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ブリヂストンはBWSCを通じて、「Dream bigger. Go farther.」をテーマに人々の夢への挑戦を支えています。
ここでは、工学院大学ソーラーチームの車両を展示したイベントの様子と、関係者が語る大会の見どころをご紹介します。

「トップチームはほぼミスをしません」——世界レベルで先端技術を競うBWSC

「レースの1分前に、結果は決まっている——そう言っても過言ではありません」

工学院大学ソーラーチームを率いる濱根洋人監督(工学部 機械システム工学科 教授)は、「ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ(以下、BWSC)」の特徴をこのように語ります。

2019年6月4日、東京・京橋のオフィス街にある東京スクエアガーデンに、1台のソーラーカーが展示されました。2015年のBWSCクルーザークラスで準優勝を果たした、工学院大学ソーラーチームの「OWL」です。

世界環境デーに合わせたこの展示には、ソーラーカーファンはもちろん、通りかかったビジネスパーソンや、海外からの観光客などさまざまな方々が訪れました。

1分前に勝負は決まる——技術の集大成を競うBWSC

工学院大学ソーラーチームは、2009年に設立され、今年で10年目を迎えます。国内外の大会で入賞経験を持つ、実績あるチームです。冒頭の濱根監督の言葉は、「ソーラーカーにおける技術の重要性」を熟知するからこそ発せられた言葉でした。

工学院大学ソーラーチーム 濱根洋人監督(工学部 機械システム工学科 教授)

濱根:トップチームは、ほぼミスをしません。当然、レース中の駆け引きも重要ではありますが、車の空力特性とスペックがほぼ勝敗を分ける。ですから、車体をいじれるレーススタートの1分前までが勝負です。

この1分前までに、各チームが研究を続けてきたさまざまな技術がソーラーカーへと注ぎ込まれます。そこには、「最新鋭の技術」と「設計レベルの高さ」のふたつがあると濱根監督は語ります。

濱根:『最新鋭の技術』の例で言えば、OWLで使用したカーボンですね。通常1㎡あたり120gのものを60gまで軽量化し、0.06mmまで薄くしました。これは我々が2015年のBWSCではじめて導入し、その結果を見てF1でも使用されるようになったものです。

このカーボンは、当時まだ研究論文だった技術を先んじて導入したもの。OWLの走行を通して強度と軽さの検証がされ、社会実装へとつながったのです。

濱根:部品を一緒に開発していただける企業に、僕は何度も『もっといいものを出して』と言います。企業はその時点で可能性が見えている素材や部品を用意されるのですが、それでは勝てない。まだ見ぬものにチャレンジするような、“特注に特注を重ねたもの”が必須なのです。

加えて、『設計レベルの高さ』も欠かせません。どんなによい部品を集めても、それを完璧なソーラーカーに仕上げるには、相応の技術が求められる。このレベルの高さを濱野監督は「宇宙開発レベル」と表現しました。

濱根:トップクラスの車体は、時速100kmで走ってもタイヤの音しかしないんですよ。これは、空力特性を突き詰めると空気抵抗がなくなり、空気を切り裂く音が消え、タイヤの転がる音だけになるから。逆に言えば、ほんの少しでも空気抵抗でエネルギーをロスするようでは、このレースでは勝てません。

1mmにも満たないステッカーの段差さえNGな世界

展示されたOWLは、二人乗りのモデルで、空力特性を向上するため、車体の中心底部が大きくえぐれトンネルのようになっているのが特徴。2015年のBWSC準優勝に加え、国内レースで大会歴代記録を持つなど、性能面も折り紙つきのモデルでした。

ですが工学院大学はこのクラスでの成果を手放し、2017年からはよりスピードを競うチャレンジャークラスへ転向。その理由は、「モータースポーツらしい勝負」にありました。

濱根:チャレンジャークラスのトップチームは、国や大学を上げて取り組んでおり、非常にレベルが高いんです。ルールも、早く着くほうが勝ちというシンプルなものなので、ストイックに挑戦したい思いが強くなり、難易度を理解しつつも移ることにしました。

クルーザークラスは、早さだけでなく多様な評価軸で勝敗が決まります。「特定の時間にいかにピッタリとゴールできるか」が評価軸に掲げられたこともありました。

一方、チャレンジャークラスはシンプルに「早くゴールに着けるか」を争う戦い。ゆえに、世界トップクラスの技術やチームが集結するのです。いかにその争いが熾烈か。それをあらわす例として、濱根監督はOWLに貼られていたステッカーを指さします。

濱根:たとえば、この企業ロゴのステッカー。チャレンジャークラスの場合、このステッカーの1mmにも満たない段差も空気抵抗の観点でNGなんですよ。車体に印刷しなければ勝てません。これくらいシビアな世界がチャレンジャークラスです。

モビリティ・人・環境の3軸で、社会に貢献する

世界レベルでの技術競争が繰り広げられるBWSC。ここでの経験はカーボンがF1で活かされているように、着実に社会の進歩にもつながっています。

ブリヂストン ブランドコミュニケーション推進ユニット中島七奈は、技術と人材双方の意味で、大会での経験が活きていると語ります。

中島:ソーラーカー開発で生み出された技術は、着実に実際の車両の開発にもつながっています。また、工学院大学の学生さんをはじめ、関わった人々が自動車メーカーなど車づくりの現場で活躍している。こういった貢献は、モビリティの未来に対し、BWSCが一定の意義を果たす大切な部分です。

BWSCはブリヂストン社内でも、注目度の高い活動のひとつ。その理由のひとつは、CSRの軸として掲げる「モビリティ・人・環境」3つともを満たす活動であることです。

中島:BWSCは、技術と人材の双方でモビリティの未来をつくり、学生の挑戦を支えるという教育的な意義もあり、ソーラーエネルギーを使う環境意識の高い活動です。我々の目指す方向に非常に合致した大会なので、会社としても熱が入っています。

2019年は、ソーラーパネルが勝敗を分ける?

毎年さまざまな要素が絡み合い勝敗を決するBWSCですが、中島は、2019年の肝はソーラーパネルにあると考えます。

中島:前回大会はソーラーパネルの技術革新が勝敗を決し、人工衛星にも使用されるような最先端のソーラーパネルを使ったチームと、その他のチームで大きな差が生まれました。今回は各チームがその事実を踏まえた上で臨む大会。チームによっては、同様のパネルを仕入れるチームもあれば、他の手段で戦うチームもあるでしょう。その差とどう向き合うかが楽しみな年になりそうです。

この言葉に、実際2017年に続けて2019年大会に臨む濱根監督も、首を縦に振ります。

濱根:人工衛星用パネルは、インパクトがありました。我々のチームは、今回そのパネルを導入しつつ、前回のトップチームがやっていない技をプラスして臨みます。ただ、このパネルを入れるからには必ず勝たなければいけない。これまでは速さ以外も意識していましたが、今回はストイックに“勝ち”にこだわりぬいた車両で挑みます。

いかに技術を突き詰められるかが試されるBWSC。大会までの数ヶ月で各チームはどのようなチューンナップを重ねていくのか。各々の動きから目が離せません。

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