʼ11年までMotoGPプロジェクトマネージャーを務めた。

ブリヂストン
MCタイヤ開発部長
設計第1ユニットリーダー兼務

青木 信治

'93年の入社以来、一貫してバイク用タイヤに携わる。
'97年からレースタイヤ部門に在籍し、
世界最高峰レースのタイヤも担当した技術者。
現在はMCタイヤ開発部長と標準装着タイヤ部門の設計リーダーを兼務。

1985年に登場したGSX-R750以来30年余り、“走る・曲がる・止まる”を愚直なまでに追求し続けるスズキのGSX-Rシリーズ。そのトップモデルたるGSX-R1000/Rが、17年モデルとして完全刷新。トップパフォーマーが標準装着(OE)タイヤに選んだのが、ブリヂストンの「RS10」である。

 「最初にRS10を試したのは14年ですね(注:RS10日本国内発売は15年2月)。新型GSX-R1000/Rの開発は社内で決定していましたが、それを公式にブリヂストンにお伝えする前に、サンプルとして提供を受けました」とチーフエンジニアの佐原さん。

 先代GSX-R1000で先行テストを行い、昨年の秋に新型GSX-R1000/Rのプロトタイプを公表した時点で、標準装着タイヤのRS10の諸元(仕様)は、ほぼ煮詰められていたという。そう聞くとリプレイス用のRS10からOE用のセッティングを大きく変えず、早々に完成・・・と感じるかもしれないが、実はその正反対。

 「サイズから構造、ゴムの材質まで、前後のタイヤで合わせて数十諸元を試させてもらいました」と車体開発・実験を担当し、自ら試乗テストを行う小林さんは振り返る。ブリヂストンでOEタイヤ部門の設計リーダーである青木さんも、1機種のOEタイヤ開発で数十種類もの諸元を試すのは突出しているという。

「それだけ、こだわって作っているということで、それを一緒にさせてもらえたのはブリヂストンとしても凄く良かった。GSX-R用に特化した、100点満点のRS10になっていると思います」

スズキ 二輪事業本部
二輪車体・電装設計部
車体設計第一課

小林 浩二

車体設計と実験、OEタイヤ実験も担当。テストライダーではないが、“車両運動”分野の専門職で、実際に車両に乗って評価も行い、スズキならではのバイク作りに励む。

Front: 120/70ZR17M/C(58W)

Rear: 190/55ZR17M/C(75W)

レースタイヤに履き替えても フィーリングが変わらないサイズ。

ハイグリップやスリックタイヤは、表記サイズが同じでも外径が大きい。
履き替えた際にフィーリングが変化しないよう、割合が同じになるサイズ設定をしている。

公道からサーキットまで“すべてで1番”を目指す

GSX-R用RS10は、リプレイス品より剛性を高めに設定している。これは開発を行うスズキの竜洋テストコースが高速・高荷重なコースというだけでなく、ヨーロッパなどでは公道でも200km/hを超えるシチュエーションが多々あるためだ。

 「でも、トータルでバランスの整ったタイヤ(リプレイス用RS10)に手を加えると、別の部分にネガティブな現象が出ます。例えば、グリップが高くなると、一般的にハンドリングが重くなる傾向があり、軽快性が乏しくなる。そんな相反する部分を“もうちょっと”とブリヂストンにお願いし続けていたら、数十諸元になってしまったのです(笑)」と小林さん。

 「ライダーに優しいバイクが、結果として速く走れるバイクになる。たぶんレーサーも同じだと思いますが・・・そのためにスズキは、神経質ではなく、軽快だけど安心感のあるニュートラルなハンドリングを目指していますが、そこはブリヂストンのタイヤの進化に依存している部分でもあります。タイヤの構造により、速度域によってハンドリングが変わる(変曲点が生じる)場合もありますが、そういう変曲点をなくすことにこだわってリクエストをすると“構造上対策が難しいだろうな”と思っていた部分でも、非常に上手く対応してもらえました」

 ほかにも外径サイズや摩耗によるパフォーマンスの変化、ウェット時のグリップまで、スズキがRS10に求めた諸元は数多くある。

 「車両開発開始からさまざまなタイヤを用意していただいて、テストしました。毎回ブリヂストンの方に浜松まで来ていただいて・・・・直接話をさせていただくことで、細かいニュアンスが伝わって、本当にじっくりと良いモノが出来上がりました。現時点でGSX-Rに、もっとも“合うタイヤ”と言って間違いないです」

技術者とのコミュニケーションを重要視!

試したタイヤ諸元の多さも突出するが、そのリクエストを正しいニュアンスで伝えることが大切。
実際に会話し、時間を割いてコミュニケーションすることが良いモノ作りの条件という。

SUZUKI GSX-R1000R

8年ぶりのフルモデルチェンジとなり、MotoGPマシンGSX-RRのテクノロジーが多数投入され、電子デバイスも満載。しかしOEタイヤのRS10はトラコンなど制御を入れない“素の状態”で開発を行っている。