未来の素材になるかも!?天然ゴムを超えるポリイソプレンゴム

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(写真は、今回合成に成功したポリイソプレンゴム)

自動車などに使われているタイヤは、ゴムからつくられています。ひとくちにゴムといっても、その種類はたくさんありますし、タイヤの原材料にも、さまざまな種類のゴムが使われています。

タイヤに使用される様々なゴム(天然ゴムと合成ゴム)

その中でも重要なものが、天然ゴムです。天然ゴムはパラゴムノキという植物の樹液を採取してかためてつくられる天然資源で、強度、摩耗に耐える力、補強材との接着性能など、合成ゴムよりも優れた特徴をたくさんもっています。

パラゴムノキの樹液採取の様子

ただ、天然ゴムは植物から得られるものなので、合成ゴムのように工場でつくることはできません。パラゴムノキを病気などから守りながら、大きく育てていく必要があるのです。世界のタイヤ需要は現在も増加しており、天然ゴムの消費量は今後も増加することが予測されます。ブリヂストンは、パラゴムノキのDNA解読、病害診断技術の開発などをおこない、天然ゴムを安定して収穫するための研究をしています。同時に、天然ゴムより優れた性能をもつゴムを人工的に合成する開発にも取り組んできました。

天然ゴムの主成分はポリイソプレンというもので、化学的にはイソプレンという物質がたくさんつながったものです。今でも、ポリイソプレンを人工的に合成したゴムも実際につくられています。ただし、天然ゴムとこのポリイソプレンゴムを比べてみると、天然ゴムの方が性能は高くなります。主成分が同じなのに、なぜそのような違いがおこるのでしょうか。

その秘密は、ポリイソプレンの分子構造にありました。天然ゴムの構造は、弾性のある「シス型」の割合がほぼ100%なのに対して、ポリイソプレンゴムは94.0〜98.5%しかないのです。この違いが、天然ゴムと合成ゴムの性能の違いを生む一つの要因だったのです。

ポリイソプレンの分子ミクロ構造の種類

そこで、ブリヂストンはシス型の構造をたくさんもったポリイソプレンゴムをつくる方法を研究し、新しい触媒を見つけました。この新しい触媒を使うことで、シス型の割合が99.0〜99.9%ととても高いポリイソプレンゴムを合成することに成功したのです。しかも、この方法でつくるポリイソプレンは、分子量のばらつきが小さく、構造が高度に制御されたものだったのです。

できあがったポリイソプレンゴムでつくったタイヤ材料は、天然ゴムを用いたものよりも壊れにくく、燃費を下げる効果が高いことがわかりました。また、原料にとうもろこしや大豆などからできるバイオマス由来のイソプレンを使用することが可能であり、再生可能資源としての利用が期待されます。ブリヂストンは、今後、新しい触媒を使ったポリイソプレンゴムの製造について検討を進めていき、2020年代の実用化を目指します。