ニュースリリース

分子構造を高度に制御したポリイソプレンゴムの合成に成功

2016年12月13日

株式会社ブリヂストンは、当社が独自に開発した新しい重合触媒※1を用いることで、分子構造を高度に制御したポリイソプレンゴム(以下IR)の合成に成功しました。今回合成に成功したIRは天然ゴムを凌駕する性能を持つ次世代ゴムの実現につながる可能性があります。また、原料に再生可能資源であるバイオマス由来のイソプレンを使用することが可能であり、サステナブルマテリアル※2としての利用が期待されます。今後、実用プロセスの条件検討、および安定的なイソプレンの確保の検討を進め、2020年代の実用化を目指します。

図1. 当社が独自に開発した新しい重合触媒と、合成に成功した新規IRの特徴

天然ゴムはパラゴムノキから採取される生物資源で、合成ゴムに比べ強度・摩耗性能や補強材との接着性能が優れるタイヤの重要な原材料です。今後も世界的なタイヤ需要の拡大とともに、天然ゴムの消費量も増加すると予測されています。当社では天然ゴムの安定供給を目指し、パラゴムノキに関する様々な研究開発に取り組むと同時に、天然ゴム以上の性能を持つゴムを人工的に合成する研究を進めてきました。

【特徴】
今回、当社が独自に開発した新しい重合触媒を用いることで、分子ミクロ構造の規則性※3が天然ゴムと同様に極めて高く(シス率99.0~99.9%)、かつ天然ゴムや従来IRよりも分子量のばらつき※4が小さいIRを合成することに成功しました(表1参照)。

表1. 今回合成に成功した新規IRの特徴

  従来IR
(合成ゴム)
新規IR
(合成ゴム)
天然ゴム
分子構造 構成単位 イソプレン
シス率 94.0~98.5% 99.0~99.9% ほぼ100%
分子量ばらつき 大きい 小さい 大きい

また、今回合成したIRを用いてタイヤ材料を作成し性能評価を行ったところ、耐破壊物性と低燃費性能において天然ゴムを用いたタイヤ材料よりも優れた性能を示すことが確認できました(図2参照)。

図2. 今回合成に成功したIRを用いたタイヤ材料の性能

当社グループは、天然ゴムやIRを始めとした様々な原材料の研究開発等の活動を通じ、2050年を見据えてタイヤの原材料を100%サステナブルマテリアル化することを目指していきます。

■新規ガドリニウム(以下Gd)触媒
従来のIRはリチウム(Li)、チタン(Ti)、ネオジム(Nd)触媒などを用いて製造されていますが、今回全く新しいGd触媒の開発に成功しました。以前よりGd触媒を用いることでIRの分子構造を高度に制御できることが知られていましたが、0℃以下という低温下で使用しなければならないなどの理由で活性が低く、工業的に用いることが困難でした。今回新たに開発したGd触媒は、触媒の構造をデザインすることにより、工業的に一般的な40℃以上で使用した場合もIRの構造を制御することが可能となりました。新規Gd触媒の活性(イソプレンをポリイソプレンに変換する能力)は1,800個/分であり、従来のGd触媒と比べて600倍もの活性を示しており、実用性も兼ね備えたものになっています。

■天然ゴム資源の生産性向上・多様化に向けたブリヂストンの取り組み

由来 目的 取り組み
パラゴムノキ 生産性向上
単収アップ
新農業資材の導入、管理技術の高度化
ゲノム情報に基づく優良木の選抜・増殖(ゲノム解読、DNAマーカー)
病害対策 早期病害診断、防除技術
非パラゴムノキ 資源の多様化 グアユール、ロシアタンポポ

※天然ゴム資源の生産性向上・多様化に向けたブリヂストンの取り組みに関しては、以下リンクをご覧ください。

・天然ゴム資源「パラゴムノキ」の簡易病害診断技術を確立
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2015113001.html
・天然ゴム資源「パラゴムノキ」のゲノム解読に成功
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2012071002.html
・天然ゴム資源「パラゴムノキ」の病害診断技術を確立
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2012071001.html
・「グアユール」由来の天然ゴムを使用したタイヤが完成
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2015100102.html
・天然ゴム資源「ロシアタンポポ」の研究活動を加速
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2012051701.html

※1 重合触媒
重合(簡単な構造をもつ分子化合物が2つ以上結合して、分子量の大きな別の化合物を生成する現象またはその反応のこと。イソプレンが重合反応を起こし、生成されたものがポリイソプレン。)を速める効果がある薬品のこと。

※2 サステナブルマテリアル
当社では「継続的に利用可能な資源から得られ、事業として長期的に成立し、原材料調達から廃棄に至るライフサイクル全体で環境・社会面への影響が小さい原材料」をサステナブルマテリアルと位置付けています。

※3 分子ミクロ構造の規則性
ポリイソプレンの構成単位のつながり方には、シス、トランス、ビニルの3種の構造があり、通常はこの3種の混成物となっています。一般的にはシス構造が多いほど高性能といわれています。

※4 分子量のばらつき
通常、ポリイソプレンの分子の長さは、分子1本ごとに異なっており、ばらつきがあります。

本件に関するお問い合わせ先

<報道関係> 広報第2課 TEL:03-6836-3333
<お客様> お客様相談室 TEL:0120-39-2936

以上