ピースピッキングの自動化や効率化に関心をお持ちではないでしょうか?製造現場や物流現場において従来ヒトが担ってきたピースピッキングですが、ロボットによるピースピッキングにより急速に自動化が推し進められています。
そこで、本記事ではヒトとロボットそれぞれのピースピッキングについて解説するとともに、ロボットによるピースピッキングに必要な設備や製造現場におけるピースピッキングの自動化の例について紹介します。
ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズでは、ヒトの手のような器用さと柔軟さを兼ね備えたラバーアクチュエーター型ロボットハンド「TETOTE」を開発し、従来のロボットハンドでは困難とされていた大きさや形状、重さの異なるワーク操作を可能にしました。
「TETOTE」はピースピッキング分野における新たなスタンダードとして、今後の物流・産業界の自動化を支えていきます。
ぜひお気軽にご相談ください。
ピースピッキングとは、ピースとしての部品や製品などの単体品を、仕分けて(ピッキング)必要な部品などが揃うようにすることです。
従来、ピースピッキングのような仕分け作業は作業員が行う仕事の1つでしたが、効率や生産性を向上させるためにロボットを使った仕分けへと変わってきています。
まずヒトの作業員によるピースピッキングについて解説します。下記の図1では、作業者がピースピッキングを行う様子を表わしています。
仕分け前の部品格納箱には、A,B,Cの3つの生産ラインで使用する部品が、図のようにランダムに置かれています。作業員は、Aライン用、Bライン用、Cライン用の3つの部品箱にそれぞれの部品を、製造工程で扱いやすいように整理して並べます。
ピッキングが終わったら、台車を使って、それぞれの製造工程ラインへ運びます。ピースピッキングの仕事は、生産工程が終了するまで続けられます。
ロボットがピースピッキングを行う場合の作業方法と注意点について解説します。
図2では、ロボットによるピースピッキングのイメージを解説しています。
ロボットは、「目」に相当する3Dカメラによって、パーツの色と形と立体構造を把握し、「頭脳」に当たるピッキング用ソフトウェアでピースをつかむ位置を判断し、「手」に当たるピッキングハンドでピースのつかむ位置をとらえて、必要なピースを取り出します。
取り出したパーツは、A,B,Cのどの製造ライン用かを見極めて、それぞれの生産ライン用の部品ボックスに並べて置いていきます。A,B,C全ての部品箱に必要な部品が並べられれば、自動搬送機で製造ラインまで運びます。
ロボットが部品箱からピースをピッキングする際は、一番上位か、周囲に何も部品が重なっていない部品から取り出す必要があります。もし一番下にある部品をピッキングしやすいと判断して取り出すと、その上に積み重なった部品が崩れた際にぶつかって破損や変形が生じる可能性があるため注意が必要です。
また、検査用の2Dカメラでは平面的にしか映らず部品の奥行が判明しないため、ロボットハンドが部品のつかむ位置を判断できない可能性があります。3Dのカメラを使えば、奥行きを含めたピースが置かれている状態の情報を得ることができ、ロボットハンドをピースのつかむ位置に移動できます。
ヒトとロボットによるピースピッキングの違いを下の表にまとめました。
表1 ヒトとロボットの違い
項目 |
ヒトの作業 |
ロボット作業 |
備考 |
ピッキング作業 |
ピースの状態(重さや保存状態)がピース仕様や見た目から分かるため、ミスはほぼ起こりません。 |
置かれているピースの情報が少ないと、ピッキングで落とすなどのミスが起こる可能性があります。 |
ピッキングシステムは、ミスが起こらないように、高度なプログラミングで実施され、ミスは起きにくいでしょう。 |
作業効率 |
重量物の仕分け作業は、負担が大きく、作業効率は悪くなります。 |
重量に関係なく一定の高速で作業が行えるため、効率的です。 |
- |
コスト |
作業員の人件費 |
設備導入費用と設備の維持費用 |
短期(1,2年)では、ロボット導入の方が高いですが、長期的には、ヒトの方が高くなります。 |
安全性 |
労働安全手順に則って作業します。 |
協働ロボットとして、周辺環境も含め、法規に従った構造です。 |
労働安全衛生法と各種規則 |
作業性 |
同じことの繰り返しとなるため、作業員のローテーションが必要です。 |
単調な繰り返し作業は、ロボットの得意とするところです。 |
- |
緊急性 |
特にありません。 |
電源停止・設備停止などシステム停止時は、緊急停止して、復旧作業に当たります。 |
ヒトによるバックアップでカバーします。 |
管理体制 |
作業員の作業環境を管理します。 |
ロボット周囲の環境管理。 システムの監視・入力など。 |
- |
ここまでヒトとロボット、それぞれのピースピッキングについてみてきましたが、ここからはロボットによるピースピッキングシステムについてさらに詳しく解説していきます。
ロボットがピースピッキングを行うためには、さまざまな設備の設置が必要です。そこで、設備システム全体のイメージを紹介した後に、設備ごとの解説を行います。
まずはピースピッキングシステムの動作イメージについてです。図3はピースピッキングを行うシステム構成とそれぞれの関連についてのイメージを表わしています。
システム全体としての動きは、ピッキング用部品収納箱からピッキングしたピースを、ピッキング終了部品収納箱に整然と収納します。収納を終えたら、無線自動搬送車が無線命令指示によって必要製造ラインまで運搬します。
ピースピッキングの主体は、ピースをピッキングするロボットです。ロボットを動作させるのは、ロボットコントローラです。一方、ロボットアームハンドによってピッキングを行わせるのが、ピッキングコントローラです。
