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「魂の田中愛美」への十の問い
高校1年生の時の怪我がきっかけで車いすテニスと出合い、以来、必死に練習に取り組んできた。
それからおよそ7年。強烈なフォアハンドを武器に攻めのテニスを貫き、今では日本を代表する選手のひとりとして、国際大会で優勝できるまでに成長した。
2020年1月13日現在の世界ランキングは15位。今年は8月に東京2020パラリンピックを控えた勝負の年だ。これまでサポートしてくれた多くの人たちに恩返しをするため、夢の舞台で輝く姿を見せたい。
そんな強い思いを抱いた田中愛美選手に宿る、『十の魂』とは?
魂を込めて一球一球気を抜かずに
全力で取り組まなければならない
一、田中選手がモットーにしている「その一球に魂を」という言葉には、どんな思いを込めていますか?
これまで私は、周りの人たちのサポートのおかげで練習や試合ができ、ランキングをあげることもできました。例えば、私が車いすテニスを始めた頃は、地元の方に練習ができるテニスコートを探していただいたり、海外遠征の際には、親から金銭的なバックアップをしてもらったり、ブリヂストンには、私が強くない頃から面倒を見ていただいたり。だからこそ、日頃からの応援に対して責任を持ってプレーをしなければいけない、魂を込めて一球一球気を抜かずに全力で取り組まなければならないと思い、"その一球に魂を"というモットーを胸に、日々努力を重ねています。
二、アスリート人生において、一番魂がゆさぶられた瞬間はいつですか?
格上のベテラン選手と久しぶりに対戦した時のことです。その選手はシーズンを通して不調が続いていました。いつもであれば、彼女は試合中に母親のアドバイスを聞くんですが、この試合ではそれに耳を傾けることなく、自分が思ったことを自分の判断でやろう、負けてもいいから成長しようという感じで向かってきてくれたんです。それが私にはすごく嬉しくて、魂を揺さぶられたし、自分も相手の選手の姿勢に恥じないようなプレーをしなきゃいけないと心から思えた試合になりました。結果はそれまで一度も彼女に勝ったことのなかった私が、ストレートで勝利。試合後に彼女は、半年ぶりぐらいにすごくいいプレーができたと言っていたので、私との試合が不調を脱する機会になってくれたなら、私も嬉しいですし、お互いにモチベーションを上げられる相手としていられるのはすごくありがたいことだと感じました。
私の存在がみんなのモチベーションになったり、
目標にされたりするような選手になりたい
三、壁にぶつかった時、自身の魂をもう一度奮い立たせるために行うことはなんですか?
遠征が続くと、ずっとひとりなので、息が詰まってしまうことが多いんです。そんな時に車いすテニスの体験会や練習会で、車いすテニスのジュニアで頑張っている選手やファンの方たちと一緒にテニスをすると、直接「応援してます!」とか「楽しかったです!」と言われたりするので、それがすごくリフレッシュになります。特にジュニアの子たちが一生懸命ボールを追っている姿を見ると、私の存在がみんなのモチベーションになったり、目標にされたりするような選手になりたいという気持ちがふつふつと湧き上がってくるんです。私にとってジュニアの選手やファンの方たちとの交流は、壁にぶつかった時でも自分自身の魂を奮い立たせてくれる大切な機会になっています。
四、試合中、魂を飛ばすほど夢中になってしまった経験はありますか?
テニスは、ボールを正しく打ち返すだけではなくて、駆け引きや心理戦のような要素もあるんですよね。すごく集中している時は、次のポイントはゲームポイントだから、きっと私の得意なフォアハンドを狙ってサーブを打ってくるだろうという感じで、相手の考えていることがわかるんです。お互いの読みがピタッと噛み合い、心の中で相手と対話しながら試合をしている時は、魂を飛ばすほど夢中になれて、すごく楽しいですね。やっていてヒリヒリするような気持ちにもなりますし、ドキドキが心地よく感じられます。
五、これまで人からかけられた言葉の中で、最も魂に響いた言葉は何ですか?
