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「自分がやらないといけない」
オリンピックを目指す覚悟に変化が――

今村駿介

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今村駿介

オムニアムに対するこだわりが人一倍強い今村駿介選手。2023年のトラック世界自転車競技選手権大会では銅メダルを獲得し、パリ2024オリンピックに向けて大きく前進しました。夢の舞台では金メダルを獲得し、正真正銘のトップになることを目指しています。

目標を達成する秘訣は「言い切ること」

― 今村選手にとって、オムニアムへのこだわりや魅力とは?

キング・オブ・エンデュランスじゃないですけど、中距離界の中では各国のエースが走るレースなので、恐らく一番強い選手が選ばれる種目。だから、そこで勝ってこそ正真正銘のトップになれると思っています。
選手としての総合力が試される競技なので、実力もそうですし、駆け引きだとか戦術的なものだとか、色んなものを兼ね備えていないと勝てないのがオムニアム。そういった部分が魅力ですね。

― こだわりが強いオムニアムですが、2023年のトラック世界自転車競技選手権大会(イギリス・グラスゴー)で見事メダルを獲得されました。年始に掲げた「世界選手権でメダル獲得」という目標を有言実行されましたね。

小さい頃から毎年、書初めをしていて、兄弟全員でその年の目標を書くんです。僕は年始に書いたら実家に送っています。2023年は世界選手権でメダルを獲る、ネイションズカップでは金メダルを獲ることを掲げていました。ネイションズカップの金メダルは叶いませんでしたが、一番大きな世界選手権でメダルを獲れたことは本当に嬉しかったですね。パリ2024に向けての選考という意味でも、リザルトを残せたことは大きな意味があったと思います。
目標を書く時には、「獲りたい」とかじゃなくて「獲ります」というように、なるべく言い切るようにしています。

― 言い切るようにしているのは意図があってのことですか?

高校の頃、弓道の先生が僕の担任だったんですけど、その先生が「言い切らないとダメだ」ってずっと言っていたんです。弓道は精神的な部分がとても大切な競技なので、そういったメンタル的なことをスポーツをやっている生徒たちに教えてくれていました。
その頃から言い切るようにしていましたし、高校3年生の時には書初めに書いた6個ぐらいの目標を全部クリアすることができました。そういう経験もあったので、今でも自分が口にする時は言い切るようにしています。

― ちなみに、高校3年生の時に書いた内容は何だったのですか?

インターハイも含めて高校での全国大会3つで全部勝つこと、インターハイの団体で総合優勝、アジア選手権で優勝、世界選手権で優勝、あとは勉強を頑張る、みたいな内容だったかな。いつも最後の方は用紙を少しでも埋めるために、宅建の資格を取るとか、英語の勉強をするとか、人間的に成長できる内容を書いていますね。これだけは少しボヤっとした感じになってしまっています......。

今村駿介選手

アクションを起こさないと、マイナスなことさえ生まれない

― 数年前までは先輩を目標にして追いかけていたと思いますが、今はもう追われる立場になりました。こういった部分で心境の変化などはありましたか?

常に誰かを目標にして、そこを目指してやっています。追い抜いたっていう感覚はないですが、やっぱりその選手は勝たないといけない相手。今は戦う舞台が「世界」なので、どんどん勝たないといけない相手が出てくるんです。
今は東京2020オリンピックで金メダルを獲った選手だったり、海外で常に表彰台に上がっている選手が倒さないといけない相手だと思っています。メダルを獲るためには、これまで憧れていたり、目標にしていた選手を倒さないといけないという環境の中で、自分自身が物怖じしなくなっていて、目標はどんどん高くなってると思います。

― 物怖じしないことが今村選手の強みのひとつだと思いますが、これは幼少期からそうなのですか? それとも作り上げてきたものですか?

作り上げてきた方ですね。最初は戦っても叶わないことの方が多いから、「勝てないんだ......」って頭がセーブしちゃって。でも、1試合1試合戦っていくことによってできることが増えていくと、「あ、叶わなくないのかな」と変化してきて、そこから「戦えるかも」「倒せるかも」「次こそは」って思えてきたんです。これって、もう気持ちの問題ですよね。
メダルのように、ちゃんと目に見えるものを得られるようになった時、それが自信につながってきて、自分の中で「気持ちでまず負けちゃダメだ」ってより明確に思えるようになりました。物怖じしなくなったのは最近になってからですけどね。

― 今村選手が普段から意識していることはありますか?

