2016年SUPER GTチャンピオン 平手晃平選手トークショー (1) 2016年のSUPER GTを振り返る
2017年1月15日に、東京オートサロン2017のブリヂストンブースで、レーシングドライバーの平手晃平選手をお招きしてトークショーを開催しました。(MCはピストン西沢氏)
平手選手は、ブリヂストンのタイヤを装着したマシンで、2016年のSUPER GT GT500クラスでシリーズチャンピオンを獲得しました。今回は、走りもタイヤも最終戦まで進化を続けた2016年シーズンについて、平手選手が語った内容を(ほぼ)そのまま、全2回でご紹介します!
[平手晃平選手プロフィール]
13歳でカートデビュー、全日本ジュニアカート選手権の初代シリーズチャピオンに。15歳でフォーミュラトヨタ・レーシング・スクール(FTRS)を受講。スカラシップを獲得し、2002年にはフォーミュラトヨタで史上最年少優勝(16歳2ヶ月)を達成した。翌年、トヨタ・ヤングドライバーズ・プログラム(TDP)の支援で渡欧。以後5年間、フォーミュラルノー、ユーロF3、GP2等に参戦した。帰国した2008年、フォーミュラ・ニッポンとSUPER GTのGT300クラスに参戦すると、両カテゴリーで優勝を果たす。2009年、GT500クラスにステップアップし、2011年に自身初勝利を達成。2013年にはGT500チャンピオンとなる。2016年、前年に引き続きヘイキ・コバライネンとコンビを組んでLEXUS TEAM SARDからGT500シリーズに参戦し、シリーズチャンピオンを獲得した。
ピストン西沢(以下西沢): SUPER GTはご存知のとおり日本で最も人気があるレースで、GT500クラスとGT300クラスがあって、GT500クラスはワークスの3ブランドが今しのぎを削っています。その中でレクサスというブランドでチャンピオンを取ったのが、平手晃平選手です。ブリヂストンのタイヤで久々にチャンピオン奪回ということで、本当にお世話になりました。ブリヂストンの一員としてお礼を申し上げます。
平手晃平選手(以下平手):ありがとうございます。
西沢:SUPER GTは今日本で一番人気があって、注目度高いのでレベルもめちゃくちゃ高いでしょう?
平手:今世界的にもトップクラスですよね。SUPER GTのドライバーも含めて。
西沢:平手晃平は生粋のフォーミュラドライバーだと思ってたんですけど、GTすごく成績いいじゃないですか。そういうことでいくと車もフォーミュラに近いんですか?
平手:昔はSUPER GTはハコの延長線上と言われていて、実際ハコ車なんですけど、フォーミュラ、一昔前のF3000と同じぐらいのタイム出てますからね、鈴鹿でいえば。だからもうフォーミュラですよね、乗った感じは。
西沢:一口でフォーミュラとハコっていうけど、何がそんなに違うんですか?
平手:大きく違うのはタイヤが出てるか出てないかです。
西沢:それぐらいね、ほんとは違うけどまず軽さが違いますよね。
平手:ウェイトがフォーミュラと比べると倍ぐらい重たいので、それが一番大きいですよね。
西沢:あとダウンフォース。空気の力を使って地面に車を押し付けるやつ。
平手:でも近年のSUPER GTに関してはフォーミュラと同じぐらいといっても過言ではないぐらいダウンフォース出てるんですよ。1番大きな違いっていうのは車重ですよね。だから今のSUPER GTがフォーミュラみたいに、あと400キロぐらい軽くなったら、同じぐらいで走れちゃいますよ。
西沢:車速い、熱い、それから周りに色んな要素がある、タイヤカスがいっぱい落っこちてる、そんな中でうまくレースをまとめていくのは大変ですね。
平手:だから一概に速い人が勝つっていうレースじゃない。単純なレースじゃないところがSUPER GTの人気があるところだと思うんです。
西沢:毎戦勝者が変わりますからね。ウェイトハンデを付けられるんです。勝つと車が重くされるんですけど、10kg、15kgってそんなに変わるもんなの?
平手:僕らのGT500クラスで、10kgで一周あたりコンマ2秒ぐらい遅くなると言われてるんですよ。コースによっても変わってくるんですけど、長いコースだとコンマ2秒、短い菅生とか岡山だったらコンマ1、5秒かもしれない。それぐらい変わると言われてますね。
西沢:あとタイヤに及ぼす影響ですね。やっぱり重たいとタイヤが疲れてくる。それでペースを落とさざるを得ない。速く走れる車もそういったハンデが効いて、順位が沈むことでポイントが拮抗して、去年のシーズンは第3戦では・・・
平手:代替え、茂木の土曜日ですね。
西沢:代替レースになって、土曜日が第3戦決勝。最終戦が翌日曜日ということで。その時シリーズ何位だったんでしたっけ?
平手:茂木に臨んだ時は、同率で3位でしたね。ポイント差でいうと、トップのニスモから11ポイント下で最終戦に臨んでるんですよね。
西沢:正直言いますと、ブリヂストン関係者も今年もやられたかと思っていました。
平手:早いですよ(笑)。
西沢:そういう風に思ってる人もいたんです。僕もやっぱりきついなと思ったりしてたんですよ。(コバライネン選手/平手選手の)39号車がここまで来るって正直みんな思ってなかったので。
平手:誰もが思ってなかったと思います。
(写真は2016年のSUPER GTシリーズの様子です。)
西沢:ぶっちゃけ(同じLEXUS RC Fチームの)6号頑張れ、39号ちょっと助けてやってくれと思ったら、まず土曜日の第三戦予選でポール。ここが大きかったですね。ここの時点では車にハンデの重量が載せられてたんですけど、それを跳ね返して軽い車より速く走り、ポールとって決勝で2位になったんですが。ヘイキ・コバライネンっていう元F1ドライバーが、なんかそれまでの走りからひとつ抜けたというか。
平手:そうですね、実はシーズン前の2月くらいのテストで茂木行ったんですよ。その時にうちの車がすごく速くて、セットアップも決まってたんです。彼はそれで自信をつけてたと思うんですよね。その週末の金曜日が雨で、ドライセットを1回も試せないまま土曜日へ臨んだんですよ。土曜日は朝ちょっと濡れていて、スリックタイヤかウェットタイヤかみたいな感じになったんですけど、ちょっと乾きが遅くて、結果ウェットタイヤで予選はやったんです。そこでブリヂストンのポテンザがすごいパフォーマンスを見せてくれたおかげです。
西沢:特にウェットなんかはタイヤ勝負でしょ。
平手:タイヤすごいですね。
西沢:タイヤにかかる期待というか、タイヤの力で仕事をしてもらわないと勝てないですよね。
平手:乾いていく方向だったんで、タイヤ的にはどんどん辛くなる状況だったんですよね。なんですけどそのほかのメーカーと比べてもブリヂストンのタイヤがしっかりしてたおかげもあって、最後にドンとタイムが(出ました)。
西沢:2016年に向けて、2年間チャンピオン取れてないので、ブリヂストンは非常に会議も重ねたし、上層部から開発チームに対して、「何やってんだよ」みたいな、大変なことになってたと思うんですけど。それでだいぶ設計チームやレース運営チームにすごくハッパがかかって、攻めたタイヤを作ったりということで、結果につながったと思うんですが。やっぱり、39号車のコバライネンがああいった形で土曜日にすごいレースをやって、「さあ日曜日平手どうすんだ」ってなって、平手の予選のアタック。またポール取りましたね。2人ともやったわ。