みんなの夢会議 in 横浜 イベントレポート
11月16日(土)
ブリヂストン 化工品技術センター/横浜工場
新厚生会館1F・2F体育館
パラリンピックから学ぶ「できない」を「できる」に変える力
パラリンピックの魅力を伝えることで、多様性・共生社会に対する子どもたちの意識強化につなげたい。「できない」を「できる」に変える力を知ってほしい。そんなブリヂストンの想いが込められたイベントが「みんなの夢会議」です。第2回目となる今回は2019年11月16日(土)に横浜で開催。ゲストに、トライアスロンで活躍するパラリンピアンの秦由加子選手とオリンピアンの上田藍選手を迎え、世界トライアスロンシリーズ横浜大会組織委員会事務局や戸塚区役所等 の後援のもと、トライアスロン体験を実施しました。
子どもたち27人の「夢会議」
プログラムは「①出会う」「②知る」「③触れる」「④考える」という4つのパートからなります。①オリエンテーションからはじまり、②秦選手と上田選手のクイズ形式によるトライアスロンやパラリンピックに関する解説、③屋内でのパラトライアスロン体験(目隠しウォーキング・車いすロードレーサー)と屋外でのトライアスロン(ミニデュアスロンレース)体験、④そして最後には「色々な人が暮らしやすい街」を考えるワークショップを実施しました。この日集まったのは横浜市戸塚近隣に住む27人の子どもたち。秋晴れの中、ブリヂストン横浜工場の内外を会場に頭と身体を目いっぱい使って楽しみながら学ぶ一日になりました。
「①出会う」&「②知る」
"Yes, I can"から全てははじまる
子どもたちは会場に入ると、設置されたテーブルに座って3つのグループに分かれます。それぞれのグループで初対面の自己紹介を終えると、障害のある人たちの驚愕のパフォーマンスの映像に目を奪われます。足にスティックを持った腕のないドラム奏者の演奏、激しく車いすでぶつかり合うラグビー選手、両足が義足の短距離ランナー――。世界各国の"超人"たちが次々と登場します。
上映後、映像の中で何回も流れたフレーズ『Yes,I can』の意味を尋ねられた子どもたちは「そうだね」「いけます」などと答えます。すると司会者は「どちらも合っている。私はできる、という意味ですね」。パラリンピアンは「できない」を「できる」に変える人たちだとこのイベントのメッセージを子どもたちに伝えます。
クイズでは、パラリンピックがどんな大会であるか、どんな競技であるかなどを説明。秦選手と上田選手が登場すると、二人からはトライアスロンを構成する3つの種目に①スイム②バイク③ランがあること、その種目間ごとに乗り換える「トランジション」の重要性などが伝えられます。
上田選手「(トライアスロンの種目の中で)私が一番得意なのはランニングです。だから後半追い上げて勝つパターンがほとんどです。レースの序盤は得意なランニングでどうやって勝負するかを、コバンザメのように前の選手に付いて走りながら考えています。苦手な種目はいっぱい練習すればその分伸びしろがあります」
では、パラアスリートはどうやってトライアスロンをプレーしているのか。秦選手が目に障害のある人のケースを例にして話します。
秦選手「目に障害のある選手にはガイドと呼ばれる人がサポートしています。ガイドはランやスイムの時は選手とロープでつながり、選手に声をかけて一緒に競技に参加しながらサポートしています。ただしガイドが選手を引っ張ってゴールさせたら失格になる。選手がちゃんとフィニッシュテープを切っているかというのも見ていてくださいね」
バイクパートでは手で車輪を回す「ハンドバイク」という機材もあり、車いすの人でも参加することができます。上田選手からは「秦選手の義足を見てほしい。パラトライアスロンはアイテムに選手ごとの工夫があり、すごくかっこいい」という言葉もありました。パラリンピックでは、目が見えない人でも足に障害のある人でも平等にトライアスロンに挑戦できる。子どもたちは素直な眼差しを向けながら二人の話に耳を傾けていました。
③触れる−1
パラリンピアンってどんな気持ちで競技してるんだろう?