テニス部の部長をやっていた中学生の頃の話です。やっぱり部長はみんなのお手本にならないといけないと思い、誰よりも早く準備をしたり、練習後も遅くまでコート整備をしたりするなど、雑用を率先してやっていた時期がありました。でも、当時は部員が80人ほどいたので、雑用に興味がない部員が出てきちゃうんですよね。自分の同期は一番上の学年だから楽しくおしゃべりしていたりする中、自分はなんのためにこんなに頑張っているんだろうと思ってしまった時期があって。でも、そんなある日のこと。私がいつも通り一番初めにコートに出て準備をしていたら、数分後に同期の子がひとり出てきて「一番乗りだと思ったら、愛美がいた!」みたいな感じで言ってくれたんです。そして、そのあとに「そういえば、愛美っていつも早く来て準備をしてくれているよね」って言ってくれたことが、すごい嬉しくて。自分の中で決めたことを頑張ってやっていれば、絶対に見てくれている人がいるんだってことを学ぶことができたし、もう少しこのまま自分のやるべきことを続けていこうと思えることができました。今でも努力し続けようと思えるのは、このひと言のおかげです。
とにかく大きな声で好きな曲を思いっきり歌って、
リフレッシュしています
六、自分以外の誰かの魂と対話ができるとしたら、誰にどんなことを聞いてみたいですか?
兄に私が怪我をした当時のことを聞いてみたいと思います。実は私が怪我をして入院することになり、家中がバタバタした時期は、ちょうど兄が大学受験の直前だったんですね。兄にとっては大事な時期だったんですが、両親は私につきっきりになってしまい、今思えば、兄にすごく迷惑をかけてしまいました。でも、これまでこのことについて、ちゃんと兄と話したことがなく、直接話すのは照れ臭いので、もし兄の魂と対話できるなら、当時のことについて話をして「あの時はごめんね」と伝えたいと思います。
七、魂が抜けるほど疲れた時の、リフレッシュ方法を教えてください。
しんどいと思ったら、休み日はひとりでカラオケに行って、めっちゃ歌います!それ以外にも、練習で使っている屋根付きのインドアコートは、横のカーテンを閉めるととても声が響くので、時々朝の練習前にひとりで歌うこともありますね。車を運転している時も歌いますし。とにかく大きな声で好きな曲を思いっきり歌って、リフレッシュしています。
大きな舞台で頑張っている姿を見せることこそ、
一番の恩返しになると思っています
八、車いすテニス以外に、密かに魂を鷲掴みにされている対象はなんですか?
日韓の女性アイドルです。もともとかわいい子がメイクを頑張ったりして努力した結果、さらにかわいくなるって最高ですよね。見ているだけで癒されます。時間があれば、ライブDVDを観たり、ライブに行ったり、カラオケで曲を歌ったり。いつも練習しているテニスコートの事務室にも私が勝手にアイドルのカレンダーを飾っているくらい、魂を鷲掴みにされています。
九、「三つ子の魂百まで」と言いますが、幼い頃から変わらない性格や癖はありますか??
私はそんなに器用なほうではありません。だから、ひとつのことに集中しなきゃと思っていることもあり、みんなが飽きてしまうようなことでも、飽きずにずっとやり続けることができるんです。テニスではコーチが出したボールをひたすら同じ場所に向かって打ち返す、球出しと呼ばれる練習があるんですが、私はそれを何百球でもずっとやり続けられます。例えば、30球連続で特定の場所にボールを入れるまで帰れないと決めたら、達成するまで全然続けられます。昔から、中途半端なところで終わっちゃうのは、自分自身すっきりしないんです。
十、東京2020パラリンピックに向けて、魂をかける思いを教えてください。
もし東京2020パラリンピックに出場できたら、これまで応援してくれた人たちには勝利という形で恩返しができればベストですよね。でも、それ以上に大きな舞台で頑張っている姿を見せることこそ、一番の恩返しになると思っています。パラリンピックでは、自分が一球一球、魂を込めて全力をプレーする姿をいろいろな人に観てもらえたら嬉しいです。
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