2016年SUPER GTチャンピオン 平手晃平選手トークショー (2) 四角いタイヤと丸いタイヤ?

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2017年1月15日に、東京オートサロン2017のブリヂストンブースで、レーシングドライバーの平手晃平選手をお招きしてトークショーを開催しました。

今回はそのトークショーのご紹介第2弾です。 (全2回)

⇒平手晃平選手トークショー(1)はこちら

西沢:タイヤってどれも同じで、黒くてころころ転がってるんですけど、ブランドによって走らせ方って違うんですか?

平手:全然違います。

西沢:そこちょっと教えてください、わかりやすいように。

平手:なんて言ったらいいんでしょう。

西沢:よく見ると、角の形が丸いタイヤと四角いタイヤと、色々あるんですよね?

平手:色々あります。そこに置いてあるGT300の車で使っているブリヂストンのタイヤと、僕らのGT500のタイヤとでも、全然形状が違ったり、もちろん構造も全然違うので、車に合った構造とゴムになっています。

西沢:F1でブリヂストンとミシュランがガチンコでやってた時に、サイズとか規定とか一緒なんだけど、外から見ると形が全然違うんですよね。ブリヂストンのほうが当時ちょっと丸かったかな。

平手:そうですね。丸かったですね。

西沢:ミシュランは本当に四角いタイヤ。

平手:はい、それはGTでも同じですね。みなさんそこまでタイヤに注目して見たことないかもしれませんけど、止まってる車を後ろから見ると、ニスモさんが使ってる(ミシュラン社の)タイヤはちょっと四角い。タイヤが地面にくっついている面積をいっぱい増やしている。ブリヂストンさんはちょっと丸くして、ただ構造が動くので、それで接地面積を確保しているような。

西沢:思想がかなり違う。

平手:思想が全然違うんですよ、メーカーによって。

西沢:運転に反映すべきことは、たとえばブレーキ強いままハンドル切っても曲がるタイヤと、ブレーキ使うと曲がんなくなっちゃうタイヤとか、運転のコツひとつ変わっちゃうんでしょ?

平手:そうです。メーカーが違うと全く乗り方も変えなきゃいけないし、タイヤのライフや使い方も全然変わってきます。

平手:タイヤウォーマーってF1でよく使ってるじゃないですか。今、F1とWECぐらいしか使わないんですけど、ウォーマーが使えるとタイヤが温まった状態からピットを出て行けるんですね。そうすると出た直後から100%タイヤの良いところを使える。

西沢:それはレーシングタイヤをはいたことがない人はわかんないね。冷えたタイヤってどのぐらい滑るんですか?

平手:冷えたタイヤって、氷の上を靴で歩くぐらいツルツル滑りますね。地面のコンクリートあるじゃないですか。あの上をプラスチックの消しゴムを滑らせるぐらい食いつかないんですよ、路面に。

西沢:それは縦だけじゃなくてハンドル切っても曲がらないんですか?

平手:全然曲がらないです、ほんとハンドル切っても曲がんないし踏んでもトラクション効かない。

西沢:レースは後ろから普通に車が来るじゃないですか、ピットアウトしたとき。危なくないんですか?

平手:それはドライバーの技量で、より早くタイヤを温めないと簡単に抜かれちゃいますよね。

西沢:ピットインとピットアウトの周のラップタイムが遅いとレースにも影響がある?

平手:あります。どちらかというと戻ってくる周はタイヤを使い切った状態なので、ヘロヘロじゃないですか。できるだけラップタイム落とさないよう帰ってくるのが大事なんですけど、GTで一番大事なのはピットアウトする、要はセカンドドライバーがコールドタイヤ(冷えたタイヤ)でスタートすること。

西沢:新品の冷えたタイヤでスタートして、温まるまでだいたい1周半ぐらいですか?

平手:条件によりますけどだいたい1周から1周半。夏場とかは暖かいので半周もあれば温まるサーキットもあるんですけど、高速コーナーが少ないコース、たとえば岡山とか菅生は温まりにくいんですよ。荷重をかけないとタイヤは中まで温まらない。本当に動かないんですよ。カチカチなんです。

西沢:でもコースいっぱい使ってグーってやってると後ろから他の車が来るわけですよ。だからみんな内側をちんまり邪魔にならないように小ちゃく走ってるんですよ。遠慮がちに走ってるけどその中でも温めないといけないから、そこんとこ葛藤っていうか技術っていうか。昨日、(脇坂)寿一が来て、僕は怖がりだからアウトラップ遅いと言ってました。

平手:遅いとめちゃくちゃ怒られますからね。

西沢:稼ぎどころはそこですね、逆にね。

平手:そうなんですよ。SUPER GTって1位から最後尾までのラップタイムの差でいうと、コンマ5、6秒のところで走ってるんですよ。それをピットアウトした周に5秒とか6秒遅いと、取り返しがつかないですよね。それぐらいシビアなので、ピットアウトしたコールドタイヤをいかに早く温めるかという技術が必要なんですよ。タイヤは中から温めるのが一番で、ブレーキを使ったり、タイヤ内の空気がちゃんと温まって、ようやくワイヤーとか中の構造、表面が温まる。全部温まってないと100%力を発揮できない。

