2025.04.09
ロボットハンドが多様な作業やワークの取り扱いに対応するために搭載されている機構が「触覚センサー」です。触覚センサーには方式や特徴によってさまざまな種類のものがあり、取り扱うワークや作業環境に応じたものを選ぶ必要があります。
今回の記事では、ロボットハンドの触覚センサーの種類や原理、課題について解説します。また、触覚センサーの代表的なメーカーも併せて紹介します。
ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズでは強さと柔らかさを兼ね備えたゴム人工筋肉「ラバーアクチュエーター」によって、ヒトの手のように多様なものを器用に掴むソフトロボットハンド「TETOTE」を開発しました。
「柔らかなモノをそっとつかむ」「複数のモノを持つ」「多種多様なモノをつかむ」を可能にしたことで、「つかめない」が原因で進まなかったピースピッキングの自動化を実現します。
ピースピッキングでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
触覚センサーとは、ロボットハンドの掴む動作をコントロールするための機構です。
ロボットハンドがワークを掴む際、ワークの荷重やすべり、圧力分布などを触覚情報としてセンサーから検出し、電気信号に変換します。これにより、ロボットハンドは硬いものから柔らかいものまで、適切な力加減でワークを把持できるようになります。
従来、大量生産方式の工場に設置されるロボットハンドは単一のワークを取り扱うため、各関節の角度情報のみで制御できる位置制御が主流でした。しかし、近年は少量多品種生産の傾向により、多種多様なワークに対応する必要があります。
そこで、ワークの形状や材質にかかわらず最適な把持力を発揮できる、触覚センサーを用いたロボットハンドの制御が注目を浴びています。
また、近年では、ワーク表面の凹凸や質感、距離などを触覚センサーとともに視覚情報を用いてリアルタイムで検出し制御することで、多種多様なワークの取り扱いや作業も可能とするロボットハンドも開発されています。
1980年代から産業用ロボットへの応用を目的に、ゴム表面に分布した圧力を細かく検出する技術が研究されるようになり、「感圧導電ゴム」を利用した触覚センサーが開発されました。しかし、当時の大量生産の流れでは、決められたワークの把持のみで十分だったため、産業ロボットへの触覚センサー導入は見送られました。
1990年代には少量多品種生産のニーズの高まりを受けて、一台のロボットで多種類のワークの取り扱いが求められるようになります。ただここでも、機械的接触で消耗する触覚センサーよりも、遠隔計測であるビジョンや他のセンサー情報の活用が重視されていました。
2000年代になると、人間と共存し支援するロボットの需要の高まりやロボットの触覚情報を操作者に体感させる技術の必要性から、再び触覚センサーへのニーズが高まりました。そこで、電気抵抗、静電容量、圧電素子、電磁気、ひずみゲージといった多種類の触覚センサーが開発されましたが、ロボットハンドとワークとの滑りが検知できない、小型化が困難という課題が発生します。
そこで2000年代中盤から、滑りの検知が可能で小型が容易、ワークとの接触部も弾性体で耐久性の高い光学式触覚センサーが開発・実用化され、ロボットハンドの制御にも活用されるようになりました。
現在では、EC市場の発展に伴う物流倉庫でのピースピッキングや少量多品種生産を行う車や食品の製造現場などで、触覚センサーを取り入れたロボットハンドが活躍しています。
触覚センサーは検出する要素や方式によってさまざまな種類があります。ここでは触覚センサーの種類ごとに原理や特徴を解説します。
力覚センサーとは、ワークをつかんだ状態で、荷重やトルクの大きさと向きを検知するセンサーです。触覚センサーの中でも基本のものであり、さまざまな方式でロボットハンドの把持状態を検知します。
力覚センサーは、検知する方式によって「光学式」「圧電式」「電気抵抗式」「静電容量式」の4種類に分けられます。
光学式とは、物体やワークの力がかかる部分にあらかじめ模様をプリントしておき、ロボットハンドで掴んだ際に模様が変形した量で力の大きさを検知する方式です。ほかの方式よりもセンサー回路が単純なため、さまざまな作業環境に対応できるメリットがあります。
圧電式とは、表面に力がかかると電圧が発生する圧電効果を持つ水晶やジルコン酸チタン酸塩などの圧電素子を利用して、力の大きさを検知する方式です。発生した電圧の高さを計測して、力の大きさを検出します。他のセンサーと比較すると、剛性や感度を両立させるのに適しています。
電気抵抗式とは、ひずみゲージを使ったロードセルのように、力が加わった際の荷重の大きさで電気抵抗値が変化する特性を持つひずみゲージなどを利用して力の大きさを検知する方式です。
他にも、感圧導電性ゴムの荷重によるゴムの変形量から力を求める方式のセンサーもあります。電気抵抗式は、回路構成やセンサー構造が簡単で耐久性が高いのがメリットです。
静電容量式は電子部品のコンデンサーと同じ原理でできており、導電体の距離で蓄えられる静電容量の大きさで力の大きさを検知する方式です。構造が単純で、小型化・多点化・多軸化しやすいというメリットがあります。
すべり覚センサーは、物体やワークを掴んだ際にすべり量と速度を検知するセンサーです。ロボットハンドが物体を掴んで落としそうになると、センサーで検知してつかむ力を強くして落下を防ぐものや、ロボットハンドの物体やワークを掴む箇所にローラーやボールを設置し、回転量からすべり量を検出するものがあります。
