「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」 を支えるブリヂストンタイヤ

国内外のレースで活躍する一流選手ですら、「いつ死んでもいいように覚悟していく」と言う過酷な自動車レースがあります。それが「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」です。

通称「ニュル」、「ニュルブルクリンク24時間耐久レース」って?

毎年初夏にドイツのニュルブルクリンクで開催される、24時間耐久レース。市販車をベースにカスタマイズされた約200台のマシンが、24時間でどれだけ長い距離を走れたかを競い合う。コースは1周25㎞。20㎞の北コースと5㎞のグランプリコースの2つのコースをつなげて行われる。

ニュルのここが怖い!!

その(1) 息つく間もないコーナーの数々
真っすぐした道が少なく、コーナーが174ヵ所もあるため。息をつく暇もありません。

その(2) 気候変動が激しい
山間部にあることからコース内だけでも300mの高低差があります。天候や気温の変化が激しく、日中と夜の寒暖差、雨のほか、時には雹にも警戒しなくてはなりません。

その(3) 狭いコースにひしめくレーシングカー
こんなに険しいコースをなんと200台前後が絡み合うように走り抜けます。選手は常に接触の危険にさらされているのです。

この過酷なレースで活躍する日本人選手がいます。2016年にTOYOTA GAZOO Racing With TOM'Sから参戦した大嶋選手、井口選手。今回は、東京オートサロン2017のブリヂストンブースで開催されたお二人のトークショーの一部をご紹介します。「ニュル」の魅力、そしてレーサーの見ている世界とは?

[大嶋和也選手プロフィール]

ニュルブルクリンク24 時間耐久レースに2010年より6年連続して出場。2016年はSP-PROクラスで優勝した。
2017年はSUPER GT 500クラスに出場。

[井口卓人選手プロフィール]

ニュルブルクリンク24時間レースに、2012年に初参戦。2012、2014、2015、2016年とクラス優勝を果たした。

「部屋を片付けてから出国する。いつ死んでもいいように覚悟していきますね。」

こう告白したのは、井口選手。やはりレースを前に「恐怖」を感じずにはいられないようです。

井口選手
「初めて走った時はすごいところに来てしまったと思った。走りたくなかったですね。だけど一周走るとどんどん楽しくなってくる。楽しいけど行ったらダメ(危ない)だろうなっという、(自分の恐怖心との)闘いがすごく難しかったです」。

大嶋選手
「ここ一発というところでは、気合を入れて叫んでからでないとコーナーに飛び込んでいけません」。

また、日の差し加減など、一層の危険を感じることも・・・

大嶋選手
「暗くなりかけの時にライトをつけるんですが、目が慣れないために、ライトがついているように感じないんです。すごい見えなくなる時間帯がありますね。」

井口選手
「(危ない瞬間をやり過ごし)よかったぁー」と思う事もありますね。雨も降れば雹も降る。日本では考えられないようなことが起こるので、ドライビングの幅が広がりました。」

「タイヤはニュルブルクリンクで一番大事な要素」

両選手が感じる、ニュルブルクリンク24時間耐久レースに臨むにあたってのポイントとは?

井口選手
「レースを闘うにあたって、マシンのセッティングの重要性はさることながら、タイヤがとても重要だと思います。」

大嶋選手
「広く使われている市販車のタイヤは、摂氏0度から40度ぐらいまで対応しているものです。一方、僕らが使うタイヤは10度気温が変われば合わなくなる精緻なものです。このレース(ニュルブルクリンク)の難しさは、朝の気温が10度でも昼間は30度を超えてくるほど気象変動が激しいことですね。このギャップが生み出す負荷に耐えてくれるタイヤが必要なんです」。

▲雨のニュルブルクリンクを駆けるブリヂストンのタイヤ

刻々と気象条件が変動する24時間耐久レースだからこそ、温度などによって状態が変化しやすいタイヤの性能がレースを左右します。ブリヂストンのタイヤが信頼を寄せられている理由は、実際にニュルブルクリンク・サーキットを使って研究開発を行っているから。しかし、歴史を紐解いていくと、同サーキットをテストコースに使い始めたのは別の目的がありました。

「ニュル」で欧州への道を拓く

ブリヂストンの同サーキットでのタイヤ開発は、もともと欧州の高性能車の新車装着タイヤに採用されることを目指してのものでした。

ブリヂストンの世界展開。狙うは欧州
現在、ブリヂストンのタイヤは世界中のメーカーの自動車に新車装着されています。しかし、1980年代の欧州においては、ブリヂストンの知名度はまだ低く、これを覆すために高性能車の新車装着タイヤに指定されることが重要でした。ドイツでは事故の際に、新車装着される標準タイヤでないと保険が適用されない場合もあるほど、高性能車の新車装着タイヤに承認されることは、タイヤの性能を保証するお墨付きを得ることを意味します。

最高の難関「ニュル」。
ヨーロッパの自動車メーカーから承認を得るために、避けては通れないテストコースがありました。それが、既にレースの難所として有名になっていた、ニュルブルクリンク・サーキットでした。ヨーロッパの多くの自動車メーカーがここでテストを行っており、ブリヂストンもポルシェ向けのタイヤ開発の中で、その存在に出会いました。

そこで生まれた高性能タイヤ
当初の開発拠点は近くの民家で借りたガレージ。そこからブリヂストンの「ニュル」での挑戦がはじまり、国内タイヤメーカーとして初めてポルシェやフェラーリの新車装着タイヤに承認されることになったのです。現在も、この世界一の過酷なサーキットで、レース用タイヤや乗用車用の高性能タイヤの開発を続けています。

2017年のニュルブルクリンク24時間耐久レースは5月25~28日に開催されます。お楽しみに!

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