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ゴルフでオリンピックを目指せる幸せ

渡邉彩香

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渡邉彩香

ブリヂストンがジュニア時代からサポートしている渡邉彩香選手は、プロゴルファーでありながらオリンピックを特別な舞台と位置づけていた。そんな熱い思いを見透かしたかのように、リオデジャネイロ2016オリンピックでは112年ぶりにゴルフが復活。代表争いでの苦い経験も、すべては東京で金メダルをとるための試練と受け止め、2020年を見据えて前進する渡邉選手の今。

子どもの頃、順位より飛距離で負けるのが悔しかった

渡邉彩香選手

リオデジャネイロ2016オリンピックで、112年ぶりに正式種目に復活したゴルフ。そのことを人一倍喜んでいたのが、プロゴルファーの渡邉彩香選手だ。
「ゴルフは海外メジャーのほうが有名かもしれませんが、私はオリンピックを目標にしている人がたくさんいる、埼玉栄高校で学生時代を過ごしました。スポーツは観るのも大好きで、リオ以前のオリンピックは本当に観戦専門でしたけど、みんなと一緒に自分もそこを目指せるようになったのは、幸せだと思います」

現在プロ5年目。172cmの長身を活かしたショットから繰り出される飛距離が最大の武器といえるが、9歳でゴルフを始めて間もなく、その片鱗を早くも覗かせていたようだ。

「ゴルフを始めたのは、父が家族4人でプレーをしたかったからなのですが、家族のなかで私だけ体が大きくて、最初から飛距離を出せたんです。誰よりも遠くに飛ばせることの楽しさは、小さいときから感じていて、順位で負けるよりも、距離で負けるほうが悔しかったんです(笑)。『飛ばせ、飛ばせ!』と周りからも煽られて、調子に乗ってドライバーをブンブン振り回していたらどんどん飛ぶようになったのが、今のスタイルの始まりかもしれません」

渡邉彩香選手

2008年の日本ジュニアゴルフ選手権女子12~14歳の部で優勝し、高校は地元の静岡ではなく、先述した埼玉栄高校に進学。さまざまな種目にアスリートを輩出している名門校だが、渡邉選手はここでスランプと呼べる状態を初めて経験することに。
「中学までは自分の思うように結果を出せていたのですが、高校は全国大会で優勝するのが当たり前といえるような人ばかりで。刺激になったぶん、焦りもあって思い通りのゴルフができず、プロにはなれないかもしれないと悩んだ時期もありました」

そこから脱却するきっかけとなったのが、高3のときに立役者となった全国高等学校ゴルフ選手権大会での団体優勝。同校が優勝するのは、実に22年ぶりの快挙だった。
「ゴルフは個人競技ですが、埼玉栄高校に入った理由のひとつが団体戦をやりたかったからなんです。全国優勝するのを目標に3年間やってきて、最後の夏に達成できたとき、プロになろうと決意しました」

渡邉彩香選手

応援してくれる人を喜ばせるのがプロの仕事

渡邉彩香選手

プロになってからの活躍は多くの人が知るところだが、今は「毎試合が楽しい」と笑顔を見せる。

「プロとアマチュアの違いは、私の結果により多くの人が一喜一憂してくれること。プロで初めて勝ったとき、こんなにも喜んでくれる人がいるんだと驚いて、応援してくれる人を喜ばせたい、そのためにもっと勝ちたいと思うようになりました」

2017年度のLPGA(日本女子ゴルフ協会)ツアーは、全38試合。勝ったときの喜びは格別だけれども、思い通りの結果が出ないときももちろんある。どのスポーツにも当てはまることだが、ゴルフは特にメンタル面がプレーに影響しやすいスポーツといわれている。渡邉選手は長期にわたるシーズン中、集中力を途切れさせず、自らの理想とするゴルフに近づくために、勝ちにはこだわるけれども、成績そのものに一喜一憂せず、切り替えることを常に大事にしている。

渡邉彩香選手

「ゴルフはありがたいことに、前の結果が悪くてもゼロからまたスタートできるので、毎週のように優勝するチャンスがあります。反対に調子がよかったからといって、次も勝てるわけではないのですが。出場する人みんなに同じようにチャンスがあるのが、いいところですね」

調子がよくても過信せず、悪いときも引きずらない。

「そうは言っても調子が悪いときには、闇雲に球を打ち続けるときもあるし、逆に友だちとご飯を食べに行ってワイワイ騒いでリフレッシュするときも。いろんな過ごし方を試しているところです」

頭でわかっていてもなかなかできず、切り替え方は現在も格闘中だというが、渡邉選手のその朗らかで前向きなところも、ゴルフという繊細かつダイナミックなスポーツをやるうえで、追い風となってくれているのだろう。

あのときの涙を笑顔に変えるために

渡邉彩香選手

「今は東京2020オリンピックが自分のなかでの最終的な目標になっています。できる限りの力を注いで、やれることは全部やろうと思っている

東京2020オリンピックにこれほどこだわるのは、リオ2016大会代表の座を僅差で逃してしまった昨年の経験も大きいに違いない。代表争いの重要な舞台となった全米女子オープンの最終ホール。逆転のチャンスが回ってきていたものの、残り65ヤードで放った第3打は非情にも池に消えた。
「普段の試合では味わえない緊張感で、オリンピックの切符がかかっていなかったら、きっとミスしなかったと思います。失敗したショットは、この先いいことがあっても悪いことがあっても、たぶん忘れられないです......」

渡邉彩香選手

ホールアウト後はこらえきれず涙を見せたが、あの経験は渡邉選手に何をもたらしたのだろう。
「1年以上経ちましたが、距離も精度もすべてをレベルアップさせたいと思うと、やらなければいけないことが多すぎて、あっという間に過ぎてしまいました。でも少しずつ整理ができてきて、ダメなところだけでなく、いいところにも目を向けようと最近思えるようになってきました。オリンピックなんてまったく届かないような順位から、あそこまで上がることができた事実も認めなきゃって。あんな状況がもしまたあったら、次は絶対にバーディをとる自信があるし、東京大会で代表争いになったときに生きてくる経験だと信じています」

みんなをワクワクさせられるようなアスリートになりたい、と渡邉選手は言う。2020年の大舞台で多くの人を熱狂させるプレーを、彼女ならきっとしてくれるはずだ。

渡邉彩香選手

PROFILE

渡邉彩香

渡邉彩香AYAKA WATANABE

1993年生まれ、静岡県出身。両親の影響で9歳からゴルフを始める。2012年にプロテストに合格。2014年にツアー初優勝。翌年には2勝をマーク。コロナ禍の2020年シーズン開幕戦となる「アース・モンダミンカップ」で5年ぶりの優勝。2022年「ほけんの窓口レディース」ではプレーオフで15メートルのバーティ―バットを決め5勝目を挙げる。ギャラリーを魅了する豪快なドライバーショットにさらに磨きをかけ、国内メジャー初勝利、そして初の賞金女王も目指す。

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    宮里藍✕渡邉彩香✕松田鈴英 スペシャル対談

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    東京2020オリンピックへの想いやその先の未来への夢とは。

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