すべては王者アメリカを下すために。ソフトボール日本代表、金メダルへの軌跡
番組シリーズ:The Olympic On The Records
記憶に残る有名なオリンピック記録の背景を、映像やアニメ、イラストなど、ビジュアルで楽しく解説
アトランタ1996オリンピックで初の正式種目となった女子ソフトボール。続くシドニー2000、アテネ2004と、オリンピック3大会連続で金メダルを獲得していたアメリカは、当時から圧倒的な強さを誇っていました。
一方、ソフトボール日本代表は、アトランタ1996では4位、以降は銀メダル、銅メダルと続きます。なかなか手にすることのできない金メダルは、北京2008オリンピックの最大の目標でした。
さらに、その大会を最後にソフトボールがオリンピック種目から外れることが決定。日本は「最後の金メダル」を賭け、オリンピックにおいて無傷の22連勝中だった絶対王者アメリカを相手に、北京2008決勝の舞台に立つことになります。
女子ソフトボール史上最高の打者と言われるクリストル・ブストス選手。彼女がひとつのオリンピック大会期間中に放った6本のホームランは世界記録となっています。大学時代には奪三振率14.35(7イニング換算)の記録を持つキャット・オスターマン選手やジェニー・リン・フィンチ選手といったスター選手を擁するアメリカ代表。日本代表がそんな最強チームを下すには特別な存在が必要でした。
それは驚異の球速を誇り、アテネ2004でオリンピック初の完全試合を経て日本の絶対的エースへ成長を遂げた上野由岐子選手でした。
最初の2回はこう着状態。スコアボードにはゼロが並びます。日本は3回表にヒットと内野ゴロの間に、三科真澄選手がホームベースを踏み1点を先制。4回表には卓越したセンスから「女イチロー」の異名を持つキャプテン・山田恵里選手が、ホームランを放ち、2対0とリードを広げます。
しかし、その裏。アメリカは世界の大砲、ブストス選手がソロホームラン。すかさず1点を返しチームを鼓舞します。
日本が2対1の1点リードで迎えた6回裏。アメリカは満塁のチャンスを迎え、この試合最大のヤマ場を迎えることになります。ホームランが出れば、アメリカが5対2で一気に逆転という緊張の場面。大きなプレッシャーが上野選手の両肩にのしかかります。
1アウト満塁の苦境に追い込まれながらも、連続して内野フライに打ち取り、無失点で切り抜けることに成功した上野選手。好投を援護するように、7回表には、藤本索子選手の打った打球で廣瀬芽選手がホームに帰り、1点を追加。3対1とさらにリードを広げます。
最終回となる7回裏。上野選手が投げた大会413球目。三塁手の廣瀬芽選手が捕球のうえ、ファーストへ送球し、試合終了。ピッチャーズサークルの上野選手のもとにチームメイトたちが駆け寄り、勝利の喜びを分かち合います――。チーム一丸となって、悲願の金メダルを獲得した瞬間でした。
あれから12年―。東京2020大会でソフトボールはオリンピックの舞台に戻ってきます。2018年の世界大会でも連覇を果たした往年のライバル、アメリカをはじめ、選手層も厚いとされるオーストラリアやカナダなども侮れない存在です。前回王者としてのプライドを賭けた戦いが、始まろうとしています。
ソフトボール日本代表
世界的にも強豪国のひとつに数えられており、過去のオリンピックではアトランタ1996大会4位・シドニー2000大会銀メダル・アテネ2004大会銅メダル、北京2008大会では堂々たる金メダルを獲得。世界大会においては2002年以来、優勝と準優勝をライバルのアメリカと競い合い、毎回白熱した戦いを繰り広げている。
東京2020オリンピックでは、アメリカをはじめとする強豪国を打ち破り、連覇を果たすことを目指している。
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