産業用ロボットに求められる作業内容が複雑化する中で、ロボットハンドの製品も多様化し、多くのメーカーがロボットハンドをリリースしています。
業務効率化や省人化をはじめとした製造業における自動化を推進する技術として欠かせない存在になりつつありますが、導入にあたってどのメーカーのロボットハンドを選べばいいのかわからない担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで、これからロボットハンド導入を検討している方のために、ロボットハンドメーカー10社を紹介します。各メーカーの主力製品の特徴や強みについても解説していますので、ぜひロボットハンドメーカー選定の参考にしてください。
ロボットハンドを取り扱うメーカー10選を、主力製品の特徴とともに順に紹介します。
まず、指にゴムの人工筋肉を用いたソフトロボットハンドを手がけるメーカーのうち、厳選した4社を以下に紹介します。
出典:株式会社ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ
家庭用の一般自動車から、スタッドレス、トラックやバスなどの輸送用車両、さらに建設車両、鉱山車両、月面探査車まで、特殊な用途にも活用される高品質なタイヤを製造するメーカーとして著名な「株式会社ブリヂストン」。
タイヤ製造で培ったゴムの技術を活かし、「ソフトロボティクス事業」を展開しており、その一環としてゴムでできた人工筋肉である「ラバーアクチュエーター」製の指を持つロボットハンド「TETOTE」を提供しています。
「TETOTE」は、人間の手、ロボットハンドに次ぐ3番目の立場という位置づけです。ロボットハンドにゴム人工筋肉の指をプラスしたことで、ロボットハンドの持つ把持力や耐久性はそのままに、やさしくつかむ、包むといったことも可能になりました。
繊細な材質や特殊な形状のワークも取り扱いができるため、樹脂や金属といったさまざまな素材や形状の部品が混在する機械部品分野でも、正確かつていねいなピッキングが可能です。また、メーカー物流や3PLにおける物流倉庫にて梱包前の摘み取りピッキングからトータルピッキングまで担うことができます。
ほかにも、食品工場における食品の盛り付けといったデリケートな作業にも強みを発揮するロボットハンドです。
「Soft Robotics」では、ロボットによる自動高速ピッキングソリューションの設計や構築を行っています。独自の3Dマシンビジョン、AIソフトウェア、ソフトグリッパーを搭載したロボットによる、食品などのデリケートなワークのピッキングと把持、スピーディかつ正確なワークの移動を実現しました。
ソフトグリッパーはIP69K定格の食品グレード設計のため、食品をピッキングしてライン上のトレーに乗せる、といった作業も自動化できます。食品はもちろん、いろいろな産業のワークの取り扱いができるため、ロボットによる自動化を検討しているときの選択肢となるでしょう。
出典:安藤株式会社
「安藤株式会社」はスマートガンやトルネードエアーノズル、アルミ合金など非鉄金属用旋削チップであるユニコーンチップなどの工具をはじめ、工作機械・ ロボット、計測機器などの幅広い機器を展開するメーカーです。シリコンゴム製のロボットハンドである「A HAND」をリリースしています。
柔軟性の高いシリコンゴムがワークをやさしく包み込むように把持できるため、壊れやすいもの、傷つけたくないもの、やわらかいものといったデリケートなワークの取り扱いに向いています。
出典:ニッタ株式会社
伝動・搬送用平ベルトやベルトコンベヤユニット 、ホース・チューブ製品、自動車用や工業用ワイパ・ゴム成形品、橋梁・建築用製品といった、幅広い製品の製造を行う「ニッタ株式会社」では、ソフトハンドリング用のロボットハンド「SOFTmatics」をリリースしています。
独自の把持機構と、柔軟性に富むウレタン素材を採用することで、不定形だったり形がバラバラだったりつぶれやすいワークも包む、はさむ、つまむように把持可能です。また、食品衛生法に適合した素材で、拭き取りや洗い流し洗浄もできるため、食品を取り扱うロボットハンドとしても向いています。
着脱機構はツールレスのためネジ落ちのリスクもなく、メンテナンス性も高くなっています。
次に、人間のように複数の指を持つ把持型ロボットハンドを作るメーカーから2社を紹介します。
出典:シナノケンシ株式会社
