コンセプトカーの足元にタイヤの未来が見える

SHARE

タイヤはクルマの性能を左右するとても大事な部品のひとつです。ひと目みただけではどれも同じように見える”黒くて丸いゴム製品”ですが、その設計・デザインはグリップ性能や排水性能、そして燃費向上に貢献する転がり性能など、安全・安心のドライブを実現するための様々な技術を取り込んだものになっています。これは市販されているタイヤに限らず、モーターショーで注目を集めるコンセプトカーに装着されているタイヤでも同じです。

「モーターショーの華といえばコンセプトカーですが、その足元を見てみればとても面白いデザインのタイヤが装着されていることに気づくでしょう」と話すのはブリヂストンでタイヤのデザインを担当する木脇幸洋。実はブリヂストンでは世界各地で行われるモーターショーにむけて各自動車メーカーから依頼を受け、コンセプトカー各車のタイヤデザインも行っています。今回の東京モーターショーのコンセプトカーでは、世界中から注目を集めているトヨタの新ジャンルのクロスオーバーコンセプト「Tj CRUISER」や、マツダの魂動デザインの深化を表現した次世代デザインビジョンモデル「マツダ VISION COUPE」、SUBARUのハイパフォーマンスカーの将来像を示すコンセプトモデル「SUBARU VIZIV PERFORMANCE CONCEPT」といったクルマの足元にも、ブリヂストンがデザインしたタイヤが装着されています。

「各自動車メーカーのデザイナーたちは、それぞれのコンセプトに基づきリアリティとショーアップの双方を巧みにバランスさせながらコンセプトカーを作り込んでいきます。私たちタイヤのデザイナーもそのクルマにふさわしいタイヤとなるよう、斬新な表現のなかにもきちんと機能を考えたリアリティのあるデザインを行うよう心がけています。似ている言葉ですが、「機能」と「機能感」のバランスをとることが重要だと考えています。実はこのプロセスは、市販用タイヤをデザインするときも同じです。「機能」だけを追求すると、タイヤのパタンや見た目からそのタイヤの持つ特徴を感じ取ることが難しいケースがあります。そこにデザインとして「機能感」を加えていきます。例えばスポーツ系のタイヤでは、少しエッヂの効いたラインを盛り込んで「速く走れそう」という「機能感」を加えてみたりします。コンセプトカーのタイヤはその「機能感」の比重を重くしてデザインしているのです。そういったバランスをどのようにとるかといういつもとは異なるやりがいがありますし、カーデザイナーと一緒に仕事ができるという点もとても面白いものです」。

デザイン開発の過程では自動車メーカーから『タイヤのデザインにも未来を表現して欲しい』というオーダーがくることもあるといいます。こうしたリクエストに対し、「機能」と「機能感」をタイヤデザイナーたちは通常とは異なる視点からアプローチしその答えを探っていきます。するとこのプロセスのなかで次世代の市販タイヤデザインに役立つ全く新しい表現や機能を見つけられることもあるようです。今回の東京モーターショーに展示されているコンセプトカーのタイヤをじっくりみていくと、もしかするとそのなかに未来のタイヤに使われる新たなデザインがひっそりとお披露目されているかもしれません。モーターショーの会場ではぜひそれぞれのコンセプトカーに装着されているタイヤにも注目をしてみてください。