ピッキングコントローラは、ピースの位置や箱の中の状態を検出する3Dカメラによって、ピッキングするための情報収集を行い、ピッキング用プログラムを通してロボットコントローラにピッキング作業を行わせます。
3Dカメラが収納箱の状態を的確に映し出すためには、照明の色や配置などが重要になります。
以上が、ピースピッキングシステムの動作イメージです。
(2)以降には、ピッキングシステムで必要な設備をご紹介します。
ロボットは、ロボットアームを動作させる協働ロボットで、ロボットコントローラに従って動作します。ピッキング動作は、ピッキングコントローラからの指示をロボットコントローラに伝えます。
基本的にピッキングロボットは、工場で採用されているメーカーのロボットの形式に準じます。
ロボットハンドは、ピースをつかむロボットの「手」の部分です。
ピースは整然と並んでいることはなく、雑然と重なって置かれている場合がほとんどです。また、重量のあるもの、柔らかいもの、精密仕上げがされて傷をつけてはいけないもの、袋詰めのものなど、色々な条件があります。そこで、ピースの状態によって、ロボットハンドの種類を選ぶ必要があります。
ロボットハンドは大きく分けて4種類に分類されます。
・把持型ロボットハンド
・吸着型ロボットハンド
・ラバーアクチュエーター型ロボットハンド
・特化型ロボットハンド
把持型ロボットハンドは駆動方式により電動型・空気圧型、吸着型ロボットは吸着の仕組みにより真空型・磁力型にさらに細分化されます。
ロボットハンドの種類や選び方については下記にて詳しく解説しています。
ロボットハンドの種類とは?各種類の特徴や選定ポイント、メリット
ピッキングするピースは整然とは置かれず、横倒し、斜め倒れかけ、上下逆さのような状態にあるため、ピースを立体的に捉えないと、ロボットハンドでピッキングできません。そこでピースを立体的に捉えるものが、3Dカメラです。
カメラの設置位置は、ロボットハンド上に設置する場合と、ピッキングするピースの状態を全体的に捉えるため、エリアカメラとして設置する場合があります。
また、カメラの映像を確実に捉えるためには、適切な照明を当てることも重要です。
3Dカメラはマシンビジョンの1つとしてあり、状況によってRGB-Dなど多様な画像装置や画像処理ソフトなどが用いられます。ただ、このコラムではマシンビジョンの解説はせず、3Dカメラとして表記しています。
ピッキング全体管理コントローラは、ピッキング状態を制御・管理する装置です。ネットワークを通じてピースの仕様などの必要情報とともに、カメラの映像情報やロボットの状態情報を収集します。
収集データから、専用のプログラムでピッキングの方法を考え、適切な指示をロボットコントローラに伝えます。ピッキング方法については、AIやディープラーニングなどによって自ら判断します。
周辺の状態から危険を察知した場合は、ロボットの緊急停止も行います。
ロボットハンド、3Dカメラ、照明などピッキングを行う必要用具がありますが、ピースの形・重量・設置状態により、既存の用具では対応できない場合があります。その場合は実験を含めて、ピッキング用具を開発する必要があります。
また、図3では部品箱運搬に無線自動搬送車を使っていますが、ベルトコンベアで部品箱を流す方式が簡単で効率的です。ただし、製造品を梱包して倉庫に収納する場合には、無線自動搬送車が有効です。
ピースピッキングのシステムについて理解したところで、次にピースピッキングがどのように現場で活用されているのか、製造工場を例に解説します。図4は、製品製造から倉庫格納まで、ピースピッキングによる自動化を示したイメージとなります。
図4が想定している工場は、次のような流れで製品を製造し、倉庫に保管する工場です。
まず生産ラインでは、A、Bの2つのラインが、別々に稼働しています。
A部品は部品収納箱に入っている部品をピッキングロボットが1つずつピックアップして、A部品箱に収納します。A部品が揃えば、A生産ラインまで運ばれます。
A生産ラインでは、A部品が揃った後は、部品セットロボットが部品を製造品基板に設置します。部品を取り付けた組立品は、A製品製造棟に入り、製品化加工が行われます。
A製品製造棟で加工された製品はライン末端で製品最終検査を行い、製品用箱に収納されます。収納された箱は、製品収納箱梱包場所まで運ばれ、製品をピッキングされ梱包箱に収納されます。
梱包箱は重ねられた後に、倉庫エリアに搬送され、A製品格納箇所に収納されます。倉庫への搬入やA製品格納箇所までの移動は、ピッキングロボットが行います。
B製品についてもA製品と同様に製造から倉庫収納まで、同じように行われます。
このようにして、ピースピッキングにより製品製造から倉庫格納までの自動化が行われています。
ブリヂストンソフトロボティクスベンチャーズは、ヒトの手のように器用に物をつかめるソフトロボットハンド「TETOTE」を開発しました。
空気の加圧でしなやかに動くゴム人工筋肉により、従来のロボットハンドでは難しいとされてきた、精密機器や食品のように繊細で壊れやすいものをやさしくつかむ、形状の異なるいくつかの製品をまとめて持ち上げるといったことが可能です。
また、ラバーアクチュエーターで構成されているため、軽量にもかかわらず高出力であり、さらに安全性の確保も期待できます。
ピースピッキングでお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
本コラムでは、ピースピッキングについてのイメージ、ピースピッキングに必要な設備についてご紹介してきました。
ピッキングロボットは、3Dカメラの映像をもとにピッキングコントローラとロボットコントローラにより制御され、ロボットハンドで製品をつかむことによりピースピッキングを実現しています。
また、製造現場の例では、部品収納箱に雑多に入っている部品を種類ごとに仕分けたり、積み重ねられた梱包箱を製品ごとに倉庫に格納するといった働きにより、業務効率化に貢献しています。