製造現場向け自動搬送ロボット「AspinaAMR」や小型精密モーターおよび関連商品など、製造現場におけるさまざまなソリューションとなる製品を展開しているメーカーが「シナノケンシ株式会社」です。
電動2爪ロボットハンドシリーズ「ASPINA電動ロボットハンド」を提供していて、丸ものワーク向けの3爪モデル、角型ワーク向けの2爪モデルがあります。電動のため把持力を調整でき、しっかりつかむ、人の手のようにやさしくつかむ、といったことも可能です。
異なる形状や硬さのワークを自動調整してつかみ分けができるオートグリップ機能を搭載しているため、1台で複数のワークや作業に対応できます。
出典:株式会社北川鉄工所
「株式会社北川鉄工所」は鋳造製法による金属素形材加工、旋盤やマシニングセンタといった工作機械の補助機器の旋盤用チャック・NC円テーブル、パワーチャックなどを手掛ける工作機械事業、プラントや建設用タワークレーン、橋梁架設用機械、立体駐車場などの産業機械を手掛けるメーカーです。
業界シェア60%を占めるパワーチャックの「ものを把持する」技術を活かしたロボットハンド「産業用ロボット専用グリッパ」を展開しており、取り扱いワークや作業内容に応じて選べる、2爪モデル、3爪モデル、省段取りモデルの3モデルがあります。
確実性のある把持力を持つロボットハンドを求めている時に向いているでしょう。
ロボットハンドの先端にワークを吸着させるとともに、指でもワークを把持する把持型+吸着型ロボットハンドを取り扱うメーカー1社を紹介します。
出典:株式会社オカムラ
ロボットハンドメーカーの「RightHand Robotics」では、ロボットピースピッキングシステム「RightPick」をリリースしています。目(コンピュータービジョン)、手(グリッパー)、 頭脳(AIソフトウェア)がシームレスに連動するため、ロボットハンドによるエラーの少ない信頼性のあるピッキングが実現します。
ロボットハンドは、真空吸着カップで商品を吸引する機構。ロボットアームが高速で動作する際、安定させるために3本の指が商品を支えます。吸着カップを伸ばし、商品を吸い上げてから指で掴むので、狭い空間からもピック可能です。(尚、吸着のみでの把持操作も可能)
把持型、吸着型と複数種類のロボットハンドの取り扱いがあるメーカーを2社紹介します。
把持型の「RG2グリッパー」「RG6グリッパー」、吸着型の「2FG14 FINGER GRIPPER」「2FG7」など多彩なロボットハンドを展開するメーカーが「OnRobot Japan株式会社」です。取り扱うワークや作業内容に応じたロボットハンドが選べます。
ロボットアームやハンドのパレット作業の効率化システムや、ロボットアームやハンドのパフォーマンス分析など、ロボットアームやハンドのシステム周りのソリューションも展開しています。
ロボットアームやハンドを0から取り入れたいとき、システム周りも整備したいときにも選択肢となるメーカーです。
出典:Robotiq
「Robotiq」は、国際的ネットワークのパートナー企業と提携し、協働ロボットの導入をサポートするツールやソリューションを展開するグローバル企業です。「2F-85 / 2F-140 Adaptive Grippers」「Hand-E」「3-Finger Gripper」「バキューム・グリッパー」と多彩なロボットハンドを展開しています。
たとえばグリッパータイプの「2F-85 / 2F-140 Adaptive Grippers」は協働ロボットへ取り付けるだけで稼動できるPlug + Playや、1台のグリッパーですべてのアプリケーションを自動化できるといった機能を搭載しています。
ロボットハンドの設定や操作も簡単にできるため、特別なスキルや知識がなくてもスムーズなロボットハンドの導入が実現できるでしょう。
最後に、作業内容や目的に応じて最適な形状をした特化型ロボットハンドを取り扱うメーカーを1社紹介します。
①古川機工株式会社
出典:古川機工株式会社
「古川機工株式会社」はドリップシート、パタリングマシーン、ドラム式味付け装置、米粉計量・混合プラントなどの食品製造用をはじめとした機器を展開するメーカーです。
ゾル・ゲル状ワークや、掴むと型崩れしてしまうワークを形を崩さずそのまますくい上げ、ハンドリングができる新技術「SWITL技術」を搭載したロボットハンドを展開しています。食材のソース、薬液といったワークを取り扱うロボットハンドを探しているときに選択肢となるでしょう。
SWITL技術は日本機械学会2011年度優秀製品賞や文部科学大臣表彰2015年技術賞受賞の受賞歴もあり、再生医療用デバイスにも応用されています。
