春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
2016年4月2日 午前6時 袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ。
房総半島の春の朝焼けのなかに山田宏はいました。
2016年の山田宏のシーズンは新しくリニューアルした「BATTLAX走行会」からスタートです。
BATTLAX走行会は、2016年からリニューアル。
サーキット走行をしてみたいというビギナーやレディースクラスも新設し、初心者の方も参加しやすいような走行会となりました。(これまで通りのPRO SHOP走行会も実施しています。今後のスケジュールはこちら)
山田は、このBATTLAX走行会でHiroshi’s キッチンをすることにしました。
以前から試作を重ね、この日のために仕込みも行い、好評の「Motu2 (モツ煮)のトリッパ」を用意して袖ケ浦にやってきたのです。
ところが、いきなり大事件の発生です。
「なに??仕込んだ食材をタクシーに忘れてきた?」
「はい、すいません、、、うっかりしてて。。」
「うっかりって、、ええ?! どうすんだよ~。Facebookでもオレが手料理作りますよ、って告知しちゃったんだよ。
え~? きっと、みんな楽しみにしてんだよ。どうすんだよ~、まいったなあ」
午前6時30分、参加者たちが続々と袖ヶ浦フォレスト・レースウェイにやってきます。
山田の顔をみるやいなや、人気者の山田には参加者が声をかけてきます。
「山田さん!Hiroshi’sキッチン、楽しみにしてきました!」
「うっせえなあ。ねえよ。」
「え?」
すっかりご機嫌を損ねてしまった山田は参加者につれないばかりか、なんといきなり帰り支度を始めます。
「えー、ご来場者の皆々様。まことに申し訳ございませんが、本日のHiroshi’sキッチンは中止となります!山田もこれから帰りますので、悪しからず!」
周囲がざわめくなか、そんなとき、受付にやってきたひとりの女性が山田に声をかけてきました。
「山田さん!バイクキュレーションマガジン「LAWRENCE」の記者をやってる先川知香と申します!
山田さんのお料理が楽しみで早起きしてきたんです!今日はよろしくお願いします!」
「よし、決まった!なんか作るぞ!さ、お嬢さん、さっさと受付してきなさい。
お昼は特別にうまいもん作ってやるから!」
「はい!じゃあ走ってきま~す!お昼が楽しみー!」
あまりの態度の違いに一同はびっくり。
「よし、じゃあ、オレ、ちょっくらレストラン言って挨拶してくるわ。」
山田はそう言うと、さっそくレストランの厨房に駆け込みました。
このレストランは最終コーナー近くにあり、窓から最終コーナーへと向かうコースが一望できます。
BATTLAX走行会の参加者の走りを窓の外を眺めながら山田は、即興でレシピを考えます。
BATTLAX走行会は、サーキット走行経験の豊富なライダーだけでなく、初心者に近い「ビギナークラス」と女性も参加しやすい「レディースクラス」を新設。
サーキット走行が初めてというライダーにとっても、参加しやすい走行会となっております。
マシンの走行前チェックからライディングポジション、走行中の目線やブレーキングなどの座学、クラス専用コースを使った実地練習、レーシングコースを使った走行(20分間×3本)など、初心者にとっても充実した内容となっており、サーキット走行の初心者でもすぐに走行に慣れるように手ほどきを受けることができます。
レディースクラスでは井形ともさんをはじめとする「チームマリ」のコーチ陣が指導にあたります。
また、この日はスペシャルゲストも登場!
全日本ロードレース選手権JSB1000にて4連覇を達成したチャンピオン、中須賀克行選手と一緒にコースを走るというイベントもあり、走行会参加者にとっては夢のようなひとときとなりました。
「よし、できた! Hiroshi’s キッチン・オリジナルブレンド「HIRO風 チキン&ポーク配合団子汁」よ!」
「わあ~、すっごくおいしそう!」
先ほどの彼女が午前のコースを終えてやってきました。
「お、おつかれさん!走りつかれた体にしみこむよ。しょうがは入っているけど、しょうがねえ~。。。なんつって」
「やだ、山田さん、バカみたい(笑)いい意味でくだらなくて、私、そういうの大好き。」
(ちくしょう、この娘、かわいいじゃねえか)
「 HIRO風 チキン&ポーク配合団子汁」は走行会参加者にも大好評!
