2023.03.15

ロボットハンドが物流最後の課題の救世主!?

 物流業界を取り巻く多くの課題。EC市場の急成長により物流ニーズは増す一方、少子高齢化による「人手不足」の課題は既に深刻化。加えて、2024年には働き方改革関連法により労働時間の規制が適用。また今後は更なる人件費高騰も相まって、物流業界全体に様々な問題が生じることが懸念されています。

 そのような中、各社新たな"自動化"ソリューションの開発・導入の取り組みを加速。特に「パレット単位」や「ケース単位」のハンドリング作業は一部既に自動化され始めているのが現状です。しかしながら、商品個数単位のピッキング作業、いわゆる「ピースピッキング」「バラピッキング」においては、未だに多くの人が介在しており、この工程の自動化は「物流最後の課題」とも言われています。

物流最後の課題、未だ解決されていないのはなぜ?

 未だに多くのヒトの"手"が支えているピッキング作業。日本国内でのピッキング作業員の数はおよそ115万人(※)にも及ぶといわれています。(※出典:令和2年国勢調査より https://shigoto.mhlw.go.jp/User/Occupation/Detail/486
そこで気になるのは、「なぜ未だに多くのヒトの"手"が支えているのか」という点。そこには意外にも奥深い理由があります。

 一つには、ヒトの手特有の「器用さ」があります。物流で扱う商品の形状、材質、重さなどは様々。大規模な物流拠点では、SKUが数十万点、数万点にまで及ぶことも。このような多様な商品をハンドリングする作業は、ヒトの手の器用さが必要不可欠な領域であることは間違いありません。

 二つ目の理由は、商品の多くがヒトの手で扱われることを想定し、デザインされているということ。前段でヒトの手の器用さについて触れましたが、ヒトの手が器用だから扱える、というよりは、そもそも多くの商品自体が複雑な動きができるヒトの手を前提に設計されていることが、一番本質的な理由なのかもしれません。

"ロボットハンド"、ヒトの手が足りない時の新たな選択肢

 物流最後の課題解決に向けた、ロボットハンドへの挑戦の歩みは既に始まっています。まず最初に、その歩みの先駆者である2つのタイプのロボットハンドをご紹介します。

把持ハンド(グリッパー)

把持ハンド.PNG

 対象物の重さ、形状や硬さなどに合わせて金属ベースの指・爪(2-3本)を一品一様で専用設計することで、特定の対象物を正確、かつ速くハンドリングできる点が特徴。その専門性と精度・スピードを追求する姿にまさにロボットハンド界の"職人"。主に、溶接・切削業界、医療機器業界、自動車業界での製造工程などで活躍しています。

吸着ハンド(サクションカップ)

吸着ハンド.PNG

 エアを利用し、真空パッドで吸着させてワークを移動させるロボットハンド。真空発生器で真空を発生させ、真空パッドに対象物を吸着させて運びます。対象物の表面に穴が開いていたり、複雑な凹凸があるような商品は苦手ですが、逆にいえば平面がある商品(箱型など)は安定してハンドリング可能。箱型の商品がオリコンに隙間なく詰まっている、といった把持ハンドが苦手な状況も問題なく対応できるのも特徴の一つです。
平面を持つ商品のハンドリングに対し、シンプルさを追求したその姿はロボットハンド界の"ミニマリスト"

ロボットハンドの新たな潮流!?ゴム人工筋肉 第3のハンド

製品写真1.JPG

 ソフトロボティクス ベンチャーズでは、ブリヂストンが100年に渡って極めてきたゴム・素材の技術を生かし、ゴム人工筋肉 ソフトロボットハンドを開発・提供しています。

 指の部分にゴム人工筋肉が入っていることで、まさにヒトの手のような"器用さ""柔軟さ"を兼ね備えています。それにより、さまざまな対象ワークの形状・硬さに合わせて、"いい感じ"にモノを掴むことができるという特徴を持っています。また、ヒトに優しい"やわらかいロボット"という今までにない新たな存在として位置づけることができます。