ここからは、ロボットハンドのメーカーを選定するポイントを解説します。
ロボットハンドにはさまざまな種類があり、メーカーによって取り扱っている製品の特徴や強みも異なります。そこで、自社がロボットハンドを導入する目的や解決したい課題に適したものを選ぶことが重要です。また、ロボットハンドは初期導入費用が高額になる傾向にあるため、メーカー選びは慎重に行う必要があると言えます。
まず、自動化したい作業と親和性の高いロボットハンドを取り扱っているか確認する必要があります。
ロボットハンドはワークの取り扱い方によって把持型と吸着型があり、さらにワークを吸着する方法や駆動方法によっても種類が細分化されます。そのため、自社でロボットハンドが担う作業内容や取り扱うワークの材質や形状に適したロボットハンドを選ぶことが重要です。そこで、導入を想定しているロボットハンドの取り扱いがあり、強みがあるメーカーを選ぶことをおすすめします。
同じロボットハンドの種類の製品でも、性能がメーカーによって異なります。たとえば制御精度や可搬速度、メンテナンス性などはロボットハンドによってさまざまです。作業場所や周辺環境に応じたサイズのものを選ぶのも重要です。
ロボットハンドの種類や、性能を決めるポイントについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
ロボットハンドとは?種類、構成要素、選定方法、活用事例を解説
自社の希望に合う導入ラインナップがあるかも確認しておきたいポイントです。
前述の通り、新しいロボットハンドを導入する際、自動化したい作業や取り扱うワークに合うロボットハンドを選ぶことが重要です。ロボットハンドメーカーによっては、ロボットハンドの購入前に自社のワーク取り扱いの検証を行ったり、レンタルに対応したりといったプランを設けているメーカーもあります。
導入前に検証やレンタルができるため、導入後に失敗するリスクを抑えられるのが魅力です。ロボットハンドを取り付けるアームやロボット本体がない場合、作業ロボットや協働ロボット導入をサポートするプランを設けているメーカーもあります。
たとえばブリヂストンなら、「TETOTE」の購入だけでなくレンタルプランや導入前の検証プランも用意しています。自社の工場やプラントなどで検証ができるだけでなく、取り扱いたいワークを送付いただくと、ブリヂストンの自社ラボにて検証を行うことも可能です。
詳しいプランについてはこちらのページで確認できます。
初期費用とランニングコストが予算内に収まるかもチェックが必要です。
ロボットハンドは導入時本体価格をはじめとした初期費用が発生します。さらにロボットハンドの吸着部分の交換や、メンテナンス費用などのランニングコストも発生します。
そのため、ロボットハンドの導入に割り当てられる予算を把握したうえで、費用面が予算範囲内となるロボットハンドのメーカーを選びましょう。
自社が対応地域内にあるロボットハンドメーカーを選ぶのもポイントです。ロボットハンドのメーカーが海外にある場合には、日本国内でも対応可能エリアが限定されている場合があるため注意深く確認する必要があります。
事前に問い合わせや相談ができる、導入後もサポートが受けられるなど、サポートやアフターフォローについても確認しておきましょう。事前にメーカーを比較して導入するロボットハンドを選びたいときや、万が一トラブルが発生したときなどにも安心です。
メーカーによっては、取り扱っているロボットハンドの製品情報を公開しているところも多いです。YouTubeの動画が公開されている、資料がダウンロードできるなどで製品の仕様や実際に稼動する様子が確認できれば、自社へのロボットハンド導入後のイメージもしやすいでしょう。
ロボットハンドを取り扱うメーカー10選と、ロボットハンドメーカーの選び方のポイントを解説しました。
ロボットハンドにはメーカーの技術やノウハウが集約された、さまざまな製品がリリースされています。自社がロボットハンドを導入する目的や解決したい課題、取り扱うワークに合わせたロボットハンドを選び、生産性向上や業務効率化・自動化につなげましょう。
ブリヂストンの「ラバーアクチュエーター」製の指を持つソフトロボットハンド「TETOTE」は、より人間に近い、繊細な動きや多様な不定形ワークの取り扱いも実現できるロボットハンドです。よりデリケートなワークの取り扱いや、複雑な作業を担うロボットハンドの導入をご検討の際には、ぜひお気軽にご相談ください。