すべり覚センサーの種類は「光学式」「変位検出式」「振動検出式」「負荷変化検出式」の4つです。
ロボットハンドの物体やワークを掴む箇所に光学センサーを搭載し、物体の表面状態の変化を検知してすべりを検出する方式です。すべりを表面から直接的に検出でき、変位検出式より搭載しやすい傾向にありますが、搭載できるロボットハンドには制限があります。
ロボットハンドに取り付けたローラーやボールで、つかんだ物体の回転量やすべり量を検知する方式です。掴んでいるものがすべり落ちそうになったときに、止まっているローラーやボールが物の表面との摩擦で回転し、物理的にすべりが検知できます。ローラーやボール、回転の検出機構などで構成されるため、設置にはスペースが必要です。
ロボットハンドに加速度センサーを取り付けて微振動を検知する方式です。掴んでいる物がすべりだす直前に発生する特有の微振動を検知し、すべりを検出できます。光学式や変位検出式と比較すると搭載の制限がかかりにくく、設置しやすい特徴があります。
力覚センサーから得られた負荷の状態をモニタリングし、すべり検出アルゴリズムによってすべりを検出する方式です。ロボットハンドの手首や腕に備えられているロボット全体の制御を行うための力覚センサーを利用します。すべりが発生すると、負荷が急速に減少するなど特有の応答をソフトウェアで検出し、すべりの発生判定を行います。他の方式と異なり、すべり検出用のセンサーは不要です。
近接覚センサーとは、物体の表面に触れる前に検出をするセンサーで、触覚を空間的に拡張する技術です。物体に触れていないため厳密には触覚センサーではありませんが、離れた物体を検出できる特性を活かし、接触するまで検出できない触覚センサーの欠点を補います。
検出する方式によって「光反射式」「超音波反射式」「静電気容量式」の3種類があります。
物体に光を当てて反射時間や輝度、反射光の受光強度や往復時間によって距離を検出する方式です。応答性が速く、コンパクトなため搭載性もいいのがメリットです。ただし、物体表面の状態や周囲の環境による外乱を受けやすくなっています。
物体に当てた超音波が返ってくる時間、受光強度、往復時間から距離を検出する方式です。一般的な方式として使用されています。表面状態に左右されにくく、透明体などの光反射式が使えない物体に対しても使用可能です。
検知したい範囲やセンサー周囲に発生させた電界の変化で物体の距離を検出する方式です。電界内に物が入ると静電容量が変化するため、事前に物体の静電容量と距離の関係を求めておくことで距離を検知できます。物体の大きさ、材質、性質により検出距離や感度が変わる点に注意が必要です。
ロボットハンドの触覚センサーの検出方法は多岐にわたり、技術も進歩しています。ただし、視覚や聴覚と比較して、触覚をデジタル化して扱う技術の研究は遅れていると言われています。視覚や聴覚は認識などの情報処理レベルに研究が進んでいることに対し、触覚センサーは検出方式の研究が多く、応用技術へ展開した取り組みはまだ始まったばかりです。
そこで、作業用ロボットや協働ロボットの多種多様なワークの取り扱いや、作業の汎用性を高めたいときには、ロボットハンドそのものを見直すのも有効でしょう。
ロボットハンドの触覚センサーの検出方法は多岐にわたり、技術も進歩しています。ただし、視覚や聴覚と比較して、触覚をデジタル化して扱う技術の研究は遅れていると言われています。視覚や聴覚は認識などの情報処理レベルに研究が進んでいることに対し、触覚センサーは検出方式の研究が多く、応用技術へ展開した取り組みはまだ始まったばかりです。
そこで、作業用ロボットや協働ロボットの多種多様なワークの取り扱いや、作業の汎用性を高めたいときには、ロボットハンドそのものを見直すのも有効でしょう。
たとえばブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズの「TETOTE」は、ゴムの人工筋肉の手指に、目と頭脳の役割を果たすAIが搭載されたラバーアクチュエーター型ロボットハンドです。
柔軟性の高いゴム人工筋肉により、重いものから柔らかく繊細なものまで、幅広いワークをちょうどいい力加減で把持することができます。そのため、物流倉庫や製造ラインにおけるピースピッキング、食品工場でのお弁当の盛り付けなど、多彩なワークを取り扱う現場での省人化や生産効率の向上に貢献すると期待されています。
ヒトの手のように多様なものを器用に掴めるラバーアクチュエータ型ロボットハンド「TETOTE」に興味のある方は、ぜひこちらからご確認ください。
ロボットハンドの触覚センサーの歴史や種類、触覚センサーの代表メーカーを紹介しました。作業用ロボット、協働ロボットへの汎用的な作業が求められるようになったことを受けて、ロボットハンドの触覚センサーへのニーズも高まっています。作業内容や取り扱うワークに応じた触覚センサーの導入とともに、ロボットハンドも見直すことでロボットによる作業の効率化や自動化も実現できるでしょう。
ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズの開発したラバーアクチュエーター型ロボットハンド「TETOTE」は、柔軟でやわらかい「ヒトの手」のような対応力と自動化のニーズに応える新たなパートナーです。
「柔らかなモノをそっとつかむ」「複数のモノを持つ」「多種多様なモノをつかむ」を可能にしたことで、「つかめない」が原因で進まなかったピースピッキングの自動化を実現します。
ピースピッキングでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。