あっという間に完売御礼となりました。
そして山田は、BATTLAX走行会の目玉のひとつ、ゲストに中須賀克行選手を迎えたトークショーに宮城光さんとともにも参加します。
時折ジョークも交えつつ、今日も山田のトークが冴え渡ります。
トークショーが終わると、彼女が駆け寄ってきました。
「おつかれさま!トークショー、おもしろかった!あ~あ、山田さんみたいに料理が得意でおもしろい男、どっかにいないかなあ。」
山田はちょっと照れくさそうに、でも、冗談交じりに言いました。
「まあ、オレみたいな男はなかなかいないと思うよ。」
「アハ、そうだよね! 山田さんがもう一人いたらな~。私、仕事なんか辞めていますぐ結婚しちゃうかも♡」
「え、い、いやあ、それはお嬢さん、大人をからかっちゃいけないよ、、あ、え~と、あの、あ、そうだ、今日の走行会、どうだった?」
「うん、もっともっと膝が擦れるようになりたいんだけどね~。さっきも中須賀選手の走りを見てね、やっぱり怖くっても気合いを入れないと、バイク傾けられらないな~って。。。どうしても恐怖心のほうが強いんだよね。」
すると、山田はそれまでのにこやかな表情をやめ、「世界最高峰のレースを足元から支えてきたタイヤマンの顔つき」になりました。
「お嬢さん、バイクのタイヤはな、こう、丸くなってるだろ?」
「うん。」
「丸くなってるから、傾いても接地面積はほとんど同じか、大きくなる。つまり、接地面が真ん中から離れても、接地面積は安定しているから、グリップしやすくなるってことなのよ。」
「え!」
「傾けるから不安定とか、怖いってことじゃないんだよ。タイヤの力を信じてたら、自然と曲がれるようになるよ。」
彼女は、それまでの明るい表情を曇らせました。
「・・・・そうなんだ。」
「ん?あれ、やっぱり難しかったかなあ。アハハ。。。」
すると、彼女は立ちあがり、力強く言いました。
「山田さん!」
「はい!」
「私、、、私ね、気持ちが傾くのを、強くなんなきゃって。怖くて不安な気持ちを、強い力でねじ伏せようとしてた。」
「うんうん。」
「私ね、海外でジャーナリストをやってる彼がいるの!」
「え?」
「もう何年も帰ってこないの。
だからね、私もモデルとかレースクイーンだけじゃなくて、いろいろ仕事の幅を広げてね、彼と同じ気持ちになろうって思ってね。
だって、私より、仕事のほうが大事なんだもん。」
「・・・うん」
「バイクに乗ってサーキット走ったり、いろんなクルマに乗ったり、でも、それってたぶん、強い力で不安や寂しさをねじ伏せようとしてたのかもしれない。。。
でも、違うんだね!
離れていても、心の接地面が路面を捉えて、お互いの心がグリップするんだね!
ありがとう!山田さん。
なんか、大事なことを教えてもらったような気がする!」
「お、おい、どこに行くんだい?」
「もちろん、走りに行くのよ。」
袖ヶ浦フォレスト・レースウェイのレストランの窓から、最終コーナーへとアプローチする彼女を、山田は見つめていました。
「お嬢さん、幸せになれよ。」
ロケ地:袖ヶ浦フォレスト・レースウェイ
撮影協力:走行会に参加頂いた皆さま、ブリヂストン有志一同
この物語は、「ブリヂストンの山田宏」が、得意の手料理で人々をもてなし、元気にしていく物語です。
※この物語は一部を除いてフィクションです。
鶏肉と豚挽肉の肉団子を配合した、HIRO風の鶏&団子汁。ダブルの具でグリップ(具リップ)と具沢山の団子汁でパワー(栄養)アップ!
【材料】(5-6人分)
鶏もも肉:1枚 大根:10cm位、人参:大1/3本位、牛蒡:10~15cm、里芋: 150g位、蒟蒻:200g1枚、椎茸:3~4枚(きのこ類何でも)、長ネギ:1本、油揚げ:1枚 肉団子用:豚ひき肉100g、玉ねぎ:中1/2個、牛蒡:約10cm、卵:1/2個(無くても可)、ナツメグ、塩コショウ少々、ケチャップ、オイスターソース小匙1程度、生姜:チューブだと1cm位?小麦粉:小匙2位?(柔らか過ぎる時のつなぎ)
レシピは、「レシピ検索No.1/料理レシピ載せるなら クックパッド」でご紹介しています。
1980年にブリヂストン入社。東京、小平にある技術センターでタイヤの性能を評価する試験部に配属される。
1990年に2輪ロードレース部門が強化されたときに異動し、全日本選手権の開発者となる。
1991年、開発者として世界GPに派遣される。
1992年より本社へ異動し、2015年まで世界GPのレース活動を担当。
また、趣味の枠を超えた「料理研究家」として、レースやイベントなどで手料理を振る舞っていることでも有名。
今回の走行会は、季節外れの寒いサーキット、でも山田さんのあったかい心のこもった「お汁」が冷えた身体をヒートアップ!超美味しかった!★★★(星3つ)!
わたしは3度の飯よりバイク好き。というか、タイヤが好き。コース走行後のタイヤがとってもかわいい♪(笑)
現在、モータージャーナリストを目指してLAWRENCE(http://lrnc.cc)で奮闘中!ちなみに愛車はカワサキ Z250。