会場を2階の体育館に移すと、車いすの選手などがランパートで使用する車いすロードレーサーと目隠しウォーキングを体験します。車いすロードレーサーに乗った子どもたちからは驚きと同時に「面白かった」「速かった」という声があがります。最初は少し緊張していた様子の子どもたちも競技体験を通して表情が和らいできます。
目隠しウォーキングはガイド役と選手役の2人1組ペアで実施。アイマスクを着用した選手役とガイド役の2人でロープを持ちながらコースを2周します。1周目はガイドによる声かけなしで、2周目は声かけありでその違いを体験しました。1周目は恐るおそる足を踏み出していた選手役の子どもも、2週目になるとガイドの案内に従って歩行スピードが早くなります。それでも途中、障害物として置かれたマットにつまづく姿も。子どもたちと伴走していた秦選手はガイド役の子どもに「具体的に説明することが大切だと分かったよね」と伝えます。視覚障害の選手はどんな状況で過ごしているのか、どんな声がけが必要なのか。子どもたちが身をもって体験できるプログラムになりました。
③触れる−2
本気で走り回った、白熱のトライアスロン体験(ミニデュアスロン)
身体が温まってきたところで今度は屋外に飛び出します。トライアスロンのスイムパートをランに代えた、第一ラン→バイク→第二ランからなる「ミニデュアスロン」の体験レースを行いました。
心地よい秋の陽ざしが降り注ぐ中、予行練習の段階から子どもたちは大はしゃぎ。いざレースになると本気の顔になります。
第一ランでトップに躍り出た子どもも、バイクのトランジョンに手間取り、第二ランでは三番手になるシーンもありました。しかしゴールまで数十メートルの最後の直線に差しかかると、そこに待ち構えるイベントスタッフや保護者とハイタッチを交わしてフィニッシュ。その表情には、やり切った清々しさが溢れています。
④考える
みんなが暮らしやすい「夢の街」をつくろう
頭と身体でパラリンピックとトライアスロンを感じた最後は、室内に戻りワークショップです。「みんなが暮らしやすい街はどんな街だろうか」を子どもたちと考えました。テーブルの上に広げた街のマップを見ながら「どこ」で「どんな人」が「どんな困りごと」に直面するかをワークシートに書き出していきます。そこで出てきた困りごとを今度はどうすれば解決できるかを言葉や絵にしていきます。
「車いすにモーターとバネ機能をつけて階段を自動で上れるようにする」 「車がきたときに音を鳴らす機能をメガネに付ければ、目が見えない人でも安全」
「日本語が話せなくても、AIで自動翻訳できれば病院で症状を説明する時に困らない」
実践的なアイデアがさまざま出てきます。子どもたち同士、いいと思った言葉や絵が描かれたワークシートには「いいね!」印のシールを貼り合います。
大盛況の中、上田選手と秦選手が会を締めくくります。
上田選手「私も世界で戦っているので、英語やスペイン語がわからなくてどうしようかということがあります。でも、そういう時には助けてくれる人がたくさんいました。みんなも今日はどういう時に、どういう人が困っているかというのを考えたよね。だから周りに困っている人がいたら助けてほしい。そうやって行動に移すことが困っている人の生活を明るいものにします」
秦選手「私、ロボットみたいですよね。だけど今日、みんなは恐いとか、何あれという目をしていなかった。走るための義足を見てもらって『カッコいい』とか言ってくれたのがすごく嬉しかったです。足がなくても義足で堂々と生きていけばいいと私は思っているので。もしかしたら、みんなの手足が不自由になったり、お父さんお母さんの目が悪くなったりするかもしれない。でもその時には、相手が何に困っているかというのを見つけて助けてあげれば、その人はいろんなことができるようになります。だから万が一何かあっても、私みたいに走ったり、いろんなことがまだまだできるという可能性を信じてほしい。諦めないで」
子どもたちが記入したアンケート用紙には「ものすごい楽しかった」「パラリンピックはすごい」「東京2020をもっと応援しようと思った」という感想を見つけました。満足そうに帰る子どもたちの姿が、微笑ましくも頼もしく映りました。
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