・データサイエンティスト×ブリヂストン DX人材が創出する新たな価値 Vol.4デジタルAI・IoT企画開発部 デジタルAI開発課 倉元 俊輝

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ブリヂストンでは、DX(デジタルトランスフォーメーション)によって、これまで現場で長年培われてきた強い「リアル」に「デジタル」を組み合わせることで、「より大きなデータで、より早く、より容易に、より正確に」をテーマとして、「断トツ商品」・「断トツソリューション」の開発、展開に繋げることを目指しています。その鍵を握るのが、社内で活躍するデータサイエンティストたち。その挑戦と描く未来像について話を聞きました!

他者の視点に立つことが、データサイエンティストの第一義

――現在の部署に配属されるまではどのような経験を積んできましたか?

2011年に新卒で入社しました。学生時代は社会心理学を専攻し、修士課程では統計学を活用して非言語コミュニケーションを定量的に示す研究をしていました。修士課程での学びを活かす仕事がしたいと考えていましたが、当時はリーマンショック後の就職氷河期。安定性があり、かつグローバルビジネスの成長性を強く感じたブリヂストンに内定をいただいたときはホッとしました。
配属された海外事業部では、北中南米向けのタイヤ輸出管理や子会社の事業管理を担当しました。入社4年目にアメリカに渡り、多国籍な現地スタッフの元で約2年間を過ごしました。
この期間はとても刺激的で、キャリアの中での1つのターニングポイントになりました。次のステップを考える中で「海外での仕事の経験や修士課程での学びを業務に活かしていきたい」という気持ちがより強くなり、社内公募制度に手を挙げ、2019年からデジタルAI・IoT企画開発部の一員となりました。

――海外勤務ではどのような学びを得ましたか?

さまざまな視点で物事を考えることの大切さです。2年間のうち、1年目はアメリカ国内の流通や販売など管轄する経営チームの元でビジネスプランニングを、2年目はタイヤ販売を担うグループ会社で現場の管理業務をしました。経営層と現場、両方の視点を経験し、ビジネスを進めるには、自らの専門性を生かしつつ、多角的な視点で物事を見つめることが大切だと実感しました。
この学びは今でもさまざまな場面で活きています。例えばプロジェクトが行き詰まった際、ユーザーとの視点のずれや、そもそも固定概念に捉われていないかなど、違った角度から考え直すことで問題点を炙り出せるようになりました。

グローバル会議での会食の様子

アメリカのチームと連携し、検知モデルの構築に励んでいます

――現在はどんなお仕事をしているのですか?

デジタルAI・IoT企画開発部では、デジタル技術を活用し、各事業部が抱える課題の解決や新たなビジネスの創出に取り組んでいます。その中でも私は、タイヤにセンサーをつけて内圧の変化をデータ分析し、早期に異常を検知するモデルの構築に注力してきました。何らかの異常によって空気がゆっくりと抜けてしまう「スローリーク」という現象をできるだけ早い段階で検知するため、アメリカにあるグループ会社のデータサイエンスチームと連携しながら研究を進めてきました。

――特に苦労した点を教えてください。

「スローリーク」の定義付けが大きな壁でした。パンクのように一度の大きな外傷はセンサーで捉えやすいのですが、「スローリーク」は少しずつゆっくりと内圧が変わっていくため、異常を検知することはとても難しいんです。まずはどのような数値の変化が「スローリーク」なのか? という定義付けをするために、データを一つひとつ、根気よくチェックしていきました。3カ月ほどかけて内圧の変化を7パターンに分類し、アメリカのチームに共有。検知モデル構築の土台をつくることができ、達成感は感慨深いものがありました。
DXは「データがあればスマートにシステムが構築できる」といったイメージが強いかもしれませんが、実はシステム構築前の準備段階に大きな時間と労力がかかっています。しかも、そのプロセスをきちんと踏めているかどうかで成果は変わってしまうんです。時間をかけて愚直にデータと向き合う大切さを身をもって感じたプロジェクトになりました。

自己実現を果たせる環境

――ワークライフバランスは取れていますか?

個人的には「ワークはライフの一部」だと捉えています。ワークかライフかではなく、ワークも趣味も勉強もいろいろな選択肢が等しくライフの中に内包されているイメージですね。何かに行き詰まっても他の選択肢にすぐ切り替えられますし、いつも新鮮な気持ちで物事と向き合うことができるんです。ワークスタイルはリモートが中心で、出社は週に一回程度です。リモートワークが定着してからは、短時間で集中して物事を進められるようにタイマーなどを有効活用して過ごしています。週末は映画鑑賞やフットサルなど趣味の時間を充実させるとともに、データサイエンスの勉強にも励んでいます。

アメリカ赴任時に同僚と趣味のサッカーをしているときの様子

――業務の時間外でも勉強の時間を設けているのですね。

はい。ブリヂストンは資格や博士号の習得、外部との共同研究などを通じて自分の価値を磨く「リスキリング」を推奨しており、必要に応じて費用などもサポートしてくれます。私もその制度を利用して、自然言語処理システムに関する東北大学との共同研究に参加しています。データサイエンスに対する知識がより一層深まっているなと感じますね。

仕事を「点」ではなく「線」で捉える

――倉元さんが大切にしていることを教えてください。

仕事を「点」ではなく「線」で捉えることです。DXは「システムをつくっておしまい」ではありません。構築後の運用や期待した精度が得られなかったときのブラッシュアップを考えることもデータサイエンティストの大切な役割です。ユーザーは何を求めているのか? 使い勝手が良いシステムになっているか? システムの先を見据えた構築を、今後も意識していきたいですね。
また、DX技術の進化は目覚ましいので、学び続ける姿勢も大切にしています。理想として目指しているのは、多角的な視点と専門的な技術を持ち合わせた人財になることです。システム開発に必要なアルゴリズムを構築するスキルを核としながら、ビジネスを上流から下流まで支援できるようなスペシャリストを目指し、自己研鑽を続けていきたいと思います。

――ブリヂストンでデータサイエンティストとして働く魅力を教えてください。

私は元々文系の出身なのですが、ブリヂストンはDX人財を育てようという意識がとても強く、成長し続けられる環境だと感じています。
また、私たちの部署ではタイヤに限らずさまざまなデータを取り扱います。例えば商品企画に活かすためにクチコミの内容を分類するシステムを開発したことがありました。自然言語処理で「ポジティブ」「ネガティブ」「性能」「サービス」などに分けたところ、担当者からも好評で、私自身もビジネス創出の可能性を感じました。タイヤにまつわるビックデータはもちろん、多様なデータに携わりながら今までにないシステム開発に挑戦できることも大きな魅力だと思います。