西沢:SUPER GTはレーシングカーやドライバーに目が行きがちですけど、それを支えているタイヤの使い方が、地味ですが一番プロ的な部分として大切で、そこを今年はちょっと注目してもらうっていうのがこのステージ的にはすごく重要かなと。

平手:そうですね。今年は車両規定が変わって、ダウンフォースが25%減らされちゃうんです。昨年までとは押さえつける力が減るんですよ。そうなるとタイヤにかけられる負荷も減っちゃうので、よりタイヤを温める技量が求められる年になりますよね。

西沢:レース見に行く時、テレビ見る時は、アウトラップに注目して見るのはどうですか?

平手:それいいと思いますよ。タイヤの使い方の上手下手がわかるので。

西沢:タイヤの特性も、タイムが遅い選手はハードコンパウンドで、後半安定して走れる。柔らかいタイヤはポッと出れるけど、最後のほう落ちてくるかもしれないとか。あとはブランドの違いとか。そういう特性って見えてきますか?

平手:あります。僕らは、ブリヂストンさんのタイヤを使って長いんですけど、温まりもすごい早いですし、早いからといってタイヤのライフが短いわけではないので、僕らにとってすごい強みですね。

西沢:扱いやすいタイヤっていうのはプロレベルでも大事なんですか?

平手:大事だと思います。(性能が)尖ってるとそれだけで恐怖に変わっちゃうので。それだけで1周目のアウトラップも秒単位で遅くなっちゃうんで。タイヤが安心して扱えるのが強みなんですよ。

西沢:タイヤっていうのはこういう見方もできるんですよ。グリップが上がっていってそれが頂点に達して、それを越えるとリバースって言って今度はリアが流れたりフロントがアンダーになったり、逆にグリップしない。このあたりを行ったり来たりさせるのがプロのレーシングレベルなんですよね。大きく行き過ぎた時にがくんと落ちるタイヤ、パーンといっちゃうタイヤは使いにくい、それがピーキーな(尖った)タイヤ。さっき平手が言っていた使いやすいブリヂストンのタイヤはそこが広い。だからちょっと行ってもすぐ戻せるし、行き過ぎてもそんなに性能が落ちない。その辺のところがタイヤの重要な見方ということでいいですか?

平手:それでいいと思います。すごくわかりやすい説明です。皆さんが普段乗られてる乗用車で、町中ではなかなか感じられないと思いますけど、たとえば高速道路に行った時、僕もポテンザを履いていて、速度域はもちろん法定速度内ですけど、ハンドルを切った感じやタイヤの温まりを乗用車でもすごく感じます。僕、過去には違うメーカーのタイヤも履いていたんですけど、冬場なんかだと、ブリヂストンのタイヤはガレージから出てちょっと走るだけで「タイヤ温まってるな、すごい安心だな」と思って履けるタイヤですね。

(写真は2016年のSUPER GTシリーズの様子です。)

西沢:今岡山って何秒ぐらいで走るの?

平手:1分17秒ぐらいですかね。

西沢:1分17秒ぐらい?セナのF1が当時1分11秒だよ。セナが乗って。シューマッハ、セナが乗って11秒のところを、あのGTカーで4、5秒落ちで走ってるの?

平手:そうですね。このあいだ鈴鹿でも1分47秒とか。車のテストだと45秒とかで入っちゃいますね。

西沢:昔、亜久里さんが「2分切ったぜ!」なんて喜んでた。

平手:すごい時代ですよね、今は。

西沢:2分切っちゃいますから。GT300。

平手:53秒ぐらいで走りますからね。

西沢: 2005-6年ぐらいのGT500ですよね。

平手: 10年で10秒ぐらいタイムが上がっている感じですよね。

西沢:それを支えるのは間違いなくタイヤであり、スーパードライバーなんですけど、スーパードライバーを走らせてるのは、実はメカニックやタイヤ開発やパーツ開発のスーパーマン達なんですよ。SUPER GTって、1台走るのに後ろに何人くらい居ますか?

平手:チームによりますけど大体スタッフさんだけで30名ぐらいですかね。

西沢:その後ろにはブレーキやタイヤやオイルやら。

平手:数えたらもう100人超えますよね。

西沢:もしかしたら300人とか、そういう規模になってきて、その人たちが作ったレースが年に8回しかない。

平手:そうですよ、それを走らせているのが僕たちなんですね。

西沢:1回1回が甲子園のトーナメントみたい。

平手:そうですよ。プレッシャーがすごいですよ。

西沢:そんな中で、今年もチャンピオンを是非とも頑張っていただきたい。平手スマイルで。

平手:来年もこのステージに呼んでいただけるように。

西沢:ありがとうございました。平手晃平選手でした。

平手:ありがとうございます。

西沢:皆さん、今年の平手選手の活躍に期待してください。こういう人たちが本気でレースをやっているわけで。それを見られるSUPER GTのレース、是非とも1回見ることをおすすめします。ありがとうございました。