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パラアスリート歌絵巻

「隼の小倉理恵」への十の問い

アスリートであり、会社員であり、母でもある。
これまで仕事と子育てを両立しながら競技を続けてきた。
パラバドミントンとの出合いは、高校1年生の時だ。
自身が通っていたスポーツセンターで、初めて競技用の車いすに乗り、ラケットを握った。
そして、仲間のひとりから誘われたことをきっかけに、ダブルスのペアで国内有数の大会へ出場。2013年の国内大会では女子シングルスで優勝。2018年にはブラジルで開催された国際大会で女子シングルス、女子ダブルス、混合ダブルスのすべてに優勝し、3冠を達成。
東京2020パラリンピックでのメダル獲得が期待されている。
武器は迅速で巧みなチェアワーク。コート上を隼のように素早く動き回る小倉理恵選手へ、十の問いを投げかけた。

一、はじめて競技用車いすに乗って隼のように風を切った時、どんなことを感じましたか?

はじめて競技用車いすに乗ったのは、高校1年生の時でした。それまでは立って歩くことはできましたが、速く走ることはできなかったし、自転車も漕げませんでした。だから競技用車いすに乗って初めて風を肌で感じた時は、すごく気持ちがよくて、楽しかった。自動車などに乗っている時に感じる風ではなく、自ら動いて風を切ること自体が初めての経験で、こんなにも心地よいことがあるんだと驚きました。

二、小倉選手の、隼を思わせる早いチェアワークの秘訣はなんですか?

車いすを漕ぐ時はリズム感と呼吸を意識しています。ただ強い力で漕げばいいわけではありません。力を入れるところと抜くところがあって、グッと力を入れる時には呼吸を止めて、力を抜いた時に大きく呼吸をする。漕げば漕ぐほど自分の中で楽に速く進めるリズムがわかってくるんです。一番大切なのは、漕ぐのを楽しむことですね。

アスリートとして競技に取り組む時間が少なく、壁にもぶつかっていました

巧みなチェアワークを見せる小倉選手

三、隼を思わせる速い球を打つために、意識して行っているトレーニングはなんですか?

速い球を打つためには、力の強弱が必要です。力を入れることは簡単なのですが、意識して抜くことが難しい。力を抜かなきゃと思っていると、逆に入れてしまうことになるので、プレーをしながら意識して力を抜くトレーニングを行なっています。そもそも私はリラックスすることが苦手で、ずっと肩に力が入っていると言われます。そこで日常生活でも脱力する習慣を取り入れようと、新たにヨガや瞑想にトライしてみようと思っています。

四、プライベートで隼のように素早く行うのが得意なことがあれば、教えてください。

早く眠りにつくことが得意です。自分なりのルーティーンがあって、入浴後にストレッチをしながら、自然の中にいるようなゆったりとした音楽を聴いていると、自然に眠くなります。ストレッチは最短でも20分。長い時は1時間30分。海外遠征の時もこのルーティーンを行なっています。

五、隼は勇敢な鳥としても知られていますが、アスリート人生において勇気を振り絞って決断した出来事があれば教えてください。

現在所属するブリヂストンへの転籍です。以前の所属先では技術職としてフルタイムで勤務していたこともあり、練習は週末のみ。アスリートとして競技に取り組む時間が少なく、壁にもぶつかっていました。そこで出会ったのがブリヂストンだったんです。当初、技術職から離れることに葛藤はありましたが、今ではなによりアスリート活動を競技以外の面でも幅広くサポートしていただけることが嬉しいですね。まさにこの「CHASE YOUR DREAM」のようなWEBサイトを通して、応援してくださるみなさまに感謝の気持ちを伝えられたり、ダイバーシティの観点からいろいろなメッセージを発信できたりするようになったので、本当によかったと思います。

思い切って挑戦したことが、私らしいなと思うんです

オフィスでの普段のお仕事中の様子

六、プライベートで、最近、隼のように勇気を振り絞って行ったことはなんですか?

英会話の勉強を始めたことです。海外遠征では英語を使いますし、仕事でも英語のプレゼンテーションを聴く機会があります。そんな時に自分の意見を英語で伝えられないことがもどかしくて。学びたいと思いながらずっと先延ばしの状態が続いていたのですが、コロナ禍で自宅にいる時間が増えたので、思い切って始めてみました。毎日オンラインで先生と10分会話して、宿題を30分こなしています。始めてから3ヶ月が経ち、突発的に応えられる語彙力がついてきたように思います。次の海外遠征では、以前よりもスラスラと英語が出てきてくれたら嬉しいですね。

七、「隼は飛び方を見ればわかる=どういう人かは、その人物の行動で分かる」ということわざがありますが、ご自身の性格を表していると感じる象徴的なエピソードを教えてください。

子どもを育てながら大学に通ったことです。1年生と2年生の間に1年間休学して長男を、4年生の夏休みに長女を出産しました。不安もありましたが、前例がないからできないと思われたくなかったんです。大学に子どもを連れていったこともありますし、娘をおんぶしながら卒業研究に取り組みました。その結果、無事に卒業することができました。思い切って挑戦したことが、私らしいなと思うんです。

八、隼は、自然界で生きていくための厳しい指導をしながらも深い愛情を注いでヒナを育てますが、小倉選手が子育てをする際に大切にしていることはなんですか?

子どもの話をよく聞くことですね。今、長男が13歳で、長女が11歳。反抗期なので、子どものほうからなかなか話をしてくれなくなりました。だからこそ短い時間でもコミュニケーションはちゃんと取ろうと思いますし、子どもの意思を尊重することを大切にしています。息子は今、小説『ハリー・ポッター』とアニメ『鬼滅の刃』にハマっているので、読み終わった本を借りたり、アニメを一緒に見たりして、子どもが興味のあるものに対して自分も理解するように努めています。

"隼"の名に恥じぬよう、素早くてカッコいいプレーを見せていきたい

大好きな息子さん、娘さんとの1枚

九、ご自身が「隼の小倉理恵」と呼ばれることに対してどう感じますか?

驚きましたし、感激もしています。私自身は「隼の小倉理恵」にまだなりきれていないのではという不安もあるんですが、"隼"の名に恥じぬよう、素早くてカッコいいプレーを見せていきたいと思います。

十、隼のように大きな空を羽ばたき続けるため、今後の目標を教えてください。

パラバドミントンを通して、ダイバーシティ、インクルージョンの社会をより多くのみなさんに理解してもらうことですね。それに対して今できることは、来年に予定されている東京2020パラリンピックでメダルを獲ること。それによって、支えて下さっているみなさんに恩返しができますし、ひとりでも多くの方に笑顔になっていただけたら、スポーツの価値をより感じてもらえるのかなと思います。

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