「タイヤの走行音を減らす消音器」とは?開発した人に聞いてみた。

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今回は楽しいドライブを足元から支えるブリヂストンの「静かなタイヤ」に活用されている消音技術について、技術開発を担当したエンジニアに話を聞いてみました。

■消音技術を開発したブリヂストンのエンジニア
当社の赤司社員は、今も最新の商品に使われている、タイヤの騒音性能を向上させる技術の1つの原型を開発しました。現在は、タイヤの摩耗性能を向上させる技術開発を担当し、「接地を極める」当社のエンジニアの一員として業務に取り組んでいます。

(株)ブリヂストン 次世代技術開発部 摩耗技術開発課 赤司篤政(あかしとくまさ)
■タイヤの走行音

赤司「タイヤには雨の日でも安心して車が走ることができるように溝があります。この溝のおかげで接地面とタイヤの間の水を取り除くことができるのですが、太い溝で気柱管共鳴が起こることで管楽器のように音が発生します。これがタイヤの走行音の要因の一つとなります。」

■気柱管共鳴を抑えるためには?
上が消音器無し、下が消音器有りの体感模型

赤司「音は空気を振動させて伝わるという物理の大原則に基づき、音の共鳴の原理を上手く活用できないかという事に至りました。そこで提案したのが、ヘルムホルツ型消音器を応用することでした。」

■消音器の原理

赤司「ヘルムホルツ型の消音器は、ビンの口に息を吹きかけると、吹きかける強さや角度によって音が響くようになる現象を応用して、気柱管共鳴の音が打ち消される原理を利用しています。実際に形にしてみると、消音器のない筒に耳を当てたときは、『ヒュー』という音が聞こえますが、消音器のある方は、音が聞こえません。」

■消音器をタイヤに搭載
「REGNO GR-XⅡ」の地面に接するトレッド部

赤司「実際のタイヤ開発においては、走行音以外にもハンドリング性能や摩耗性能等、さまざまな性能を考慮する必要があり、消音器を数多く設置すればいいというわけではありません。できるだけ少ない数の消音器で走行音を低減でき、摩耗性能やハンドリング性能につながるパタンの剛性を維持するためにも、一つの消音器が二つの溝に対して効果を持つよう配置を工夫しました。消音効果と他の性能のバランスを考えながら、設計者と何度もシミュレーションや実験を重ねて形にしました。」

■タイヤにはエンジニア達の技術と想いが詰まっている

赤司「ブリヂストンでは、基礎研究、材料開発、構造設計、ものづくりの技術、市場の情報を開発にフィードバックする技術サービスなど、各領域を担当するエンジニアが情熱を持ち、チームワークでそれぞれの技術を結集してタイヤを開発しています。そして、若手・ベテラン隔てる事なく一人ひとりの意見や提案を大切にする風土があります。当時は経験の浅い若手だった私が提案した消音器をフラッグシップ商品に適用してくれたチームメイトにはとても感謝しています。今年の2月に発売されたSUV用タイヤの新商品「ALENZA LX100」にも私の提案した消音器の進化版が搭載されているので、多くの方にお試しいただけると嬉しいです。」