産業用ロボットや協働ロボットが実際に作業を行ううえで、腕や手の役割を持っているのがロボットアームやロボットハンドです。ロボットアーム・ロボットハンドは作業内容や取り扱うワークに応じて適切なものを選ぶ必要があります。そこで今回、ロボットアームとロボットハンドがどのようなものであるか解説するとともに、それぞれの種類や特徴、選び方について紹介します。
ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズでは、ヒトの手のようにやわらかく器用で柔軟なソフトロボットハンド「TETOTE」を開発しました。従来のロボットハンドでは難しかった、さまざまな大きさや重さ、形状のワークを自在に取り扱えるため、ピースピッキングにおける活躍が期待されます。物流や産業界の自動化についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
ロボットアーム・ハンドは基本的に一組で使用されています。ロボットアームとロボットハンドの概要を、それぞれの違いを踏まえて解説します。
ロボットアームとは、産業用ロボットや協働ロボットが取り扱うワークを取り回す腕の部分の部品のことです。マニピュレータとも呼ばれています。人間の腕の関節にあたる軸が存在し、ワークを移動させる、把持する、といったことが可能です。
ロボットアームは周辺機器やコントローラーと接続し、動きが制御されています。取り扱うワークや作業内容に応じて、長さや取り回し速度の異なるさまざまなロボットアームが存在しているのも特徴です。
ロボットハンドとは、ロボットアームの先端に取り付けて人間の手のような動きをする部品です。エンドエフェクタまたはグリッパーとも呼ばれています。
ロボットアームが人間の腕に該当するのに対して、ロボットハンドは人間の手に該当します。取り扱うワークによって把持や吸着方法、指の本数やジョイント数が異なる、さまざまなロボットハンドが存在します。対応していれば、ひとつのロボットアームに対して複数のロボットハンドを付け替えられ、ひとつのロボットで多くの作業を担うことも可能です。
ロボットアームは、軸の数や動きによってさまざまな種類があり、産業用ロボットや協働ロボットに合わせたものが存在しています。ロボットアームの種類を特徴とともに解説します。
おもに産業用ロボットで使用されているロボットアームです。L軸・S軸・U軸・R軸・T軸・B軸の4~6軸機構で、複雑な動きを可能としています。ロボットハンドは回転するT軸、B軸と直列で接続されています。垂直多関節ロボットは「シリアルリンクロボット」とも呼ばれています。
垂直多関節ロボットのアームとハンドを組み合わせることで、以下のような作業が可能です。
・部品などをつかむ、握る(ハンド)
・ナットなどを締める
・吸着パッドで真空吸着して軽量のモノを搬送する
・マグネットで鉄製の部品などを搬送する
・溶接する
・スプレーガンで塗装する
・ドリルで穴あけ加工をする
・穴あけした部分にリベットを打つ
・水で洗浄する
・研磨する
スカラロボットとは、水平方向にアームが動作する産業用ロボットです。「水平多関節ロボット」とも呼ばれています。アームが水平方向に移動し、先端が上下する単純な動きのため、コンベアからコンベアへの製品搬送や、製品を容器などへ整列するといった用途で使用されています。
スカラロボットのアームは、軸とリンク(動力を伝える部分)がすべてXY(水平)方向に動作するのが特徴です。先端部はZ(上下)方向に動いて、ワークへ対応します。上下方向の剛性が高く、水平方向にはしなやかな動きが可能です。
スカラロボットのアームに適切なロボットハンドやユニットを選定することによって、例えば以下のような作業ができます。
・ピック&プレース(ワークを取り出し、目的の場所に置く動作)
・ネジ締め
パラレルリンクロボットとは、ロボットアームの軸が並列につながっているロボットのことです。軸が連携、稼動することで高速かつ精密な動作が実現します。ロボットアームのリンクと軸の組み合わせにより、多様な動作が可能です。生産ライン上を高速で流れる製品の小さな差異の検出、小型製品の箱詰めといった精密な作業を得意とします。