僕は周りだったり、人を見たりしてしまうので、変に理屈立ててしまうというか、自分の中で計算しちゃう部分があったんです。でも計算しても仕方ないですし、チャンスは何回も何回もあるわけではありません。その限られたチャンスで何もやらずにゼロで終わるより、何かアクションを起こさないとマイナスなことすら生まれないということをすごく感じているので、ノーアクションはやめるようにしています。

― 2020年のアワーレコードも、とにかくアクションを起こそうという思いでのチャレンジだったのですか?

そうですね。日本人としては1人目のチャレンジですし、どんなにひどい記録を出しても日本記録。いい記録を出すことができれば、それは嬉しいことなので、まずやってみようかな、と思いました。

今村駿介選手

今、目指せる最上級のものはパリ2024での金メダル

― 直近1年くらいで自分の中での一番の変化は?

オリンピックを目指す「覚悟」ですね。「このまま行けば(オリンピックに)出られるんだろうな」というようなぼんやりしていたものが、より自分事というか、「自分がやらないといけない」という主体に変化したことですね。

― 「主体」へと変化したパリ2024に向けての思いを聞かせてください。

世界選手権でメダルを獲れたことで、オリンピックへの道筋や、どうすれば金メダルに近づけるのかという成長曲線を描けています。パリ2024で金メダルを獲ることが、まずはひとつのゴール。それで終わるわけではないですけど、今目指せる最上級のものは、やっぱりパリ2024での金メダルなので、それだけに照準を合わせています。

今村駿介選手

自転車競技に活かせることはとことん貪欲に。
そして、夢は壮大に――

― 自転車競技の追求のために生体工学などの研究もしてみたいそうですが。

自転車競技は体と機材があって成り立っています。自分の体も機材も、色んな組み合わせから出来上がっているので色々考えられるんじゃないかなって思うんです。
例えばペダルにくっついている足の角度や動きだけでも考えられることが山ほどあります。だから、そういったところにもっとフォーカスしたら、また違ったものが生まれるんじゃないかなって。今ある常識じゃなくて、非常識でかけ離れたようなものにトライしてみたら、実はうまくはまるんじゃないかということをたまに思ったりするんです。今はそれをやっている暇はないですけどね(笑)。

― これまでに自転車競技以外のものから吸収したことはありますか?

スピードスケートで2022年に引退された小平奈緒さんも取り入れていた古武術を僕も取り入れています。大学の時に少し触れる機会があって、先日も古武術の先生に伊豆に来てもらいました。昔の人の、人間としてあるべき体の使い方みたいなものを自転車に落とし込めないかなと思って、自分に合っているなって思うものをウォーミングアップなどに取り入れています。

― 試合前には古武術の動きを取り入れているということですか?

はい、そうです。ちょっと恥ずかしいので、分からないような所でシレっとやっているんですけどね(笑)。

― 選手としての「今村駿介」、一人の人間としての「今村駿介」が描いている未来予想図は?

自分が5年後、10年後にどうなってるかということは全く見えていなくて、今はとりあえずパリ2024での金メダルが目標です。でもそれがゴールになってしまわないように......と思っています。
ゆくゆくは海外のロードレースにも挑戦してみたいですね。海外の舞台で日本人が活躍することは本当に稀なことなので、まずはそこに自分の名前を残して......。
あと、僕は人間力というか、自分を高めていくことが好きだし、考えることも好きなので、自転車競技を通して得たものを、また別の分野に活かしてみたいです。自転車の研究でもいいし、自転車じゃなくても、世界が良くなるための1つのピースになれればいいなと思います。すごく壮大な話になってしまいましたね(笑)。ちょっとでも何かが良くなることに貢献できたらいいなって思います。僕がこの世を去る時に、歴史に名前が残っているくらいのことをやりたいですね!

― 最後に、2024年の書初めの内容は決まっていますか?

「パリ2024で金」
それだけを書こうかな。2024年はパリ2024がメインなので、それもありですね!

今村駿介選手

PROFILE

今村駿介

今村駿介SHUNSUKE IMAMURA

1998年生まれ、福岡県出身。競輪選手だった父親の影響で幼少期から自転車に慣れ親しみ、高校入学と同時に自転車競技を始める。高校3年生の夏にジュニアトラック世界選手権(2015年)ポイントレース種目で優勝し日本人中距離選手初のマイヨ・アルカンシエルを手にした。中央大学在学中も全日本選手権優勝など数々の成績を収め、2018年チームブリヂストンサイクリングに加入。日本ナショナルチーム中距離選手として活躍する傍ら、チームではロード・トラックの二刀流をこなしている。2022年ブリヂストン・アスリート・アンバサダーに就任。

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    TEAM BRIDGESTONE 2024 in PARIS

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    ブリヂストンは、オリンピックおよびパラリンピックのワールドワイドパートナーとして、パリ2024大会を応援しています。

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