2023.07.11

食品工場自動化の"新たな道筋"~ロボット導入の課題とこれからの行先~

日夜稼働し、私たちの食卓へ美味しく安全な食べ物を提供する食品工場。
この現場にも、熟練作業者の高齢化による退職や労働人口の減少、その他にも働き方改革等による影響から「人手不足」という昨今の社会問題は漏れなく大きな影響を及ぼしています。 また、食品工場では上述した背景に加え、人の毛髪や細菌の混入など、生産工程への人の介在が衛生的なリスクを高めることから、ロボットによる自動化が特に必要とされています。

では、現状、食品工場では、ロボットによる自動化は進んでいるのでしょうか?

実態としては、物流施設や、他品種(自動車、電機製品、etc.)の生産施設と比べると、後発的でまだまだ導入実績が少ない状況にあります。 食品工場の生産工程、「原料の前処理」、「加工」、「検査」、「包装」、「配送」という流れの中でも、後工程の「包装」や「配送」では、他工程に比べて複雑な作業が少ない事や、力仕事が多い事から、既にロボットが導入されているケースが多くあります。一方で、食品を直接取り扱う繊細な作業工程である、「原料の前処理」、「加工」、「検査」に関しては、依然その多くが人手に頼っており、なかなか手離れして自動化へと移れない実態があります。

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これまで何故、そのような工程の中で自動化が進まなかったのか?

その理由と考えられる、3つのポイントを以下に記載します。
① 不定形なモノを多品種少量生産する、食品業界特有の要因
② ロボットによる異物混入の懸念
③ 食品工場の特殊環境に合わせたオーダーメイドの必要性

① 「不定形なモノを多品種少量生産する、食品業界特有の要因」
定形部品が大量に流れる一般製造業と違い、食品製造はその品種によって、大きさ、形、柔らかさ、それぞれに違いがあり(同じ品種の中でも個体差があるモノも)、また、季節の変わり目など短期間で扱う品種が入れ替わることが多分にあります。そのように対象物が多岐にわたる環境は、ロボットが苦手とするところで、具体的には "モノの把持"を、1つのハンドで網羅的に扱う事が難しいとされています。その為、品種毎に合わせた専用ハンドを準備し、対象によって交換する必要があり、その際は、いわゆる「チョコ停」といわれる、都度生産ラインを止め、部品交換やサニテーション(洗浄や殺菌)の作業が発生する。この手間が、結果的に現場の生産効率悪化に繋がるのではないかとの懸念を生み出し、自動化へと踏み出せない要因の一つになると考えられます。

② 「ロボットによる異物混入の懸念」
食品業界では、徹底した衛生管理が実施されており、異物の混入は絶対にNGとされています。 人が作業する際の髪の毛などの異物混入に関しては、これまで長年の経験からあらゆるリスク管理が施されていますが、慣れないロボットに関しては、塗装が剥がれたり、メンテナンス用の潤滑油が漏れ出すなど予期せぬ異物混入のリスクが危惧されます。こういった衛生的な心配事も、食品を直接扱うような生産工程へのロボット導入を阻害する一因になると考えられます。

③ 「食品工場の特殊環境に合わせたオーダーメイドの必要性」
食品工場では、その製造工程の中で、油や高温水が飛沫したり、水蒸気がたちこめたりと厳しい作業環境もあり、ロボットにはそれに耐久出来る防水性能や耐熱性能などが必要とされます。これまで食品製造専用のロボット開発はまだまだ発展段階であった為、必要なロボットにその環境に耐久できる性能があればいいが、自社の要求に合わせてオーダーメイドとなると、いわゆる"高級仕様"のロボットとなってしまう。特に販売単価が低い食品業界においてその投資回収を考えると、とても手を出せる代物にはならず、導入を敬遠されていたと考えられます。

このように、食品工場においては、繊細な作業が多く、そもそもロボットより人が得意な環境が多い事、また、他領域で活躍するロボットをそのまま横展開する事が難しく専用性が必要な事など、どうにもロボット導入が進みづらい側面がありました。