直交ロボットとは、2〜3の直交するスライド軸を組み合わせたロボットアームを持つロボットのことです。リンクがスライド軸上を動くことから、このアームを備えたロボットは「ガントリーロボット」とも呼ばれています。シンプルな構造で、組立、搬送、運搬といった作業を得意としています。
ロボットハンドはワークの取り扱い方によって「把持型」「吸着型」「ラバーアクチュエーター型」「特化型」の4種類に大きく分けられます。
ロボットハンドの種類と詳細な特長については、以下の記事で詳しく解説しています。
ロボットハンドとは?種類、構成要素、選定方法、活用事例を解説
複数の指を持ち、人間の手のような形をしているのが把持型ロボットハンドです。一般的な把持型ロボットハンドは2〜4本指が多く、さらに多くの指を持つ把持型ロボットハンドは、多指ハンドと呼ばれています。指の数によって相性の良いワークや作業場所が異なります。
把持型ロボットハンドの中でも、電動機構で動く電動型ロボットハンド(電動グリッパー)、エア駆動によって稼動する空気圧型ロボットハンド(エアグリッパー)に分かれるのが特徴です。
ロボットハンドの先端部分に、ワークを吸着させる機構が付属しているのが吸着型ロボットハンドです。把持型ロボットハンドのように指部分を動かす必要がないため、ワークを持つ・離すといった動作の高速化が実現します。真空発生器と真空パッドによって吸着する真空型ロボットハンドと、電磁石の磁器によって吸着する磁力型ロボットハンドがあります。
ロボットハンドの指の部分がシリコン、ラバー、ゴムの人工筋肉といった柔らかい素材で構成されるのがラバーアクチュエーター型ロボットハンドです。一般的にソフトロボットハンドと呼ばれています。把持型や磁力型に比べて、人の手のような器用さや柔軟性が高いのが特徴です。ワークの形状、柔軟性などに応じた適切な力具合で取り扱うことができます。
特化型のロボットハンドは作業内容や目的に応じて、先端に工具やカメラなどをそのまま装着したものです。カメラを組み合わせて自動検査をしたり、ドライバーを取り付けてネジ締めをしたりなど、特定の作業を可能とします。
ロボットアーム・ロボットハンドを導入しても、作業内容や環境、取り扱いワークに適していない場合、生産性の向上や作業の自動化などは実現しにくいといえます。そこで、まずは適したロボットアームを選ぶための選定ポイントを解説します。
ロボットアームの軸数が多いほど可動範囲が高くなり、複雑な作業も可能となります。ただし、軸数が多いとその分ひとつの作業で動く軸も多くなるため、作業の動作速度が落ちやすくなります。また、ロボットアームのコストも高くなる点に注意が必要です。
単純な組み立て作業なら軸数の少ないロボットアーム、狭所作業や複雑な作業を担う場合は軸数の多いロボットアームを選ぶのが良いでしょう。
ロボットアームで持ち上げ可能な最大重量が可搬重量です。可搬重量はロボットアームメーカーが設定しているため、取り扱うワークの重量やロボットの質量を考慮して選びましょう。
可搬重量はロボットアームの種類と密接な関係にあります。たとえばロボットの根本の軸に近いほど大型のモーターが必要となる垂直多関節ロボットや水平多関節ロボットは、可搬重量は小さめに設定されています。パラレルリンクロボットは根元にある複数のモーターでロボットの先端のみを動かせるため、可搬重量が大きく、高速での動作も可能です。
おもなロボットアームの駆動方法には、油圧、空圧、電動、手動などがあります。駆動方式によってロボットアームの速度や強度、精度などに影響します。取り扱うワークの重量のほか、求められる動作の速度や精度を踏まえて駆動方法を選びましょう。駆動方法によって装置の大きさも異なるため、ロボットの設置環境に応じたものを選ぶのも重要です。
たとえばもっとも一般的な駆動方法である電気は、制御がしやすい、高速動作に向いている、装置をコンパクトにできるメリットがあります。一方、油圧駆動は外部からの衝撃に強く、大きな力を出せるため重量物の運搬に向いているといえます。空気圧駆動は電気駆動よりも精度は劣るものの、やわらかな力の制御が可能で、油圧ほどではありませんが大きな力も出せます。