 ソフトロボットハンドの詳細は以下の資料にてご紹介しておりますので、ご興味お持ちの方はご覧ください。

>ソフトロボットハンド 日用品コマーシャルモデルのご紹介


ロボットハンドを選ぶ時のポイント

 複数のタイプのロボットハンドをご紹介しましたが、やはり現場のニーズ、環境などによって適したロボットハンドを選ぶことが重要です。

ピッキング対象(ワーク)との相性

一番重要なのは、ロボットハンドと対象ワークの相性です。特に大きく以下の2点が重要な"相性"の視点となります。

①対象ワークの多様性 : 対象ワークの重さ、形状や硬さの多様さによって、機能的に適したロボットハンドは異なります。例えば、特定の1つのワークを正確にピック&プレイスすることを目的とする場合、把持ハンド(グリッパー)が最も適していると考えられます。また、扱う商品のほとんどが箱型の場合、吸着ハンド(サクションカップ)が最も適していることが多いです。一方、対象ワークが多岐にわたる場合、器用さ(=汎用性)という意味で第3のハンド ソフトロボットハンドが最も適していると考えられます。

②対象ワークの繊細さ : 場合によっては、ただ自動でピック&プレイスすればいい、ということではなく、対象商品を傷つけず、丁寧にハンドリングすることが求められます。食品のみならず、化粧品やアパレルなどなど、繊細な商材を扱っている業界は少なくありません。ロボットハンドの力加減を"いい感じ"にコントロールできるか、ロボットハンドの把持の跡が残ったりしないかなど、いわゆる「ピック&プレイスの質」も大事な判断ポイントになります。

周辺領域との相性

 ロボットハンドはあくまで自動化を担う"一要素"です。ロボットアーム、ロボットの目と頭脳、または現場の環境等との関係性における"相性"もパフォーマンスを大きく左右する点になります。

①腕、目と頭脳 : ロボットハンドを効果的に使いこなすためには、目による認識、腕の動きと連動した制御が必要になります。頭脳(AI)のレベルによっては、対象物をSKU単位で正確に認識し、それぞれに適した掴み方、掴み加減をコントロールすることができます。ユーザーのニーズに合わせて、ロボットハンドとその他の要素をうまく組み合わせることが重要になってきます。

②現場環境 : 現場での作業条件によっては、ロボットハンドのメンテナンス性も重要になります。ロボットハンドに大きな負荷がかかる作業を継続的に行う場合、または、汚れやすい環境の場合には、ロボットハンドの耐久性またはメンテナンスのし易さも大きなポイントになります。


ピースピッキングロボットが"当たり前"になる社会を見越して

 人手不足が深刻化する中、ロボットがピースピッキング作業に対するひとつの選択肢となる社会は、近い将来に到来すると考えています。ただし、一言で"自動化"といっても具体的に求められることは現場によって様々。"完全自動化"を目指している方もいらっしゃれば、ヒトが中心の"半自動化"を目指している方も。そのような中、ロボット、ひいては、これからの物流を支えるロボットハンドにおいても、複数の選択肢があり、ユーザーが自分に合ったソリューションを探索することができる土台を今から構築していくことが何より大事だとソフトロボティクス ベンチャーズは考えています。

 今回は3つのタイプのロボットハンドをご紹介しましたが、現在いずれも製品化されており、提供が開始されているものです。物流業界の皆さまが一丸となって、この新たな挑戦への歩みを進めることができれば、物流業界を取り巻く多くの課題も乗り越えられると信じています。

是非、一緒に新たな景色を共創していきましょう。

本件に関するお問い合わせ先
株式会社ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ
email: softrobotics.bs.tsg.bsj@bridgestone.com
Website: www.bridgestone.co.jp/products/softrobotics
Tel:070-3187-2009

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