これからの食品工場の自動化とは

一方で、近年の飛躍的なテクノロジーの発展や、他業界の数々の実績から培ったロボット開発のノウハウが後押しとなり、ようやく食品製造を目的とした専用ロボットの開発が加速化しています。食品工場の過酷な環境に耐久出来る仕様や、薬剤で丸洗いできる表面処理・防滴構造、食品機械専用の潤滑油が使用できるなど、ハード面の開発に加え、食品工場の生産ラインの自動化に特化したSIerの増加などソフト面での追い風もあり、業界的に徐々にではありますが、「自動化」というキーワードが注目され、その導入への取り組みが盛んになっています。今後これまでの限定的なシーンから解き放たれ、あらゆる工程、作業内容の中で、ロボットの活躍が期待されます。

2.jpg※自動化ロボットで、クッキーを箱詰めする様子。

わたしたちソフトロボティクスベンチャーズが出来る事

上述したように食品工場の自動化を阻む要因は少しずつ、解消され始めています。 その状況の中で残された最後の課題「ロボットハンドの革新」。そのミッションの解決に我々ソフトロボティクスベンチャーズは取り組んでいます。

現在、流通するロボットハンドの特徴を見ると、ある品種に向けた特化型ハンドが多く、導入を考える際、そこにはある種 "諦め" が存在すると考えます。吸着型のハンドの場合、品種は堅いモノ、面があるモノに絞られる、グリッパー型だと対象物の大きさによってハンドチェンジする手間を併せ持つこと。食品を扱う現場では、様々な形、大きさ、やわらかさを一つのハンドで汎用的に持てる事が理想的であり、やはり人の手以外に最適なものはないのかと、、、、

"諦める"必要はありません!! 

ソフトロボティクス ベンチャーズでは、ブリヂストンが100年に渡って極めてきたゴム・素材の技術を生かし、人の手でも、ロボットハンドでもない"第3の手"を提供しています。 指の部分にゴム人工筋肉が入っていることで、まさにヒトの手のような"器用さ""柔軟さ""やさしさ"を兼ね備えています。それにより、さまざまな対象ワークの形状・硬さに合わせて、"いい感じ"にモノを掴むことができるという特徴を持っています。 特に先日『FOOMA JAPAN 2023』にて初めて発表した、「掌(たなごころ)」という新しいコンセプトハンドについては、指先の柔らかさを更に追求したモデルとなり、これまでロボットハンドでは難しいとされていた食品等繊細なモノの把持に強みを発揮するのではないかと考えています。単純に「何でも持てる手」ではなく、その所作・動作から、作り手たちの想いも伝わる、オモイもカタチも崩さない、そんなあり方を目指しています。 (関連動画:ソフトロボティクスとの出会い@FOOMA JAPAN2023

3.jpg※『FOOMA JAPAN 2023』ブースの様子

最後に

今回は食品工場の自動化をテーマに、ロボットに必要とされること、今後の課題等を述べました。 既に物流倉庫や機械・電機関連の生産施設では、数多くのシーンで活躍している自動化ロボットですが、特に食品を扱う現場においては、これまで必要とされてきた、「力強さ」や「スピード」といったいわゆる一般的なロボットの特徴ではない、「繊細さ」や「柔軟さ」といった人のような動きが必要とされています。日々テクノロジーが進化するこの時代の中では、その様なロボットに求められるものの多様性についても、いくつものアプローチが存在していると感じます。「ロボットでは難しいだろう」という、これまでの既成概念にとらわれず、食品製造に関わる皆様の培われた知恵と経験、柔軟な発想を技術の発展と掛け合わせる事で、最適な食品工場のあり方を実現出来るのではないか。我々ソフトロボティクスベンチャーズは、そう考えております。

食品業界の一層の発展を願い、ぜひ我々と一緒に新しい世界を目指しましょう。

本件に関するお問い合わせ先
株式会社ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ
email: softrobotics.bs.tsg.bsj@bridgestone.com
Website: www.bridgestone.co.jp/products/softrobotics
Tel:070-3187-2009

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