ロボットアームの作業速度は、生産ラインの速度に合わせて選ぶことが重要です。速度が早ければタイムラグもなく作業を進められる一方、あまりに動作が早すぎると前後工程での待ち時間が発生したり、無駄な在庫が発生したりするといったデメリットも起こりえます。さらに、ロボットアームの速度(251mm/s以上)によっては安全策の設置が必要な点にも注意しましょう。安全策を設けない協働ロボットのロボットアームとして選定する場合、速度は250mm/s以下とするのが必須です。
ロボットアームの関節数と精度は反比例する傾向にあります。ただし、剛性やサーボモーターなどの品質を上げた、関節数が多く高い精度の作業も可能なロボットアームもあります。ただし、関節数が多くて精度も高いロボットアームはその分価格も高くなる傾向にあります。同じ動作を繰り返す生産工程など精度を重視する場合には、コスト面も考慮するようにしましょう。
ロボットハンドもロボットアームと同じく、取り扱うワークや作業工程に応じたものを選ぶことが重要です。
ロボットハンドの詳しい選定ポイントは以下の記事で解説しています。
ロボットハンドとは?種類、構成要素、選定方法、活用事例を解説
取り扱うワークとの適合性をチェックするため、まずはロボットハンドの基本的な性能に注目します。チェックするポイントは、把持力、吸着力、汎用性、材質の4点です。取り扱うワークや作業に応じた性能を持つロボットハンドを選定しましょう。
指の位置、把持力、吸着力がこまかく調整できるか、生産ラインに応じた把持速度を調整できるかを確認しましょう。また、重いものならしっかりと、繊細なものなら優しく、というようにワークに合わせた把持力や繊細さを持ち合わせているかもチェックしておきましょう。
ロボットハンドは基本的に常時稼動するため、大きな負荷がかかります。故障をすると生産ラインのストップなどの悪影響も出るため、メンテナンス性も確認しましょう。必要なメンテナンスが繰り返し発生すると、コストも多く発生してしまう点には注意が必要です。
ロボットハンドの周辺環境を考慮し、ロボットハンドのサイズ、可動範囲、形状を選定しましょう。設置環境に合わせたロボットハンドを選ばないと、稼働範囲が合わずワークを適切に掴めなかったり、安全柵に当たって停止してしまったりする可能性があります。
ロボットハンドはロボットアームの先端に取り付けて使用するため、すでに導入している産業用ロボットや協働ロボットのアームに適合するかどうかも重要です。適合するかどうかも踏まえて選定しましょう。
たとえば、ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズのソフトロボットハンド「TETOTE」は株式会社コスメックのマニュアルロボットハンドチェンジャーを取り付けることで、ワンタッチ交換が可能になります。取り扱うワークや作業に応じてロボットハンドの付け替えができれば、ロボットが担う作業の汎用性も高まります。
ロボットアーム、ロボットハンドそれぞれの概要や種類、選び方のポイントについて解説しました。ロボットアームとロボットハンドを組み合わせて使用することで、作業用ロボットや協働ロボットはさまざまな作業を可能とします。ロボットが担う作業の種類や取り扱うワーク、ロボットを導入する目的に応じて適切なロボットアーム、ロボットハンドを選び、製造ラインの効率化や自動化につなげましょう。
ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズでは、ヒトの手のようにやわらかく器用で柔軟なソフトロボットハンド「TETOTE」を開発しました。従来のロボットハンドでは難しかった、さまざまな大きさや重さ、形状のワークを自在に取り扱えるため、ピースピッキングにおける活躍が期待されます。物流や産業界の自動化についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。