「ゴムの木」の病害診断
「ゴムの木」の病気を早期に見つけ、病害の拡大を防ぐ。
天然ゴム資源「パラゴムノキ」
パラゴムノキは、ブラジル原産の樹木で、幹を傷つけて得られる樹液(ラテックス)から、タイヤの主原料となる天然ゴムがつくられます。 植林後約5-25年の間、ラテックスを採取、これを凝固・乾燥させることで天然ゴムを得ることができます。 現在、天然ゴムのほとんどが東南アジアで栽培されるパラゴムノキから産出されており、将来にわたっても天然ゴム資源として重要な役割を担うものと考えられています。
深刻化するパラゴムノキの病害
もともとパラゴムノキはブラジル原産ですが、20世紀初頭に南米葉枯病(なんべいはがれびょう)(SALB:South American Leaf Blight)という病気で壊滅的被害を受けたため、ブラジルではほとんど栽培されなくなりました。
また、現在、世界のパラゴムノキ栽培面積の9割以上が集中する東南アジアでは、根白腐病(ねしろぐされびょう) (※1)の被害が深刻化しています。根白腐病の診断は、土を掘り起こして目視で行われているため、発見の遅れや誤診などが生じ、病害を拡大させる原因となっています。
- ※1糸状菌の一種であるパラゴムノキ根白腐病菌(Rigidoporus microporus,ネッタイスルメタケ)が引き起こす病気。根に感染し組織を腐敗させることで、樹木を枯死に至らしめる。感染初期の発見が困難。現状では抜本的な対策がなく、発症した場合、罹病部位の切除、薬剤処理により対処する。
様々な病害診断技術の開発
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衛星画像解析による診断
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葉の表面スペクトル(色)・温度の測定による診断
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樹液の成分分析による診断
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DNAを利用した土壌中の病原菌検出
当社グループでは、パラゴムノキの保護と天然ゴムの安定供給のために、インドネシア技術評価応用庁及び複数の大学と連携し、早期に病害を診断する技術の開発を進めてきました。その結果、これまでに、植物病理学、分子生物学、生化学、分析化学、リモートセンシングといった複数領域にわたる4つの技術を確立。病害の早期発見や、病害のもととなる土壌中の病原菌の検出が可能になりました。
根白腐病の簡易診断技術
当社グループは新たに、DNAを利用した病原菌検出技術を発展させ、根白腐病の診断を簡単かつ迅速に行うことができる画期的な技術を開発しました。これは、LAMP法(※2)と呼ばれるバイオテクノロジーを応用したもので、当社グループで解析した病原菌の遺伝子配列情報をベースに開発した試薬キットを利用します。特別な装置を使うことなく、目視で簡単に病害菌の有無を確認することができるため、根白腐病の早期発見、感染拡大の抑制が期待されます。
- ※2LAMP法 栄研化学株式会社が開発した遺伝子増幅法。土壌中の病原菌に特異的なDNA配列を増幅させ、検出するもの